アメリカの密猟者がシカ数百頭を殺した!
ということぐらいなら、国際的なニュースになることはない。
でもAFPの記事(2018年12月18日)によると、この密猟者は残酷だった。
地元検察官によれば、被告らはシカを娯楽目的の狩猟で違法に殺していた。犯行は「夜間を中心に頭部を目当てに行われ、胴体は置き去りにされた」という。
シカ数百頭密猟、男に刑務所で『バンビ』の鑑賞命令 米
この件で世界的な関心を集めたのは、密猟ではなくてその後の「バンビ鑑賞命令」。
裁判で有罪判決を受けたこの男たちは、これから刑務所で月1回以上、ディズニーの名作アニメ「バンビ」を観ることが命じられた。
これは刑罰というより、ご褒美では?
この映画では、母鹿がハンターに殺されて小さなバンビがそれに寄り添うシーンがある。
映画史に残るバンビの感動シーンをくり返し観ることで、密猟者に罪を悟らせるというねらいなのだろう。
やっぱりこれは、刑務所生活の息抜きでは?
でも、鹿の涙で更生するかもしれない。
実際そういう人に会ったことがある。
知り合いのおじいさんの家に行ったときに、その人から鹿狩りをやめた理由を聞いた。
山に住んでいるそのおじいさんは鹿狩りを趣味にしていた。
そのあと食っていたから、鹿狩りは生活の一部でもある。
一匹か数匹か忘れたけど、とにかく犬を使って鹿を追いつめ、銃で撃ち殺す。
そんな鹿狩りをしていたある日のこと。
いつものように逃げ場のない場所に鹿を追いつめた。
犬に吠えてられ、鹿はおびえて動けない。
おじいさんは慎重に銃をかまえる。
でもそのとき、銃口の先に光るものが見えた。
鹿の大きな目に涙が浮かんでいたのだ。
「だから何だ?」とじいさんは引き金をひいて、山に銃声がこだました。
という鬼畜なじじいではなく、「こんなことが本当にあるのか」と目を丸くして全身から力が抜けていく。
鹿が山中に消えたあと、信じられない思いで帰路についた。
ひょっとしたらそのとき、目にホコリか何かが入って涙が出たのかもしれない。
花粉症の鹿だったかも。
でもおじいさんは、死への恐怖と絶望の涙と理解した。
それ以来、引き金をひけなくなってしまった。
一緒に話を聞いていたアメリカ人は「鹿には知能と感情があるんだ。日本人がクジラを食べることにオレが反対する理由もそれなんだ」と言う。
だから名作バンビも、アメリカ人密猟者の心を打ち砕くかもしれない。
事実は小説より奇なり、ということが静岡の山中でおこったのだから。
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