イギリスと日本の渋滞対策/ロンドンへの滞納金は10億円?

 

知り合いのイギリス人が数か月まえ、ロンドンからケンブリッジ市の近くへ引っ越した。
ちなみにケンブリッジを漢字で書くと、ケンとブリッヂで「剣橋」になる。
冗談みたいだけど、これはマジの漢字表記。

ケンブリッジ【剣橋】

① イギリス、ロンドンの北80キロメートルにある学園都市。

大辞林 第三版の解説

創業者の石橋正二郎が「ブリッジ」(橋)と「ストーン」(石)を組み合わせてタイヤメーカーの「ブリヂストン」をつくったみたいな。

 

赤いところがケンブリッジ

 

剣橋大学は世界大学ランキングでいつも上位

 

そのイギリス人にロンドンと現在の街とどっちがいいか質問したら、「絶対にここ」と言う。
ロンドンにはいろんな店があって世界的なイベントも開かれるから、イギリスで一番刺激的な街だけど治安が悪い。
その点、いま住んでいるところは静かで緑も多いし、日本のように安心して外を歩くこともできる。
ロンドンに行くことがあるか聞いたら、「ほとんどない」とのこと。
その一番の理由は、車でロンドンに入るとお金を取られるからと言う。

ロンドンは渋滞がメチャクチャひどい。
それでロンドン市は渋滞対策を考え出さないといけなくなった。
人々に「行きたくない」と思わせる手っ取り早い方法はお金を取ること。
それでロンドン市は市内のいくつかを「有料ゾーン」にして、そこに入るためには「コンジェスチョン・チャージ(混雑課金)」を払わないといけないことにした。
このイギリス人と話をしていて、はじめてこの言葉を知った。

こんな料金を払うのがバカらしいから、この人はロンドンには行っていない。
そんなイギリス人が多いせいか、この渋滞対策はうまくいっているらしい。

 

渋滞税課税圏の境界を示す看板

 

オリンピックを来年にひかえた東京も、いま渋滞対策を考えているところ。
ポイントはやっぱりお金。
コンジェスチョン・チャージのように特定の地域ではなくて、高速代が値上げされるそうだ。
朝日新聞の記事(2019年5月22日)

国や東京都が期間中の交通渋滞対策として、首都高速道路の料金を日中に千円上乗せする案を検討していることがわかった。

オリンピック中の首都高 1000円値上げ案 渋滞対策

まだ金額は決まっていないけど、ETC利用の普通車に500~3000円が上乗せされるらしい。
これじゃあ東京に車で行きたくなくなる。
ということは大成功か。

 

 

さて、話をイギリスのコンジェスチョン・チャージに戻す。
この徴取はかなり厳しく行われるようで、アメリカ大統領さえ例外にならなかった。

2011年にオバマ大統領が訪英した際には、大統領専用車でバッキンガム宮殿に向かいながらコンジェスチョン・チャージを支払わなかったとして120ポンドの罰金が科せられている

コンジェスチョン・チャージ

 

でもアメリカ側は「外交特権」を主張して、120ポンド(いまなら約16500円)を払わなかった。
こんなことを言っているから、アメリカは「ごう慢」とか「えらそう」なんて言われてしまうのだ。

「やれやれ」と思ったらイギリスBBCの記事(16 February 2017)によると、日本もコンジェスチョン・チャージを払っていなかった。

In total 145 nations have outstanding charges. The worst offenders include the US, Japan, Nigeria and Russia.

‘Take diplomats who owe congestion charge to international court’

国別ランキングで日本がワースト2というのを見た記憶がない。
しかも、アメリカとナイジェリアに挟まれているというのも新鮮だ。

 

日本がロンドンに滞納しているコンジェスチョン・チャージの額は7,629,370ポンド(約10億4500万円)。
こうした国(上の記事では145カ国)ではこれを「税金」とみていて、ウィーン条約を理由に支払いを拒否している。
やっぱり誰も、お金は払いたくないのだ。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。