世紀の対面まで、あと1時間を切った。
今日の9時30分に、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が握手を交わすことになっている。
もうすぐその時を迎える。
それはいいんだけど、でも、なんで「この時」なのか?
前から個人的に、「9時や10時じゃなくて9時30分にしたのには、何か意味があるのかな?」という疑問を持っていた。
その謎を解いてくれたのは、コナンではなくて中央日報(2018年04月26日)の記事。
韓国で大きなイベントがおこなわれる場合、開始時刻を「~時30分」という時間に設定することは少ないという。
それにもかかわらず、なんで今回の対面は「9時30分」なのか?
これは、韓国が北朝鮮に配慮して「時間をゆずった」という背景があるらしい。
北朝鮮が、首脳会談の場所は南側地域でしても時間だけは自分たちに合わせると要求した可能性がある。韓国が北朝鮮を配慮するレベルで譲歩したとも考えられる。政府当局者は「実務レベルで交わした言葉を詳しく明らかにするのは望ましくない」と話した。
<南北首脳会談>9時でなく9時30分に会う理由
「詳しく明らかにするのは望ましくない」と関係者の歯切れが悪いというのは、それを認めたようなもの。
相手が要求した時刻で始まるというのは、韓国のメンツ的にはいいことではない。
韓国でも北朝鮮でもない第三国の人間から見たら、「今回の南北会談は北朝鮮のペースで進められているな」という印象を持ってしまう。
だから韓国は「明らかにするのは望ましくない」と口を閉じたのだろうけど。
韓国と北朝鮮は、むかしは同じ時間をつかっていた。
そりゃそうだ。
日本に支配される前までは、朝鮮というひとつの国だったのだから。
じゃ、なんで今は時間がちがうのか?
じつはそれには日本の影響があった。
日本が朝鮮を統治していた1912年に、朝鮮半島の時間を日本のものに合わせた。
それまでつかっていた時間を30分早めて、日本の時間に統一する。
日本による統治が終わったあとも、韓国と北朝鮮は時間を戻さず、そのままつかっていた。
日本が定めた時間をつかっているというのは、朝鮮半島の人たちにとっていい気持ちではない。
それで北朝鮮は、2015年に時間を変更した。
2015年の8月15日から30分遅らせている。
だから北朝鮮の12時は、日本の12時30分になる。
日本の統治は1945年に終わった。
でも、今も韓国国内には、日本の影響がいろいろ残っている。
そんな日本の”置き土産”は、韓国では「日帝残滓(にっていざんし)」と呼ばれている。
日帝残滓には、具体的にこんなものがある。
・三三七拍子
・訓話(훈화)、誨告辞(회고사)、朝会(조회)
・運動会
・修学旅行
韓国の言葉にもたくさんある。
家族、交通、博士、想像といった日常的な言葉は日帝残滓だし、文大統領の「大統領」も日本語だ。
韓国の通貨「ウォン」もそう。
ウォンは漢字で書くと「圓」。
これは「円」の旧字体でだから、円と同じ漢字になる。
残滓という言葉は「残り滓(かす)」という意味。
韓国で日帝残滓は嫌われていて、国内の残滓を探してこれをなくす活動がよくおこなわれている。
日本統治時代に変えられた時間も日帝残滓のひとつ。
それで、今もこれを使い続けることに屈辱を感じる韓国人は前からいる。
2013年には、与党の国会議員・趙(チョ)氏が日本の時間をやめて韓国本来の時間に変えようと言い出した。
産経新聞の記事(2013.11.22)にそのことが書いてある。
趙氏は「日本帝国主義の残りかす(である現在の標準時)から抜け出す機会だ」と主張。「領土主義と歴史を再度、確立して失った時間を取り戻し、国家のアイデンティティーと国民の自尊心を取り戻さなければならない」と訴えた。
「日本帝国主義の残りかす」はまさに日帝残滓のこと。
でも結局、趙議員の考えは通らなかった。
もしこのとき韓国が時間を変えていたら、北朝鮮と同じ時間になっていたはず。
そうしたら、韓国の政府当局者が「実務レベルで交わした言葉を詳しく明らかにするのは望ましくない」と苦しそうに言わなくてもよかったことになる。
*記事の始めに「もうすぐその時を迎える」なんて書いたけど、もうその時間を過ぎてしまった。
まー、細かいことは見逃してください。
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