最近、知り合いのアメリカ人が、こんなニュースをシェアしていた。
gooランキング(2018年05月29日)
今回は「正直表現がトラウマ級の洋画」をアンケート、ランキングにしてみました。洋画で一番日本人に恐怖を与えたのは、一体どの作品だったのでしょうか?
日本人に最大の恐怖をあたえた洋画トップ3はこの作品。
1位 エクソシスト
2位 ソウ
3位 ムカデ人間
・・・あ、ちがった。
アメリカ人がシェアしていたのはこれじゃなかった。
米メディア「THE HILL」の記事(05/23/18)だった。
Arizona education officials have published a draft of revised science standards for the state’s K-12 and charter schools, deleting several references to evolution.
Ariz. Education Department strikes ‘evolution’ from science standards draft
アリゾナ州で、学校の教科書から「進化論」が消えようとしている。
知り合いのアメリカ人はこれに「賛成」ではない。
「マジかよ。おいっ、アリゾナは今、こんなことになってるぜ」と批判的な意味で、このニュースを拡散していた。
「人間はサルから進化して生まれた」という進化論が、教育現場からなくなろうとしている。
原因は、進化論の考え方はキリスト教の教えに反しているから。
キリスト教では、「人は神からつくられた」という創造説が正しいとされている。
ということで今回のテーマはアメリカと宗教。
日本との最大のちがいのひとつ、アメリカ社会でのキリスト教の影響力について書いていきたいっす。
進化論のことは次回にしたいっす。
ちなみにエクソシストとは、キリスト教の言葉で「エクソシスムを行う人」という意味。
エクソシスムとは誓い、厳命を意味するギリシャ語であり、悪魔にとりつかれた人から、悪魔を追い出して正常な状態に戻すことをいう。現在のカトリック教会では、洗礼式の時に悪霊を拒否する誓約がある。
だから、今回の内容にも関係はある。
あなたは神を信じますか?
ちょっと考えてみてください。
あなたが本屋の中を歩いていると、聖書がフィクション・コーナーに置かれていたのを見つけた。
フィクションとは、マンガや小説などのつくり話のこと。
エクソシストは完全なフィクション。
そんな聖書を見つけたら、あなたはどうしますか?
ボクだったら、そのまま素通り。
自分には1ミリも関係ないから。
そんなことより浜松のグルメ雑誌をのぞいて、新しくできたラーメン屋を知りたい。
でも、これがアメリカだったら、大きな問題になる。
聖書が「フィクション」に分類されていたら、多くの人が激怒する。
2013年にそんなことがあった。
カリフォルニア州にあるコストコで、買い物に来た牧師が、聖書に貼られた値札に「フィクション」と書いてあるのを見つけた。
キリスト教の聖職者にとって、聖書の内容は事実であり歴史でもある。
フィクション(つくり話)なんてマジあり得ない。
これを問題視した牧師は、値札を写真に撮ってツイッターに投稿する。
すると、「聖書をフィクションとして扱うなんて、何ごとだ!」と、たくさんのアメリカ人が怒った。
コストコの不買運動を呼びかける人まで出てくる。
コストコはこのミスを認め、公式に謝罪した。
「CHRISTIAN TODAY」の記事(2013年11月26日)
コストコは、表記は宗教的判断ではなく、単なる手違いに過ぎないとして謝罪したが、ボイコットを呼び掛ける動きもある。ただ牧師は手違いだと認め、今後もコストコでショッピングすると言う。
日本で同じことがあっても、こんな社会問題にはならない。
キリスト教の信者でもなかったら、聖書にフィクションのラベルがあっても特に何も思わない。
日本は宗教に無関心な国だから。
神奈川の図書館では、旧約聖書の「出エジプト記」を調べると「旅行/海外旅行/アフリカ/エジプト」に分類されていたこともあった。
くわしくは「ねとらぼ」の記事(2015年10月04日)をどうぞ。
分類としては「人文/宗教/キリスト教/聖書」が妥当のはずですが、まさかの旅行記扱いに「旅行本扱い」「るるぶ」とつっこむ人が続出しています。
知り合いのアメリカ人が、自分へのクリスマスプレゼントに聖書を買った。
From me to me kind of gift 😜 knocked the price down to $7🎉 Probably the thickest Bible I’ll ever have
20ドルを7ドルに下げるのはさすが。
こういう人なら、値札に「フィクション」とあったらきっと怒る。
でも、聖書のディスカウントはいいのかな?
話は「コストコ聖書事件」に戻る。
アメリカという国には、こんな特徴がある。
日本とちがって、宗教に対してすごくマジメ。
出エジプト記が「旅行記」に分類されていたら、「るるぶかっ!」ではすまない。
アメリカ社会でのキリスト教の影響力は、どれほどのものか?
大阪大学や神戸学院大学なんかで、異文化理解を教えていた石黒マリーローズさんがこう書いている。
アメリカの建国者である合衆国憲法制定者たち(founding fathers)は、聖書の原則に則(のっと)って建国しました。 聖書がこの国の基礎の重要部分です。
多くの学校では聖書を教科書にして、歴史や文学などを教えているほどです。「聖書で読むアメリカ (石黒マリーローズ)」
*この本は2006年に発売されたもの。
著者の主観的な見方が強いけれど、アメリカ社会の一面を伝えている。
アメリカの建国精神は、学校教育にも根づいている。
タイム誌によると、アメリカの公立学校では、四校のうちの一校というぐらい、多くの学校にこの祈祷クラブがあります。
日本の公立学校で、「祈祷クラブ」なんてムリ。
職場でも、個人の信仰が重視されている。
ボーイング社はキリスト教、ユダヤ教、イスラム教の信者労働者に、別々の研究グループがあります。マイクロソフト社の社員は、オンラインで祈りの会を開いています。
これも日本の会社では聞いたことがない。
アメリカは宗教大国だけど、移民大国でもある。
だから、アメリカ社会にはいろいろな価値観や意見がある。
聖書の”フィクション扱い”に激怒する人がいれば、「コストコは正しい。聖書はフィクションだ」という人もいる。
様々な考え方がある社会だから、「聖書を教科書にして、歴史や文学などを教えている」という学校もある。
そうなると、進化論が問題になってしまう。
続きは次回。
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