「京都に行ってみたい!」と、友人のアメリカ人が言いだした。
それは面白いかもしれない。
ボクは京都に4年間住んでいた。
その後に何回も行ったことあるから、自分なりに知っている。
でも、「アメリカ人が見た京都」は知らない。
古都を通して、アメリカ人の価値観や考え方を知ることができるかもしれない。
それならきっと、ボクが知らなかった日本を見つけてくれるはず。
というわけで、ニューヨーク出身のアメリカ人と2泊3日の京都旅行に出かけることにした。
ちなみに、彼女は日本の中学校で英語を教えているアメリカ人。
「京都に行くのは初めて」ということなので、彼女が京都で行きたいところを聞いてみた。
すると早速、出発前にして「ボクの知らない京都」を知ることになった。
彼女が絶対に行きたいという場所は「船岡温泉」と「嵐山モンキーパーク」だという。
船岡温泉?どこ?初めて聞いた。
彼女は、京都旅行したアメリカ人のブログでこの銭湯の存在を知ったらしい。
調べてみると、歴史のある銭湯で、外国人にも人気があるらしい。
「脱衣場や浴場などが国の登録有形文化財に登録されている(ウィキペディア)」
「こういう雰囲気が好きなの。ここには行きたい」 と言う。
まあ、いいけどね。
それと「嵐山モンキーパーク」。
ここは知っていたけど、行ったことはなかった。
わざわざ京都まで行って猿を見たいか?
と思ったけど、これは彼女がニューヨークで生まれ育ったこと理由らしい。
「世界のすべてがある」といわれる大都市ニューヨークでも、「猿の放し飼い」はないらしい。
「ここにも絶対、行きたい。すごくワクワクする」 と目を輝かせる。
そんなに期待値上げても知らんぞ。
ちなみに、 ボクが「いつか、ニューヨークのタイムズ・スクウェアに行きたい」と言うと、「あんなところには行きたくない。上を見るといいけど、地面はすごく汚い」とすごく冷めていた。
似たようなものかもしれない。
「行ってみたら、意外と面白かった。ここから見る京都の街も良い」
でも、初めて行く京都で「船岡温泉」と「嵐山モンキーパーク」とは思わなかった。 てっきり金閣寺や清水寺とか有名どころの寺や神社かと思ってた。
ネットで見ると、それぞれ「ディープな京都」、「隠れた名スポット」と紹介されていて、京都の初心者が行くところとは思えない。
でも、「絶対に行きたい」というのなら、仕方がない。行くとするか。
で、当日、京都へ向かう車の中。
彼女は、生徒が修学旅行で京都に行くと聞くと、うらやましいと感じるらしい。
「アメリカは若い国だから、そんなに歴史のある場所がないのよ。京都はいつできたの?」
「京都は、794年にできた」とボク言うと、 「1794年?794年?」と聞き返す。
「京都が1794年にできたはずがないだろう」というのは、日本人の感覚なんだろう。
アメリカには、京都のような古い都市がなくて、彼女の感覚では、1794年でも十分古いらしい。
「この前行った静岡の遺跡はいつの時代のものだったっけ?」
あれは、弥生時代だから2000年くらい前のものだ。
「アメリカで『昔の建物』と聞いたら、フィラデルフィアにある1700年代のものくらいしか思い浮かばない。1000年前なんてさっぱり分からない。私の中では、京都も登呂遺跡も同じようなものなの」
これが「アメリカ人の歴史感覚なのか」と、決めつけてはいけないけど、一般のアメリカ人もこんな感じじゃないかと思う。
日本人だったら、「飛鳥時代は、法隆寺」「奈良時代は、東大寺」「平安時代は、京都」と、その時代の建物を思い浮かべることができる。
それで、時代を具体的に把握することことができる。
「1700年から前のものは、頭に浮かばない」というアメリカ人には、こういう歴史の把握の仕方が難しいかもしれない。
ここで疑問がわいた。
京都といえば、日本の修学旅行の定番中の定番。
ニューヨーク出身の彼女は、修学旅行でどこに行ったのだろう?
修学旅行で行くところなら、日本人にとっての京都のようなところで、アメリカ人にとって「最もアメリカ的な場所」でしょ、きっと。
それはどこだろう?
彼女の場合は、「ペンシルバニア」と「ウィリアムバーグ」に行ったという。
一番の目的は「the liberty bel( 自由の鐘)」を見ること。
この鐘について、アメリカの歴史教科書にこう書いてある。
「1776年7月8日、フィラデルフィアで独立宣言が朗読されたときに鳴らされた鐘(アメリカの小学生が学ぶ歴史教科書 Japan Book)」
この鐘のことは知らなかったけど、この鐘の音と共に、現在のアメリカが生まれたようなものじゃないのかな。
だったら、アメリカ人なら、行っておくべき「アメリカ的な場所」には間違いなさそうだ。
ちなみに、この1776年に現在のアメリカ国旗ができている。
「自由の鐘 (ウィキペディア)」
この記事を書くとき、このアメリカ人に聞いたところ、自由の鐘はアメリカ人にとっては、「its a symbol of freedom(自由の象徴)」という返事が返ってきた。
ひょとしたら、アメリカ人にとっては、自由の女神と同じくらい、ひょっとしたら、それ以上に大事なものかもしれない。
この他にも、ネイティブ・アメリカンの生活が体験できるテーマパークにも行ったという。
ネィティブ・アメリカンとは、1492年にヨーロッパ人のコロンブスがアメリカに来る前から、アメリカで生活していた人たちのこと。
彼女に言わせると、これこそ弥生時代の「登呂遺跡」のようなものだったらしい。 村には、屋根がワラでできた家があり、彼女たちは、その時代のネイティブ・アメリカンが着ていた服を着て、「ネイティブ・アメリカン体験」をしたという。
ただ、話を聞いていると、「日本人が弥生人を知る」ということと「アメリカ人がネィティブ・アメリカンを知る」ということは、意味合いが違うようだ。
ヨーロッパから来た白人は、それまでアメリカにいたネイティブ・アメリカンを殺したり騙したりして、領土を広げていった負の歴史がある。
彼女の場合は、その村でネイティブ・アメリカンの生活を体験することによって、アメリカの歴史を知ると同時に、アメリカにおけるヨーロッパ移民とネィティブ・アメリカンの関係についても学んだという。
「多分、こんな感じ(登呂遺跡のHPから)」
これがアメリカで生きていくために、大切なことというより絶対に必要なことだという。
アメリカの社会で、ネイティブ・アメリカンや黒人に対して差別的な言動をした場合、かなり厳しい社会的制裁を受けるらしい。
ときには、社会的に抹殺されてしまうほど。
アメリカで、「レイシスト(人種差別主義者)」というレッテルを貼られることは致命的になることがある。
日本の学校で、弥生時代の服を着たり住居を見たりしても、「弥生時代を知る」ことが目的で、人種差別教育とはまったく関係がない。
アメリカの中でも、世界中の人種が集まるニューヨークは、人種については特に敏感なところらしい。
人種差別は、絶対に許されないことで、将来起こしかねない「トラブル」を防ぐためにも、こうした経験を通して、ネイティブ・アメリカンのことを知る必要があるという。
彼女の話を聞いていると、 「修学旅行で学ぶ」といっても、その内容と目的は日 本とアメリカとでは大きく違うように思う。
前に、2人のアメリカ人から「アイヌ人は今、日本でどういう立場なのか?」という質問をされたことがある。
「何でそんなこを聞くのだろう?」と思ったけど、彼らは、これを「ヨーロッパ移民とネィティブアメリカンとの関係」でとらえていて、興味があったのかもしれない。
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