平昌五輪:政治の犠牲になった韓国女子選手の活躍に期待します。

 

2016年の流行語大賞を覚えているだろうか?

答えは「神ってる」。
「今ではすっかり聞かなくなったなあ」と思ったら、2016年にもほとんど聞いた記憶がない。

ちなみに、トップ10には他にこんな言葉があった。

「聖地巡礼」「トランプ現象」「ゲス不倫」「マイナス金利」「盛り土」「保育園落ちた日本死ね」「ポケモンGO」「(僕の)アモーレ」「PPAP」

 

この中には入らなかったけど、「アスリートファースト」という言葉がノミネートされていた。

スポーツ大会では、選手を第一にする「アスリートファースト」という考え方が大事にされる。
これは平昌五輪でもあらわれていた。

2016年におこなわれたリオ五輪の入場シーンでは、たくさんのJOC(日本オリンピック委員会)役員が選手の前を行進していた。
これに対して、「アスリートファースト(選手第一)に反するのでは?」という批判が上がる。
それで今回の平昌五輪では、前を歩く役員の数がぐっと減らされた。

これは、アスリートファーストの良い事例。

 

 

「アスリートファースト」の考え方からすると、平昌五輪でとてもかわいそうな選手たちがいる。

それは韓国の女子アイスホッケー・チーム。

今回、北朝鮮が電撃参加したことで、韓国の女子アイスホッケー・チームが”犠牲”になってしまった。

 

北朝鮮の参加を聞いた韓国政府は、世界中に北朝鮮との「南北友好」をアピールしたいと考える。
それで北朝鮮に「南北の合同チームを結成しませんか?」と持ちかける。
すると北朝鮮の返事は「Ok」。
韓国・北朝鮮の合同チームが参加するのは、五輪史上これが初めて。

韓国政府は女子アイスホッケー・チームに北朝鮮の選手を混ぜることにする。

 

女子アイスホッケーの選手たちは突然、この決定を知らされた。
韓国政府は、事前に「北朝鮮の選手と組むとなったら、どう思う?」なんてことを選手には一切聞かなかった。
政治判断で決めて、それを選手に伝えただけ。

北朝鮮の選手が入ってきたら、韓国の選手はそれだけ試合に出ることができなくなる。
しかも、これは政治家が決めたことだから、特別枠として北朝鮮の選手は必ず試合に出さないといけない。

「政治家ファースト」で、戦略も戦術も後回し。

 

 

「南北合同チームの結成」を聞かされた韓国の選手はショックを隠し切れない。
朝鮮日報の記事(2018/01/19)に選手の声がのっている。

「とても当惑し、失望している」
「このようなことが起こっているのがまだ信じられない」
「選手たちは傷付いており、士気も下がっている状態だ」

「女子アイスホッケー韓国代表GK『選手たちは傷付き、士気低下』」から。

 

日本でも韓国選手への同情が広がって、例えば、毎日新聞は社説でこう書いている。

アイスホッケー女子の南北合同チーム結成も韓国の提案だが、これは政治的な目的のために韓国の選手たちに犠牲を強いる措置である。苦しい練習を重ねてきた末に出場機会を減らされる選手たちは、どう思うだろうか。

「平昌五輪めぐる南北対話 融和至上主義では危うい」

ネットでも、これと同じ思いだった人はけっこういた。

 

 

なんで女子ホッケーが政治判断の”犠牲”になったのか?

簡単に言ったら、結果を期待されていなかったから。
感情を抜きにして客観的に言えば、韓国の女子アイスホッケー・チームは弱くて、メダルを取ることは絶望視されていたから。

 

韓国の李首相は「女子アイスホッケーはメダルを狙える位置にはない」と言い切っている。
さらに、大統府の幹部はこう言った。

「南北合同チームの話が持ち上がらなければ、誰もアイスホッケーのチームには注目しなかったはずだ。100パーセント間違いない」

言っていることはたぶん正しい
でも、政治家が選手にムリを押し付けた上で、こんなことを言ってはいけない。

 

韓国政府の無神経な言葉は多くの国民を怒らせ、後に李首相は謝罪している。

さらに、この合同チーム結成が原因のひとつになて、文政権の支持率は下がってしまった。
ここまで「政府ファースト」に、韓国の国民はついていけなかったらしい。

 

韓国政府の判断には、外国からもクレームが上がった。
対戦相手のスイスは「公正な競争というスポーツ精神に反する」と指摘して、日本の鈴木大地スポーツ庁長官も「基本的にスポーツと政治は切り離して考えるべきだ」と韓国を批判する。

いろいろなところから雑音が聞こえてきて、韓国の選手がモチベーションを保つのはむずかしかったと思う。
アスリートファーストどころではない。

 

 

それで実際、南北合同チームはどうだったのか?

これが、目を覆いたくなる。
スイスには0―8、続くスウェーデン戦でも0―8で敗れてしまう。
トータル0-16の大惨敗。

これには選手の心まで破れてしまったらしい。
この後日本戦があったのだけど、選手は練習すらできなかった。

朝鮮日報の記事(2018/02/13)から。

マレー監督は選手らが2試合連続の大敗にショックを受け、意欲を失っており、練習は意味がないと判断したとみられる。

2試合連続大敗でショック? 練習取りやめ

それでも、韓国選手は日本戦で意地を見せた。
結果は1-4で負けてしまったけれど、最終戦で歴史的な初得点をあげることができた。

個人的にはこれはベストな結果だ。
日本チームに勝ってほしかったけれど、合同チームが0点で終わるのはあまりに切ない。

 

とはいえ、韓国の女子アイスホッケー選手にはまだ5~8位の決定戦が残っている。
ここでぜひ活躍してほしい。
政治に翻ろうされてしまったけれど、この中のどこかで、何とか一勝あげてほしいと思っている。

ただし、日本以外の国で。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。