「粛清」とは?①ソ連のスターリン・北朝鮮の金正恩・東京の小池都知事

 

はじめの一言

「労働者も工場主も日本ではヨーロッパよりもなお一層きびしい格式をもって隔てられているが、彼らは同胞として相互の尊敬と好意によってさらに堅く結ばれている(シーボルト 江戸時代)」

「逝きしの日の面影 平凡社」

 

今回の内容

・粛清(しゅくせい)とはなにか?
・北朝鮮の粛清
・ニュースの見方

 

・粛清(しゅくせい)とはなにか?

ちょっと前にソ連のスターリンについて記事を書いた。

スターリン時代のソ連というと、国内の各地につくられた「強制収容所」が有名だ。

強制収容所

政治的理由から形式的な裁判で、あるいは裁判なしで、強制的に市民を収容する施設。ソ連では1930年代の「粛清」の時代に多くの人々が収容された。

(世界史用語集 山川出版)

 

ナチスの強制収容所をふくめて、強制収容所とは19世紀のイギリスが南アフリカでつくったものが始めらしい。

最初スターリン時代の強制収容所では、人びとがどんな生活をさせられていたのか?ということを書こうと思った。
けれどそれは別の機会に書くことにする。

今回と次回は、上の説明にあった「粛清(しゅくせい)」というものについて書いていきたい。

 

 

「粛清」という言葉を聞いたら、何を思い浮かべますか?

スターリンはちょっと古い。
今なら北朝鮮についてのニュースを連想すると思う。

ためしに「粛清」で検索するとこんな言葉が出てくる。

「粛清とは」「北朝鮮  粛清」「金正恩 粛清」
「スターリン 大粛清」「スターリン 粛清」「ソ連 粛清」

 

「金正恩(キム・ジョンウン)」や「スターリン」と一緒に、「小池百合子 粛清」「小池 粛清」というキーワードも出てきた。
まさか小池都知事がこの2人と並んで出てくるなんて、まったく想像していなかった。
とにかく、これが今の日本でもっとも検索されている「3大粛清」だ。

でも、そもそも「粛清」とはどういう意味だろう?

 

「粛清(しゅくせい)」というと、組織の上にいる人間に目をつけられた人物が処刑されるようなイメージがあると思う。

でも粛清することのねらいは、誰かの命を奪うことではない。
そんなことよりも、そのことによって組織を変えることにある。
組織を引き締めて、新しくすることに重点がおかれている。

【粛清】

厳しく取り締まって、不純・不正なものを除き、整え清めること。特に、独裁政党などで、一体性を保つために反対派を追放すること。「反対派を粛清する」「血の粛清」

(デジタル大辞泉の解説)

 

粛清では、「独裁政党などで、一体性を保つため」ということが大事な目的になる。
「反対派を追放すること(処刑など)」はそのための手段としてある。

だから、テレビや新聞のニュースで「粛清」という言葉があったら、その後にその組織がどう変わっていくのかに注目した方がいい。

その方が国際情勢を理解しやすい。
なんて、かっこいいことを言ってみたりする。

 

 

・北朝鮮の粛清

マスコミではよく「北朝鮮の粛清」について報道しているから、北朝鮮を例にとる。

前に、NHKの「クローズアップ現代」で「北朝鮮はどこへ ~見えてきた粛清の真相~」という放送があった。
この番組では、北朝鮮のナンバー2であった「チャン・ソンテク氏」を粛清(処刑)したことについてくわしく説明していた。

このチャン氏が処刑された理由には、よく分からないものがある。

「例えば拍手をするしかたが悪いとか(番組ホームページ)」

北朝鮮では、「拍手の仕方が悪い」ということが殺される理由になるらしい。
これが最大の理由ではないだろうけど。
とりあえず、日本に生まれて良かったとは思う。

 

番組が焦点をあてていたのは、「粛清によって北朝鮮がどう変わるか?」ということ。

「チャン氏の粛清後、北朝鮮国内はどうなっているのか」
「北朝鮮国内の動揺 今後どうなっていくか?」
「中国が最も懸念しているのは、チャン氏の粛清によって北朝鮮の核開発に歯止めがかからなくなることです」

(番組ホームページ)

 

この番組は2014年に放送されている。

2016年の今からふり返ったら、このなかの3番目の中国の懸念は現実のものになっていることがわかる。

北朝鮮がこれまで核実験をおこなったのは、次の5回。
2006年、2009年、2013年、2016年1月、2016年9月。

 

今年の9月にも核実験がおこなわれている。
このときは、日本、韓国、アメリカ、国連がいっせいに北朝鮮を非難していた。
毎日新聞 の9月22日の記事では、首相が国連で厳しい口調で世界に訴えたことを伝えている。

北朝鮮が繰り返すミサイル発射や今月9日の5回目の核実験について「(安全保障環境の)景色を一変させるもので、脅威はこれまでと異なる次元に達した」と危機感を示し、「力を結集し、北朝鮮の計画をくじかなくてはならない」と国際社会の結束と、国連安全保障理事会による制裁強化を強く促した。

<安倍首相>北朝鮮を非難 国連演説「安保環境を一変」

 

上の5回の核実験の間隔を見ると、それまでは数年おきだったのに2016年には2回もおこなわれていることが目を引く。
しかも、2016年1月におこなわれた核実験では、初めて「水素爆弾」が使われたという。

北朝鮮は「水素爆弾(水爆)実験である」と主張しており、仮に事実であれば北朝鮮の核実験に水爆が使われたのは初となる。

(ウィキペディア)

 

北朝鮮のこうした動きの理由には、2014年の「チャン氏の粛清」があるだろう。
これによって国内の体制が変化している。

 

 

・ニュースの見方

最後に、「ニュースの見方」というエラそうなことを言わせてもらっていいですか?
ニュースで「粛清」という言葉を見たら、次のことを考えるといいと思う。

・粛清を必要とするその組織は、どんな問題をかかえているのか?
・粛清をおこなうことで、その組織のトップは組織をどのように変えていこうとしているのか?

こんな視点でニュースを見て行くと、物事の理解がきっと深まる。
「粛清によって、~が殺された」ということだけを知っても、あまり意味がない。
粛清の前後で組織がどう変化したのか?
それを理解することの方がずっと大切なはず。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。