前回に続いて、今回もインドの「カースト差別」について書いていきます。
このカーストによる差別は世界の他の差別と比べて、とても変わっている。
まずは、「区別」と「差別」の違いについて。
この二つは似た言葉だけど意味は違う。
区別
あるものと他のものとが違っていると判断して分けること。また、その違い。(デジタル大辞泉)差別
取り扱いに差をつけること。特に、他よりも不当に低く取り扱うこと。(デジタル大辞泉)
区別では、違いがあってもそれぞれは対等なものになる。
信号の「赤・青・黄」みたいなもの。
それに対して、差別は対等ではない。
ある価値観から上下や優劣をつくりだす。
大体こんな感じだと思う。
インドのヒンドゥー教には、カースト(ヴァルナ)という4つの身分がある。
「バラモン(僧)・クシャトリヤ(王、貴族)・ヴァイシャ(商人)・シュードラ(奴隷)」の4つ。
インドの憲法ではこれらのカーストの存在は認められている。
ヒンドゥー教徒がこのように分類されても、「それぞれが対等であればいい」という考え方なんだろう。
ガンディーもカーストは認めていた。
「カーストなんて身分があってはダメだ!」
と、カーストそのものを否定したのはアンベードカルという人。
この人はアウト・カースト出身で法務大臣になっている。
この考え方の違いから彼はガンディーと対立した。
そういうことでインドで禁じられているのは、あくまでもカーストによる「差別」。
カーストによる「区別」は認められている。
現実的に、インドからカーストをなくすことムリだろう。
だから認めるしかない。
もちろん差別問題はインドだけではなくて、日本をふくめ世界中にある。
アメリカでは黒人への人種差別が深刻な社会問題になっている。
1862年にリンカーン大統領が奴隷解放を宣言した後も、黒人への差別はあった。
黒人のアメリカ人からこんな話を聞いたことがある。
第二次世界大戦のときにアメリカ軍では、もっとも危険な場所とされる前線に黒人を多く配置したという。
前線は敵と向かい合っているところで、戦闘が始まれば真っ先に敵と戦うことになる。
命を落とす可能性がとても高い場所だ。
彼の話では、アメリカ軍はその危険な場所には黒人の兵士を多く配置して、白人の兵士は安全な後方にいたという。
こうした人種による配置も、差別意識によるところが大きい。
ところで、今のアメリカではどうなんだろう?
そんなことを思っていたら、ニューズウィーク誌でこんな記事を見つけた。
「アメリカの名門大学では、肌の色によって合格点が違う」なのだという。
「アジア人は+50点が必要で、アフリカ系アメリカ人は+230点が必要。アスリートはすでに+160点をもらっている」と記事で報じている。
大学は公式にこれを認めてはいないけれど、「実際にはおこなわれている」とニューズウィークは書いている。
これには驚いた。
これがその記事
本当に現在のアメリカで、こんな「差別的な選別」がおこなわれているのだろうか?
アメリカ人の友人にメールで聞いてみた。
するとこんな返事が返ってくる。
I don’t know about it being so cut-and-dry like that. But yes, there’s clearly discrimination
具体的には分からないけど、「明らかに差別はある」という。
その彼女が送ってくれたのが下のもの。
何を言っているのかボクの英語力ではハッキリわからないけど、英語に自信がある人は見てみて。
でもやっぱり、アメリカの人種差別問題はあいかわらず深刻のようだ。
世界でよく見られる差別には、人種差別の他に宗教の違いからくる宗教差別がある。
むかしのヨーロッパでなら、キリスト教徒によるユダヤ教徒への差別があった。
特に、「反ユダヤ主義」という言葉は有名。
高校の世界史で必ず学ぶことになっている。
反ユダヤ主義
ユダヤ教やユダヤ教徒、またはユダヤ人に対する、偏見・差別・迫害などの思想と行動。
キリスト教世界で「キリスト殺しの民」とみなされていたユダヤ教徒に対して、十字軍時代から、迫害や社会的差別・隔離が定着した。19世紀に入ると、ヨーロッパ各地でユダヤ教徒に対する差別解放がなされ、彼らの市民社会への同化も進んだ。
しかし、彼らへの差別意識は根強く残っており、19世紀後半に人種主義的な「ユダヤ主義(反セム主義とも)」のことばがうまれ、ロシア、東欧でポグロム(ユダヤ系住民に対する集団的暴行・虐殺がおこり、フランスでドレフュス事件が発生した。
また20世紀に入ってからも、ナチスによるユダヤ人大虐殺がおこった
(世界史用語集 山川出版)
アウシュヴィッツの収容所では、ナチスによるユダヤ人の大虐殺がおこなわれていた。
でもユダヤ人(ユダヤ教徒)への憎悪は、ヒトラーが率いるナチスの時代になってから突然生まれたわけではない。
少なくとも十字軍の時代(11世紀)から、ヨーロッパ全体にユダヤ教徒への差別意識はあって差別がおこなわれていた。
シェイクスピアの作品に、「金に汚い」ヴェニスの商人シャイロックが出てくる。
なんでシャイロックはユダヤ人だったのか?
これはユダヤ人への差別意識が根底にある。
以前からヨーロッパにあったユダヤ人への差別意識がナチスのホロコーストにむすびついている。
イギリス人の友人はそのことを意識していて、「ホロコーストは、ドイツだけの責任ではなくて、ヨーロッパ全体の責任だ」と話していた。
ここは、世界史に興味があったら読んでください。
高校で世界史を習ったとき、上の説明に出てきた「ドレフュス事件」を聞いたことがあると思う。
ユダヤ系軍人のドレフュス大尉に対する冤罪(えんざい)事件のこと。
これはフランスで起きている。
ドレフュスが罪をでっち上げられて、裁判で終身刑を宣告されてしまった。
その後、作家のゾラの支援などがあってドレフュスの無罪が証明され、彼は解放された。
この事件は、ヘルツルによるシオニズム運動のきっかけになっている。
つまりこのドレフュス事件が、1948年のイスラエル建国にむすびついているということ。
「ユダヤ人への差別に満ちたヨーロッパでは、もう生活することができない。自分たちの国をつくらなければいけない」とヘルツルは考えたのだろう。
今の日本では「反ユダヤ主義」という言葉はあまり聞かない。
でも個人的に、「ユダヤ人陰謀説」という都市伝説みたいなものを聞いたことはある。
アメリカ人の友人に聞いた話だと、最近のアメリカではイスラーム教徒への憎悪が間違いなく増えているという。
「これでトランプがアメリカ大統領になったら、もっとひどくなるはず」と話していた。
次のアメリカ大統領は誰になるんだろう?
たしかに気になる。
よかったら、こちらもどうぞ。
コメントを残す