きょう11月14日に「大嘗祭」が行われる。
ということでこれから、この日本の伝統儀式について知っていこう。
上の建物は北京の天壇にある祈年殿。
明や清の皇帝がここで豊作を願って、神に祈りをささげていた。
ここを案内してくれた中国人ガイドが、皇帝にとって最も大事な儀式はここでの祈りだったと言う。
ハングリーはすぐにアングリーに変わってその規模が拡大すると、「どうせ飢え死にするなら戦ってやる」と大反乱へとつながってしまう。
中国の歴史では、農民反乱から皇帝が倒されて新王朝が樹立されることがよくあった。
だから民が生きていられるだけの食べ物さえあったら、暗殺やクーデターでもない限り、皇帝は存在していられる。
逆にいえば食料の安定供給ができないと、皇帝は一族ごと殺される可能性が高くなる。
だから神に五穀豊穣を祈ることは皇帝にとって最も重要なことだったのだ。
くわしいことはここをどうぞ。
さて、ある日とつぜん外国人から「日本ではたくさんのお祭りがありますけど、一番重要な祭りは何ですか?」ときかれたら、なんと答えますか?
その答えは立場や見方によっていろいろあるだろう。
山形県の「カセ鳥」(加勢鳥)でもいいし、
沖縄県宮古島に伝わる「パーントゥ・プナハ」も捨てがたいけど、
ボクなら「新嘗(にいなめ)祭」と答える。
天壇での祈り、カセ鳥、パーントゥ・プナハには五穀豊穣を祈願するという目的がある。
人々が豊作を願うことはどこの国や地域でも同じだから、それを神に祈る祭りは世界中にある。
それが日本全体となったものが新嘗祭だ。
新嘗祭とは、その年の収穫を神に感謝して、同時に翌年の豊作を祈る宮中祭祀のこと。
天皇がご自身でお育てになった新米を神々に供えたあと自ら食されて、五穀豊穣や国家安寧をお祈りになる。
歴代の天皇がこの儀式を行っていて、その日11月23日は、現在では勤労感謝の日になっている。
宮中だけでなく、新嘗祭は日本中の神社で行われているのだ。
これがいつ始まったか正確には分からないけど、日本書紀に新嘗祭の記述があるから、千年以上の歴史があることは間違いない。
天皇も中国皇帝と同じく、民衆がハングリーからアングリーにならないように祈っていたのだろう。
規模と意義と歴史において、これ以上重要な日本の祭りを他に知らない。
天皇が即位後、はじめて行う新嘗祭のことを「大嘗祭」という。
即位の礼と同じぐらい大事な一世一代の儀式で、それが今日これから行われる。
明仁天皇の大嘗祭(平成2年)
大嘗祭では、「庭積の机代物」(にわつみのつくえしろもの)と呼ばれる47都道府県の特産品が神々に供えられる。
日本農業新聞の記事(11/14)に、それに選ばれた全国の生産者のよろこびの声がある。
大嘗祭供納 喜びの声 農家冥利に尽きる 一世一度の大舞台へ
「生産者の長年の苦労が報われ、今後の栽培の励みになる」
「産地にとっても、大いに励みになる。この名誉に恥じぬよう生産者一同、栽培技術を磨き、高品質生産へ一層努力したい」
「大変名誉なこと。今の時期のピーマンは色つやも良く生食がお勧め。天皇陛下に届けられることは素直にうれしい」と喜んでいる。」
では最後は、フランスの文化人類学者レヴィ・ストロースのことばで締めくくろう。
日本には、一種の連続性という絆があり、それは、おそらく、永遠ではないとしても、今なお存続しているのです。
「日本賛辞の33撰 波田野 毅(ごま書房)」
こちらの記事もどうですか?
コメントを残す