日本人は英語が苦手。
日本で働いているインド人もそれに驚いていた。
「大学卒業の人間で英語を話せない日本人が多いのは意外でした。日本は世界でも有数の先進国なのに」
最高水準の技術力をもっているけれど、英語力は世界の底辺
インド人よ、これが日本だ。
*「英語力が底辺」というのは大げさだけど。
そんな日本では、英語が苦手な首相もめずらしくない。
でも、森元首相はひどかった。
森本首相の英語の言い間違いは、飛びぬけていた。
2000年5月に、アメリカのクリントン大統領と会ったときのこと。
森首相は米大統領に「How are you(ご機嫌はどうですか?)」ではなくて、なんと「Who are you(おまえは誰だ)?」と言ってしまった。
これにはクリントン大統領も苦笑い。
「ヒラリーの夫です」とジョークで答えたら、森首相は「ミートゥー」と返したという。
まるでコント。
このやり取りはマスコミに大きく取り上げられた。
あまりにひどい英語の言い間違えに、国民もあきれ返る。
いま安倍首相がこんなミスをしたら、とんでもない騒ぎになる。
こんな森元首相の武勇伝を書いたのは、フランスのマクロン大統領も、オーストラリアで英語の言い間違いをしたというニュースを見たから。
マクロン大統領は英語が上手。
過去数十年で、もっとも英語ができるフランス大統領という評判もある。
そんな大統領が公の場で英語を間違えてしまう。
マクロン大統領がオーストラリアのターンブル首相と共同記者会見をおこなっているとき、こんな発言をした。
「あなたと、あなたのおいしいご夫人の温かい歓迎に感謝します」
「delightful(素敵な)」と「delicious(おいしい)」をかん違いしてしまった。
マクロン氏は「delightful(素敵な)ご夫人」のつもりで、「delicious(おいしい)夫人」に言ってしまったという。
でもこれぐらいなら問題ない。
AFPの記事(2018年5月3日)では、笑い話になっている。
ツイッター(Twitter)界隈では、この言い間違いをからかう投稿が続出。中でも、フランス人は天性のロマンティストだというイメージを引き合いに冗談を飛ばすコメントが多くみられた。
話を森元首相に戻す。
「森首相はクリントン大統領に『How are you(ご機嫌はどうですか?』ではなくて、『Who are you(おまえは誰だ)?』と言ってしまった」
とさっき書いたのだけど、実は、これはウソですごめんなさい。
この当時はそういうマスコミ報道が流れていて、たくさんの国民がそれを信じてしまった。
だけど後になって、デマであることが分かる。
森首相は当時、そんなことを言っていなかった。
「news-postseven」のインタビューでこう言っている。(2012.12.01)
森:そんなことを言うはずがないのに、「じゃあ誰かそばにいたのかね?」って聞くと誰もいないんだもん。つくり話の定番です。
「『How are you?』と『Who are you?』を言い間違えた」という創作をしたのは、毎日新聞の記者だった。
森政権がつぶれた後に、あれは自分の作った冗談だったと認めている。
それがあっという間に広がってしまった。森ジョークは私が広めた張本人でございまして、森首相には申し訳ないと思っております。
高畑昭男 「ブッシュ再選と今後の日米関係」『第141回琉球フォーラム』琉球新報社 2004年8月11日
首相が言っていないことを「言った」と報道する。
これは明らかに虚偽報道。
この”失言”によって森首相は国民にバカにされ、支持率を落としてしまう。
でも本当の問題は、首相の言い間違いではなくてマスコミのねつ造報道だった。
一部報道機関、著名人が事実として取り扱ったため、噂の対象となった森はこれを批判し、内閣退陣後もマスコミのあり方に疑問を呈した。
「素敵な夫人」を「おいしい夫人」と間違えるぐらいなら、笑い話ですむ。
でも、記者の冗談を、事実として国民に伝えるというのはおそろしい。
これは過去の問題ではない。
ここまで露骨ではないけれど、似たようなマスコミ報道は今でもある。
「首相の支持率を下げるためなら、大げさに伝えたり発言の一部を切り取ったりしてもいい。そうやって、実際とは違う印象を読者や視聴者に持たせてもかまわない」と感じる報道がある。
安倍首相をヒトラーと結びつけるとか。
森友学園の籠池被告が「いい土地ですから、前に進めてください」と言ったのを、なぜか、「首相夫人が言った」と言うアナウンサーもいた。
これはまったく笑えない。
首相を批判することは必要。
だけど、やり過ぎるとマスコミはネットに負けてしまう。
森元首相については、今でもフェイクニュースを信じている人がいる。
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