始めのことば
「いかにも苦しくて堪らんのでその雪の上に寝てしまいたくなった事が度々ありましたけれども、ここで寝て居って時間を費やすと死んでしまいますという注意がありますので案何者に引っ張られて進んで行きました(チベット旅行記一 川口慧海)」
「一瞬で人生が変わる」という言葉を聞いたことがあるけど、本当にあるんだろうか?
ボクは、人生や自分といったものは、時間をかけて少しずつ変えていくものだと思っている。
でも、「3日で人生が変わった」という友人はいる。
彼は航空自衛隊の隊員で、2011年3月11日に東日本大震災が起きたとき、その日の午後には現地に到着して救命活動を行っていた。 その後の3日間の活動によって、彼はそれまでとは考え方も行動も変わったという。
考え方としては、「明日は必ずしも来ない」ということが身に染みて分かったこと。
行動としては、家族や友人と会う機会を増やし、それまで以上に一緒にいる時間を大切にするようになったことだという。
震災で亡くなった人のほぼ全員が、地震が起こる直前までは、「もう自分に明日は来ない」なんて思いもよらなかったはずだ。
地震が起こる前日には、明日、自分がこの世からいなくなるなんて気がつくはずがない。
自衛隊員の彼は、すべてが一瞬でなくなるのを目の当たりにして、考えや行動が変わったという。
そこまでのものを見たら、人はすぐに変わることができるのかもしれない。現に、友人は自分の変化を自覚できるくらいに、はっきり変わっている。
海外一人旅には、いろいろな驚きや発見があるけれど、こうした大災害ほどの衝撃や影響力はない。
前の記事でも書いたけれど、自分や人生を変えるとしたら、旅で得たことをきっかけにして、自分が行動を起こし、それを継続して習慣化させることで、少しずつ変えていくものだと思っている。
先日、英会話スクールを経営している友人と話をしているときも、このことを感じた。
そのときに、彼がため息まじりに、こんなことを言っていた。
「週1回45分のレッスンを受けただけで英語が話せるようにはならないよ。自分は、英語が通じる楽しみや英語でコミュニケーションする喜びを生徒に提供しているだけだ。結局は、レッスン以外で自分がどれだけ英語を学ぶか、なんだよ」
ボクも、彼の意見に同じ。
週1回45分のレッスンを受けただけで英語が話せるようにはなるとは、とうてい思えない。
そんなことができるのは、語学の才能のあるごく一部の人だけだ。
英会話スクールに行っただけで、英語が話せるようになるわけではない。
英語ができるようになるかどうかも、結局は、自分次第。
日本には数えきれないほどの英会話スクールがあって、それぞれ考え方やり方がある。
だけど、ボクも彼の考えと同じで、英会話スクールでは、やる気や刺激といった英語の学習を続けるきっかけを提供してくれるところだと思っている。
それを自分で活かしていくことで、英語が話せるようになるんだろう。
なんて、英検2級のくせに、偉そうなことを言ってみる!
ボクにとっては、この考えは旅でも同じ。
英会話スクールに行けば英語が話せるようになるわけでもなく、旅に出れば自分は変わるというわけでもない。
変わるとすれば、すべて自分の行動次第。
旅が人を変えることはできないし、自分を変えるのはあくまで自分。
自分を変える力は、自分にしかない。
仏教には、こんな言葉がある。
「宝の山に入りながら手を空(むな)しくして帰る」
これは、このような意味になる。
「よい機会にあいながら、その好機を逃がし、なんの利益も得られないで終わる(大辞泉)」
ボクが就職活動をしていたときは、このことを思った。
「せっかく、お金と時間をかけて、いろいろな国に旅したけれど、思い出以外は残らなかったなあ」と考えていた。
けれど、そのときから現在までを振り返ると、決してそうじゃない。
前回の記事でも書いたけど、旅で得た刺激をきっかけにして、いろいろと行動することで、様々な人と出会うことができ、違った視点で物事を見られるようになったりするなど、人生が楽しく豊かになった。
旅に出た人には、日本にいたころとは違って、必ず何かを手にして帰国すると思う。
その貴重な経験を個人の思い出だけで終わらせるのは、もったいない。
旅で得たことや感じたことを、周りの人に伝えるなどして、自分も周りも楽しくさせていったら、もっともっと世の中が良くなるんだろうなあ、と思ってこんな記事を書いてみた。
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