オリンピックやワールドカップなど、韓国で世界的なスポーツ大会が開かれるとき、主催者の韓国人をいつも悩ませる問題がある。
それは、欧米人からの”犬食批判”。
韓国では昔から犬を食べる習慣がある。
韓国の旅行サイト「ソウルナビ」でも、犬肉料理の「ポシンタン (補身湯)」をふつうに紹介している。
食感は牛肉よりも豚肉に近く、とても柔らかく、特に皮のあたりがプヨプヨ。コレステロールは低く、あぶらギトギトの感じはまったくない。
韓国で犬肉は、夏のポンナル(伏日)という暑さの厳しいときに食べられることが多い。
これが欧米人からの受けが悪い。
というか、欧米人は本当に犬食を嫌う。
ソウルオリンピックや日韓ワールドカップのときにも、欧米からの犬肉批判があった。
今回の平昌五輪でも、欧米のメディアがこれに焦点を当てている。
韓国側はこれをとても嫌がる。
中央日報には「またかよ」とウンザリしたような記事(2018年02月22日)がのっている。
オランダのヤン選手が記者会見で「Please treat dogs better in this country(この国では、犬をもっと良く扱ってほしい)」と話した。
これが「韓国の食文化を批判した」と受け止められて問題になる。
これとは別で、記事にはこんなことも書いてあった。
五輪主管放送局の米NBCをはじめ、AP通信、米国のFOXニュース、USAトゥデイ、英国のESPN、インディペンデント、デイリーメール、ミラーなどの海外メディアは平昌五輪期間、韓国の犬肉食用文化について報道した。実際、江陵の中央市場に行くと、取材陣が市場の中の食堂で「犬肉はありますか」と尋ねているのを目撃した。
欧米のメディアが韓国の犬食に関心があることは知っていたけれど、これほど多くのメディアが取り上げていたとは思わなかった。
これには少し驚いた。
これに対して、日本のメディアで韓国の犬食について書いた記事を見た記憶がない。
「欧米のメディアがこのように韓国の犬肉を批判している」という記事なら見たような気がする。
「国民が関心をもっているのは何か?」というところから、日本人と欧米人の価値観の違いがみえてくる。
日本人も犬肉は食べないけれど、欧米人ほど犬食への嫌悪感は強くない。
カンボジア人はクモをフライにして食べる。
いつもは韓国に厳しい日本のネットユーザーも、欧米人の犬食批判については、韓国の肩をもつ人が多い。
・オランダ選手団長が試食してみたら美味かったというオチでないことを願う。
・当然クジラについても同じようにするんだろうな?
・どうせ東京五輪では世界中の反捕鯨団体が東京に集まって大暴れするんだろ
・他国で自国の価値観を押し付けるのは良くないわな
・他国の食文化にケチつけるんじゃねぇ
何食おうが勝手
・欧州人はウサギ食うよね
・日本人だってわんこそば食うしな
・日本の伝統的な鯨肉文化も尊重して欲しい
犬食については、ボクも韓国の食文化を尊重するべきだと思う。
東南アジアの人たちはヘビ、カエル、クモや虫などを食べていたけど、それは彼らの自由。
欧米人は日本人がクジラを食べることを嫌っているけれど、それも日本の食文化のひとつ。
ボクは犬を食べないけれど、韓国の人たちが韓国で何を食べようとそれは韓国人の自由。
去年、レコードチャイナにこんな記事(2017年11月21日)があった。
中国などアジア諸国に「犬や猫の肉の売買やめよ」、米下院で決議案
東アジアや東南アジアでは、犬や猫を食べる国がある。
そんなアジアの国に対して、犬や猫の肉の売買をやめるように呼びかけることがアメリカの議会で決議された。
記事の中でアメリカの議員はこう話している。
「米国の文化では犬や猫は大切にするものだ。彼らは普通の動物と異なり、人間を助けたり、癒やしたりすることができる。警察の爆発物や違法薬物の捜査を空港などで支援することもできる。人間のパートナーであり、かわいがる対象だ」
「犬や猫は大切にするものだ」という価値観や文化は、ヨーロッパ人も同じ。
日本にもそういう価値観はある。
けれど欧米に比べると、日本には日本の価値観を他国に押しつける”文化”がない。
「日本人にとって正しい価値観が、外国人にとっても正しいわけではない」と考えているからだと思う。
日本の議会で、アジア諸国に「犬や猫の肉の売買やめよ」と呼びかける決議案を採択することはない。
「日本は日本。他国は他国」で、日本に関係のないことだったら、外国の文化に口をはさむことはない。
反発されたら面倒くさいし。
いい意味でも悪い意味でも、日本人は「他国の価値観を尊重する」という価値観を持っている。
欧米人とはこの点が違うと思う。
だから欧米の国は、難民問題やロヒンギャ問題などの国際問題に積極的に関わろとするのだろう。
オランダ選手の「犬肉」発言については、後日、オランダの選手団長が「あの発言は不適切だった」と謝罪している。
中央日報の記事(2018年02月22日)から。
ビフ団長は「私たちは韓国の文化を尊重していて、3週間にわたる韓国の歓待に感謝している」とし「ヤンとも話をした。ヤンは意図を持って言ったのではないと述べ、ソーシャルメディアを通じて謝罪をした」と伝えた。
おまけ
「これも日本だったら、きっとないだろうな」と思ったことがオランダであった。
今月22日にオランダの議会が、オスマン=トルコ帝国時代に起きたアルメニア人虐殺事件を「ジェノサイド(集団虐殺)」と認定したのだ。
これは1915年~17年にかけておこなわれたもので、アルメニアはトルコの虐殺によって約150万人のアルメニア人が殺害されたと主張している。
それでこの出来事を「ジェノサイド」と認めるよう、国際社会に訴えていた。
でもトルコは「大勢のトルコ人も殺された」とアルメニア人が一方的に虐殺されたわけではないと主張していて、外国がこれを「ジェノサイド」と認めることに強く反発している。
当然、オランダの「ジェノサイド認定」にも怒っている。
AFPの記事(2018年2月23日)から。
トルコ外務省は声明を出し、「1915年の出来事をジェノサイドと認定するというオランダ下院のきょうの決定を強く非難する」と表明した。
オランダにはアルメニアからの移民もいるから、日本とは事情が違う。
それをふくめて考えても、日本だったら、こういう問題に手を触れないだろう。
100年以上前に外国で起きた出来事を「トルコを怒らせてもジェノサイド認定する」ということを国会で決議するとは思えない。
”韓国の犬肉”報道や議会で起きたことをみると、日本人と欧米人の価値観の違いを感じる。
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