【必然の負け】運命のミッドウェー海戦、日本軍の敗因は?

 

今夜、サッカー日本代表がミャンマー代表と対戦する。
サッカーの試合ではよく「絶対に負けられない戦い」と言われるけれど、日本はすでにワールドカップへの出場を決めていて、今回は消化試合だ。だから、負けてもいいことはないが、大きな影響は与えない。

日本が「絶対に負けられない戦い」で、決定的な敗北をしたのがきのう6月5日。
1942年のこの日、米軍はミッドウェー海戦で日本軍に大勝利をおさめたことで、制空・制海権を握り、その後の展開で有利に進められるようになる。
一方、それまで日本海軍は連戦連勝で勢いに乗っていたのに、この敗戦で主導権を奪われると、その後は敗戦の連続となり、最終的には降伏に追い込まれた。
ミッドウェー海戦は日米にとってまさにターニングポイントとなった。
日本にとっては痛恨すぎる敗北だったから、この時期になるとネットでよくその原因が話題にあがる。

・日本軍側と米軍側の索敵に割いた数が違うわ
先に発見された時点でもうね
・魚雷と爆弾を無意味に交互に換装してて自滅したんだよな
指揮官の無能さが如実に現れるエピソード
・作戦バレてて勝てるわけがない
・真珠湾攻撃してルーズベルトが世論を参戦&国家総力戦にした時点で負け確
・護衛艦隊がいれば日本の勝利だった

ミッドウェー海戦で日本軍が負けた原因はいくつもあるが、大きな要因は、日本が戦う前から情報戦で負けていたことだ。

 

このころ海上での戦いはおもに戦艦同士による艦隊決戦から、戦闘機を中心とする航空決戦に移っていた。そのため、多くの戦闘機を搭載できる航空母艦(空母)が決定的に重要だった。
当初、米軍は艦隊決戦を考えいたが、真珠湾攻撃を受け、大ダメージを負ったことで「空の戦い」を重視するようになる。一方、そのきっかけを与えた日本軍は「戦艦中心主義」から抜け出すことができなかった。
日本軍の考え方は時代遅れだった。

日本軍が誇った空母・加賀には、戦闘機や攻撃機、偵察機など合計 60機を搭載することができたという。
ミッドウェー海戦ではその加賀を含め、赤城、蒼龍 、飛龍の3隻(せき)の主力空母が米軍の攻撃を受け、撃沈した。ほかに重巡洋艦も沈められ、まさに踏んだり蹴ったりだ。
対して、米軍では航空母艦と駆逐艦を1隻ずつ失っただけ。
日本軍は約 3000人が戦死し、米軍では約 360人戦死したから、人的損害も日本のほうが甚大だ。

*細かいデータは「ミッドウェー海戦」で確認。

 

戦艦「加賀」(1936年)
これ1つを造るために膨大必要な予算と時間を費やしたが、最終的には魚のすみかになった。

 

甲板に航空機を搭載した加賀(1937年)

 

空母は、いわば海上を移動する飛行場で、戦いの拠点にもなる。
日本軍はそれを一度に4つも沈められ、約 300機の航空機も失って壊滅的打撃を受けたにもかかわらず、大本営はこんな発表を行なった。

「敵根拠地ミッドウェーに対し猛烈なる強襲を敢行すると共に、同方面に増援中の米国艦隊を捕捉猛攻を加え敵海上及航空兵力並に重要軍事施設に甚大なる損害を与えたり。」

軍部はこうして国民を騙していた。

【大本営発表】日本国民は騙されたが、米国民もヤラれた

 

日本軍の艦船に爆撃を行う米軍機

 

兵士の数や武器の生産量で日本がアメリカに勝てるはずはなく、日本海軍は米海軍に対し、短期決戦で終わらせることを戦略の中心に考えていた。
そのためには、米艦隊を一カ所に集め、奇襲攻撃をしかけて一気に撃滅することが、コスパ・タイパ的には最高だ。艦隊決戦なら、世界最大・最強の戦艦大和がある。
そんな考えから、日本海軍はミッドウェー島に目をつけた。
アメリカと日本(ユーラシア大陸)の真ん中あたりに位置していたから、この島は「ミッドウェー」と呼ばれるようになる。

ミッドウェー島にあった米軍基地を攻撃して破壊し、この島を手に入れることがメインの目的ではなかった。
ここは米軍にとって重要な拠点で、絶対に奪われてはいけない。日本軍がそこを攻略すれば、必ずアメリカ艦隊が出てくるから、連合艦隊が奇襲攻撃をしかけ、一気に叩こうと考えた。
ミッドウェー島攻略は、言ってみれば米艦隊を誘い出すためのエサだ。

この時の日米の戦力を客観的に比較すれば、真珠湾攻撃で大きな被害を受けた米軍の方が不利だった。
しかし、米軍はその“穴”を暗号解読でカバーした。
米海軍情報部は日本海軍で使われていた暗号(海軍暗号書D)の解読に全集中で取り組み、5月26日までにはほとんど解読できていた。
太平洋戦争で日本軍が負けた原因について、6名の専門家が徹底的な究明を行った名著『失敗の本質 日本軍の組織論的研究』(ダイヤモンド社)にこう書いてある。

これによって、太平洋艦隊ニミッツ司令長官は、ミッドウェー作戦の計画に関して日本側の作戦参加艦長、部隊長とほぼ同程度の知識を得ていたという。
このような情報量の差が、米海軍に圧倒的な勝利をもたらしたといえる

米軍の急降下爆撃を受けて炎上する空母・飛龍

 

ニミッツは戦いがはじまる前から、日本軍の目的や部隊の概略の編成、近接の方向、攻撃実施の期日に関する情報を把握していたという。
これでは、日本海軍の極秘情報が米軍に筒抜けどころか、米軍も作戦会議に参加していたようなものでは?
そしてミッドウェー海戦の当日、米軍は日本軍の動きを素早く察知し、航空機による奇襲攻撃をしかけ、壊滅的打撃を与えることに成功した。
日本軍は、自分たちがするはずだった理想的な攻撃をされたことになる。

米軍はミッドウェー島に根拠地を持っていて、戦場をよく知っていたという「地の利」があったし、レーダーや無線通信の能力も日本軍を上回っていた。
しかし、それより大きな要因は暗号解読の差にあった。
日本軍はケンシロウの言う「おまえはもう死んでいる」のような状態で、戦う前から負けていたのだ。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。