【日本人と天皇】山田優「お疲れ様」、昭和の軍人「天ちゃん」

 

「天皇とは神の子孫で、日本は万世一系の天皇が統治する国だ」なんてのは戦前の話で、神格化された天皇は1946年に「人間宣言」を出して、いまでは日本国民の象徴となっている。

ということで、天皇という存在もかなり国民に近づいてきたのだけど、これはどうなのか?
モデルの山田優さんがインスタグラムに、「天皇皇后両陛下お疲れ様でした。ありがとうございました。。。 皆様、平成最後の夜、、、素敵な夜をお過ごし下さいませ」というメッセージと上皇上皇后両陛下の写真を投稿した。
するとこれに批判が殺到。

「皇室をなんだと思っているのでしょうか」
「気持ちはわかるけど、『お疲れ様でした』は無いなぁ」
「会社の上司にすらお疲れ様と言うのは失礼と言われるのに。。」

天皇皇后両陛下に対して「お疲れ様」という言葉をつかったことに、違和感や怒りをおぼえた人がたくさんいたらしい。

くわしいことはデイリーニュースオンライン の記事(2019.05.05)をどうぞ。

山田優、「両陛下お疲れ様でした」という投稿に批判殺到「皇室をなんだと…」

でもネット掲示板を見ると、批判コメントに対して批判的な人が多い。

・むしろ批判してる奴らが皇室を何だと思ってるのか
・揚げ足取りでどうでもいい事を叩いて楽しいんだろうな
・ウヨのフリしたサヨの仕業だろ
・山田アンチ「他にも言い方あるだろ」
わしら「じゃどんな言い方があるの」
山田アンチ「他にも言い方があるって言ってんだよぼけしねかす」
この繰り返しだからな

天皇陛下に「ご苦労様」はマズいけど、「お疲れ様でした。ありがとうございました」ならまったく問題ない。
それにこれをたたく人は、全文を読んでいない人が多いような気がする。
膝をついて国民と同じ目線でお話しされた天皇陛下(いまは上皇さま)なのだから、こんな言葉はお気になさらないだろう。

そもそも、「神」とされていた時代であっても、国民は天皇を「天ちゃん」と呼んでいたのだから。
日本海軍の軍人で戦後は作家をしていた阿川 弘之(大正9年 – 平成27年)氏が著書にこう書いている。

天皇陛下を神様だなんて思ったこと、戦中戦後を通じて一度もありません。海軍へ入ってからも、平気で天ちゃんって言ってましたよ。事実また、海軍には、それを許す空気があったのです。

「国を思って何が悪い 光文社(阿川弘之)」

 

軍人になる前もなった後も、平気で「天ちゃん」と呼んでいたのだ。

映画やドラマで「天皇陛下バンザイ!」と言って自殺する兵士しか見ていないと、事実がウソっぽく見えるかもしれない。
くわしいことはこの本を読んでほしいけど、昼休みに「天ちゃんがナおい、」と気軽に友人へ話しかける場面が出てくる。
といってもそれは海軍の空気で、陸軍については阿川氏も分からないという。
こんなことを言えるのは、もちろんプライベートのときだけだっただろうけど。

とにかく天皇が「神」というのは憲法でのことであって、戦前戦中でさえ、一般国民はそんなことを思っていなかったのだ。
本音と建前はむかしからある。
人間宣言が出されて国民に近づいたはずなのに、いまの時代こそ「天ちゃん」なんて言える空気がない。
「お疲れ様でした」と言っただけで、「皇室をなんだと思っているのか」とたたかれてしまう。
日本人にとって天皇という存在は、近くなったのか遠くなったのかよくわからない。

天皇陛下を絶対視して、心からの忠誠を誓っていた陸軍が2・26事件を起こして昭和天皇を激怒させたのだから、「お疲れ様でした」と言える距離感はむしろちょうどいいと思う。

 

タイでは国王が神格化されている。
タイの鉄道駅には国王の肖像画があった。
この国で「お疲れ様」はマズイかもしれない。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。