「中学の歴史教科書から『カースト』が消えている!」
そんな発見をした驚きからこの記事を書いていきます。
教科書の変化は、カーストがなくなったことだけではない。
江戸時代の士農工商についても、「じつはそんな身分制度はなかった」ことがわかって、最近の中学の教科書では「士農工商」という言葉がなくなっている。
昭和世代のボクにはびっくり。
知らなかった人は歴史の知識をアップデートしておきましょう。
はじめに、初めてこの記事をご覧になった方へのおことわりです。
今回の記事は今まで出会った旅人の一部を取り上げて、それを大げさに書いたものです。
少しの事実にかなりの想像を加えたもの。
韓国でいう「ファクション」のようなものです。
「最近の韓国時代劇は『ファクション』とよく呼ばれます。『ファクト(事実)』と『フィクション(創作)』の融合というわけです。
「朝鮮王朝の歴史はなぜこんなに面白いのか(康熙奉)」
ちなみに韓国の場合、時代劇だけではなくて日本についての報道にも「ファクション」が多い。
ほんの事実とつくり話が入りまじっているような記事をよく見る。
さて前回の記事で、こんな旅人の会話を書いた。
「旅行なんて旅じゃないね!」
「アフリカの旅に比べたらインド旅なんて大したことはない」
こんな考え方には、インドのカースト制度に通じるものがある。
そんな大胆な仮説をうち立ててみた。
今回と次回の記事では、そのことから少し外れてカースト制度について書いていきたい。
「だれでも中学生のときに、インドのカースト制度を習ったはず」
なんて書き始めようとしたけど、これはもうできない。
今では、中学校で「カースト」を習っていないという。
大学生のころ、中学生の家庭教師をしていてそのことを発見した。
当時教えていた中学3年生がこんなことを言う。
「『カースト』ってなに?そんなの習ってないし、教科書にものってないよ」
これを聞いて驚く。
「はあ?学校でカースト制度を習わないわけないだろ。教科書にはのってるけど、おまえが気づいてないだけじゃないか?」
で、彼の教科書を手に取って「カースト」という言葉を探したけど、たしかにその言葉がない。
「あれ?今の中学生は、カーストを習わないのか?」
と思ったけど、本当に習わないらしい。
「でしょ?」
と勝ち誇ったようにヤツは言う。
一体、いつからカーストが教科書からなくなったのか?
25年くらい前、ボクが中学生のころはカースト制度についてこんなふうに習っていた。
ヒンドゥー教にある4つの身分制度で、「バラモン(僧)・クシャトリヤ(王、貴族)・ヴァイシャ(商人)・シュードラ(奴隷)」がある。
この記事を読んでいる人の多くも、こうやって習った記憶があると思う。
でも歴史は変わらないけど教科書の内容は変わる。
今の歴史教科書では、鎌倉幕府の成立が1192(いいくに)年ではない。
「という説もある」になっている。
「カースト」も同じように、以前とは表記が変わっている。
家庭教師をしていた生徒の教科書では、先ほどの4つの身分を「ヴァルナ」と書いていた。
これ以外の教科書は見ていないから分からないけれど、現在出版されている世界史用語集(山川出版)でも、上の4つの身分を「カースト」ではなくて、「ヴァルナ」と書いてある。
だから、「今の教育では、『カースト』を習っていない」と書いてしまったけど、正確にいうと、「昔と同じようには習っていない」ということになる。
ということで、今まであの4つの身分制度を「カースト」と覚えていた人は、「ヴァルナ」にアップデートしておこう。
彼らはインドにいるチベット仏教の子どもたち
だからカーストは関係がない。
ボクが見た中学生の教科書からは「カースト」の文字がなくなっていた。
だからといって、「カースト」がまったくなくなったというわけでもない。
世界史用語集(山川出版)にはこんな説明がある。
カースト
ヴァルナやジャーティなどの階層を指す語。ポルトガル語の「血統」に由来する。
「カースト」という言葉がインドのヒンディー語じゃなくて、外国語のポルトガル語だった。
個人的に、これを知ったときには意外な気がした。
ちなみに、江戸時代にあった「鎖国」という言葉も、もとは日本語じゃなくてドイツ語です。
興味があったら調べてください。
今の学校の授業では、ヴァルナとジャーティが結びついた社会制度を「カースト制度」または「ヴァルナ- ジャーティ制度」とよんでいる。
ジャーティ
職業と結びついた、インドの社会階層。
「生まれ」を意味する語で約3000あると言われる。同一ジャーティでなければ結婚や食事はできないとされている。(世界史用語集 山川出版)
カースト制度
四つのヴァルナにジャーティを結びつけて成立した。インドの独特の社会制度。
(世界史用語集 山川出版)
でも、ややこしい。
だからここではわかりやすいように、「バラモン・クシャトリア・ヴァイシャ・シュードラ」を4つの身分を「カースト」という昔ながらの言葉を使うことにする。
残念ながら、現在のインドでもこのカーストによる差別はある。
けれどこのカースト差別には、世界の他の差別とは変わった特徴がある。
その続きは次回に。
おまけ
士農工商についてこんな記事があったので、紹介しときます。
消えゆく「鎖国」「士農工商」…… ダイナミックに書きかわった歴史教科書最前線
もう小・中学の教科書で「士農工商」は学習すべき用語と位置付けられていない。近年の歴史学の研究で、江戸時代の身分制度の説明として適当ではないことがわかったためだ。
いまの教科書では「武士」と「町人・百姓」と大きく2つにわけて説明している。町に住んでいれば町人で、村に住んでいれば百姓程度の差しかなく、しかも百姓=農民ではない。
よかったらこちらもどうぞ。
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