3月15日ごろに、自民党の石破議員が「韓国が納得するまで、(日本は)慰安婦に謝罪しなければならない」と言ったというニュースがネットで広がっていた。
これを見て思った。
「またかよ」
なぜなら、石破氏は去年も同じことを言っていたから。
韓国紙・東亜日報の記事(2017-05-23)の中で、石破氏はこう話している。
*機械翻訳を修正した文。
「本当にむずかしい問題だ。慰安婦問題については日本にも多くの意見があるが、人間の尊厳、特に女性の尊厳を侵害したという点においては、いけない事で謝罪するべきだ。
ただ、何回も歴代の総理や天皇まで謝罪の意思を表明したにもかかわらず、韓国で受け入れられないことに対しては挫折感も大きい。
それでも(韓国から)納得を得るまでずっと謝罪するしかないだろう」
石破議員が本当に「韓国が納得するまで、日本は元慰安婦に謝罪しなければならない」と言ったとしたら、大問題だ。
慰安婦問題は2015年に、日韓両政府のあいだで「最終的、不可逆的な解決」で合意している。
石破氏の言葉はこれを否定することになってしまう。
だから東亜日報の報道は疑わしい。
政府与党で影響力のある議員が、日韓合意の精神に反することを言うだろうか?
産経新聞が石破氏に確認したところ、やっぱり「そんなことは言っていない」ということだった。
石破氏は24日、産経新聞の取材に「『謝罪』という言葉は一切使っていない。『お互いが納得するまで努力を続けるべきだ』と話した」と述べ、記事の内容を否定した。
ということで、東亜日報の報道は誤報ということが明らかになった。
それは去年の話。
でも、2018年の3月にまた「韓国が納得するまで、元慰安婦に謝罪しなければならない」と石破氏が言ったと韓国紙「インサイト」が伝えている。
「石破氏は去年、「『謝罪』という言葉は一切使っていない」と否定したけど、やっぱりそう考えていたのか」と思ったら違った。
インサイトの記事の原文を読むと、この言葉は東亜日報の記事から引用している。
そう、あの”誤報記事”から。
いま安倍首相が森友問題で支持率が急落して、ピンチになっている。
それで韓国では、「もし安倍氏が首相を辞めるとしたら、次はだれか?」ということに関心が集まっている。
産経新聞がおこなった世論調査では、「首相にふさわしい人物」で1位が安倍首相(30%)、2位が石破議員(28.6%)という結果が出た。
「石破議員が日本の首相になる可能性が高まっている」ということで、インサイトは石破氏の考え方に焦点を当てて、韓国の読者に紹介した。
韓国人が気になるのは、「日本の首相に近い人物が慰安婦問題について、どう考えているか?」ということ。
安倍首相のように、「日韓合意を守ることが大事。合意は1ミリも動かない」と言う人物では、韓国にとって都合が悪い。
「慰安婦問題の解決のためには、日本が真の謝罪をすることが大事だ」と言った文大統領の考え方に近い人がいい。
インサイトの記事(2018-03-15)にはこう書いてある。
*機械翻訳を修正した文。
特に石破議員は韓日政府が平行線をたどる日本軍慰安婦問題に対しても前向きな態度を見せた。
去年 5月におこなわれたメディアとのインタビューで、石破議員は 「慰安婦問題は人間の尊厳、特に女性の尊厳を侵害したという点で謝罪するべきだ」と 「(韓国が) 納得するまでずっと謝罪するしかない」と所信を明らかにした事がある。
くり返しになるけど、石破氏はこれを否定している。
だから東亜日報の記事は誤報で、誤報から引用したインサイトの記事も誤報になる。
でも、去年の東亜日報と今年のインサイトを見た韓国の読者はこれを事実だと思うはず。
そうなると、きっとこう考える。
「首相に近い議員でも、『韓国が納得するまで、元慰安婦に謝罪しなければならない』と考えている。やっぱり、日本に謝罪を求めた韓国(文大統領)の主張は正しかった」
韓国の世論はこうやって形成されていく。
慰安婦問題を見ていると、「性奴隷」とか「強制連行」といった日本への怒りをあおるような誤報で、人々の意識がつくられることがよくある。
日本でも、インサイトの記事が間違いであることに気づかなかった人がたくさんいる。
ネットにはこんな書きこみがあった。
・後ろから味方を撃つような奴だ 何があっても驚きはしない
・日本から出て行けよ
・納得しないときはどうするのですか?
・韓国人が納得するの待ってたら宇宙が終わるわ
・そもそも何を謝るんだよw
・こんなこと言った時点で首相の目はないわ
・アホか
石破だけは絶対にない
すべてフェイクニュースをそのまま信じての発言だから、石破氏の立場は被害者になる。
去年、東亜日報が記事を掲載したとき、石破氏は「謝罪なんて言葉は使っていない」とその記事を否定した。
でも石破氏は、東亜日報に抗議をしていない。
たしかこのとき石破氏は、「翻訳のミスかもしれない。だから抗議はしない」といったことを話していたと思う。
そんな大人の対応が裏目に出た。
内容が間違っていたのなら、面倒でも抗議して記事を訂正させるべきだった。
東亜日報には今でもこの記事が掲載されていて、だれでも見ることができる。
さらにインサイトもこれに続いた。
これによって、一体どれだけの韓国人が影響を受けたのか。
こんなふうに、間違った情報をもとに慰安婦問題の認識が形成されるから、この問題はいつまでも終わらない。
返す返す「韓国側が間違ったことをしても、大目に見て抗議はしない」という対応は間違っていたと思う。
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