はじめの一言
「実に日本人は大の旅行好きである。本屋の店頭には、宿屋、街道、道のり、渡船場、寺院、産物、そのほか旅行者の必要な事柄を細かに書いた旅行案内の印刷物がたくさん置いてある。(アーネスト・サトウ 幕末)」
「日本絶賛語録 小学館」
*江戸時代の日本人の識字率の高さが分かりますね。
かつて奴隷を収容していてセネガルのゴレ島
今回は人類の負の歴史の話。
暗くて重い内容ですわ。
でも、歴史の授業で習うとても大切なことでもある。
まずは、「粛清(しゅくせい)」という言葉の意味を確認しておこう。
粛清とこんな意味。
【粛清】
厳しく取り締まって、不純・不正なものを除き、整え清めること。特に、独裁政党などで、一体性を保つために反対派を追放すること。「反対派を粛清する」「血の粛清」
(デジタル大辞泉の解説)
一般的に粛清といったら、組織の邪魔になる人間を処刑するようなイメージじゃないかな?
ネットで「粛清」と検索すると、こんな言葉が出てくる。
「北朝鮮 粛清」「金正恩 粛清」「スターリン 大粛清」
「スターリン 粛清」「ソ連 粛清」「小池百合子 粛清」
金正恩(キムジョンイル)やスターリンは分かる。
この2人と一緒にされる小池都知事はちょっとかわいそう。
世界史をみれば、粛清といったらやっぱりソビエト連邦のスターリンが有名。
世界の人々が「粛清」と聞いたら、スターリンを思い浮かべる人は多いはず。
スターリンがおこなった「大粛清」はすさまじく、言葉を失ってしまう。
大粛清
ソビエト連邦共産党内における幹部政治家の粛清に留まらず、一般党員や民衆にまで及んだ大規模な政治的抑圧として悪名高い出来事である。
ロシア連邦国立文書館にある統計資料によれば、最盛期であった1937年から1938年までに、134万4923人が即決裁判で有罪に処され、半数強の68万1692人が死刑判決を受け、63万4820人が強制収容所や刑務所へ送られた
大粛清による死亡者の総数には50万人説から700万人説に至るまで諸説あり、長きにわたり論争になっている。
(ウィキペディア)
犠牲者数が700万人となると、これはポルポトやヒトラーの虐殺を上まわってしまう。
消すことのできない人類の負の歴史だ。
そのわりには、日本でそれほど知られていないように思う。
カンボジアのキリングフィールド(処刑場)
ポルポト派の虐殺による。
今回からの記事では、スターリンがおこなった大粛清について書いていこうと思う。
虐殺の舞台となった強制収容所で、人びとはどんな生活をおくっていたのか?
虐殺というとポルポトやヒトラーが有名だけど、スターリンがおこなった粛清も残酷さではひけをとらない。
スターリン時代のソ連で強制収容所に入れられたら、もう人間であることをあきらめなければいけなかった。
カンボジアの大地
強制収容所は、世界史での用語としてこのように説明されている。
強制収容所
政治的理由から形式的な裁判で、あるいは裁判なしで、強制的に市民を収容する施設。ソ連では1930年代の「粛清」の時代に多くの人々が収容された。
(世界史用語集 山川出版)
「市民を収容する施設」という文字を読んで、なにを思い浮かべるだろうか?
これだけだと、地震や洪水があったときの避難所のようなものを想像してしまうかもしれない。
とんでもない。
スターリン時代のソ連にあった強制収容所は、こうしたものとはまったく違う。
想像を絶する地獄だ。
この強制収容所での人びとの様子は、ソルジェニーツィンの「収容所群島」にくわしく書いてある。
このソルジェニーツィンというロシア人は、スターリン時代のソ連で秘密警察に捕まって強制収容所に入れられていた。
大粛清を経験している。
そしてこのときの体験を「収容所群島」に書いた。
このソルジェニーツィンは、自宅で寝ていたときに突然逮捕されている。
そして強制収容所に連行された。
自宅を出る直前、荷物をまとめようとするソルジェニーツィンに、秘密警察の人間はこう言う。
「何もいらん。向うではちゃんと食わせてくれる。向うは暖かい」
(収容所群島 ソルジェニーツィン)
その「向う」では、どんな生活が待っていたのか?
食べ物はちゃんとくれたのか?
本当に暖かいところなのか?
続きは次回に。
では今回の復習
問題
・厳しく取り締まって、不純・不正なものを除き、整え清めること。特に、独裁政党などで、一体性を保つために反対派を追放することをなんという?
・ソ連でそれをした共産党の最高指導者はだれ?
・政治的理由から形式的な裁判で、あるいは裁判なしで、強制的に市民を収容する施設はなに?
答え
・粛清
・スターリン
・強制収容所
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