江戸時代の女相撲(座頭相撲):相手は盲人や羊というデタラメ

 

今 日和(こん ひより)さんという女性を知ってますか?

今さんはイギリスBBCのことしの「100 Women」の1人に選ばれた女性で、日本の女子アマチュア相撲のトップ選手。
女性は大相撲の土俵に上がることができないことを踏まえて、BBCは記事(2019年11月8日)にこう書く。

世界で最も古いスポーツの1つである相撲のルールが変わり、女性が相撲に参加できるようになることを、今さんは願っている。

女性の大相撲参加を目指して 日本人女性力士の願い

 

相撲は神事や武道だけど、海外からみたらスポーツなんだろう。
BBCが今さんを「日本社会の女性差別とたたかう女性」みたいにとらえているのも、相撲をスポーツと考えているからでは?
「100 Women」(100人の女性)に選ばれたことには、そんな現代的な理由があると思う。

 

さて今回のテーマは世界で最も古いスポーツの1つ、相撲について。
江戸時代には今さんのはるかな先輩にあたる女性力士がいいて、女相撲が庶民の人気をあつめていた。
でもこれは神事でもスポーツでもなくて、人々が見て楽しむ見世物。
しこ名が「色気取」「玉の越(玉のこしの洒落)」「乳が張」「腹櫓(はらやぐら)」という変なものだったのもその表れだ。
ちなみに女性力士は胸を丸出しにして取り組みをしていた。

やってることも本当にエンターテインメントだった。

一般には江戸中期の18世紀中ごろから流行した。当初女同士の取り組みで興行したが、美人が少なく飽きられたため、男の盲人との取り組みを始めて評判になった。

女相撲

 

目の見えない男が手探りで土俵に上がるのを見て楽しんでいたのだから、江戸の庶民はひでーもんだ。
でも本人は笑われているのではなくて、笑わせているという自覚をもっていたかもしれない。
まあ令和の日本人にはよく分からん。

女相撲が人気になるきっかけとなった「男の盲人との取り組み」を座頭相撲(ざとうずもう)という。
座頭相撲とは盲人同士、または盲人の男と目の見える女性がおこなう相撲のこと。

「座頭」というのは盲人で、琵琶や三味線などを弾いて歌を歌う、語り物を語る、針や按摩(あんま)をするといった仕事をしていた人のこと。
江戸幕府がその身分を保証していた。

このような盲人保護政策が、江戸時代の音楽や鍼灸医学の発展の重要な要素になったと言える。また座頭相撲など見せ物に就く者たちもいた

座頭

 

こんな座等(盲人)と女がとる相撲を見世物として、江戸時代の庶民が楽しんでいたのだ。
でもこれは、お上公認ではなかったらしい。

特に明和年間には、女相撲が大流行したらしい。盲と女の相撲は、日々大入りと人気を博したが、当然、寺社奉行から停止を命じられ、相撲小屋の取り払いはもちろん、興行人も罰せられた。

「江戸庶民の楽しみ 青木宏一朗 (中央公論社)」

 

禁止されても女相撲(座頭相撲)はバレないように行われていたというから、かなりの人気があったのだろう。
羊を相手に相撲をとらせるというデタラメな女相撲もあった。
異種格闘技戦にもほどがある。
今 日和さんが目指す世界はここにはない。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。