【人命を粗末にする日本】太平洋戦争から現代の過労死まで

 

きのう8月15日は終戦記念日。

東京でおこなわれた全国戦没者追悼式で天皇陛下は、「深い反省の上に立って、再び戦争の惨禍が繰り返されぬことを切に願い」と述べられ、安倍首相は「私たちが享受する平和と繁栄は戦没者の尊い犠牲の上に築かれた」と話した。

なのでここではあの戦争の反省として、日本が多くの尊い犠牲を出した理由について書いていこう。
それは一言でいうと、日本軍は日本人の命を粗末に考えていて、人間としてみていなかったから。

 

 

太平洋戦争中、フィリピンで日本軍と行動をともにしていた軍属の小松真一氏が虜人日記(りょじんにっき)に、日本がアメリカに負けた原因を列挙した。

その中のひとつが「日本は人命を粗末にし、米国は大切にした」というもので小松氏はこう言う。

日本は余り人命を粗末にするので、終いには上の命令を聞いたら命はないと兵隊が気付いてしまった。生物本能を無視したやり方は永続するものでない。

「日本はなぜ敗れるのか 敗因21ヵ条  (角川oneテーマ21) 山本 七平」

 

これと同じことをアメリカ人も指摘している。

太平洋戦争時の日本人について調べたアメリカの文化人類学者ルース・ベネディクトが、日本の文化や日本人の考え方や行動を「菊と刀」という本で説明した。

日本に関する文献の熟読と日系移民との交流を通じて、日本文化の解明を試みた。『菊と刀』はアメリカ文化人類学史上最初の日本文化論である。

菊と刀

ボクが大学生のころ、欧米人の日本人観を知るいい本だと教授からこれを紹介されたことがある。

 

この本でルース・ベネディクトは、日本軍が日本人の命を粗末に扱っていることに驚いている。

例えばビルマ会戦のとき、日本軍の捕虜と戦死者の割合は「142人対17,166人」、およそ1人の捕虜に対して死者120人という比率であった。

この数値は欧米の常識をはるかに超えている。

西欧諸国の軍隊では、戦死者がその全兵力の四分の一ないし三分の一に達した時は、その部隊は抵抗を断念して手をあげるのが自明の理とされている。投降者と戦死者との比は、ほぼ四対一である。

「菊と刀 (講談社学術文庫) ルースベネディクト」

 

この2つを単純に比較すると、欧米の軍隊では100人のうち3~40人が戦死すると降伏したけど、日本軍は99.2人が死ぬまで戦っていたことになる。

もちろんこれはビルマでの戦いだけを取り上げたもので、当時の日本軍には降伏を禁じる軍律もあったから(そもそもこれがおかしい)、条件は同じではないけど、それでもアメリカは自国民の命を大切にしていた一方、日本は日本兵を人として見ていなかったと言うことはできる。

「生物本能を無視したやり方は永続するものでない。」という小松氏の意見は、そういうことをフィリピンで経験したから生まれたのだろう。

 

米軍の収容所にはいる日本兵

 

そんな悲惨な戦争が終わって75年目をむかえたいまの日本では、さすがにここまでムゴイことはないけど、それでも外国人に比べて、日本人は日本人に対して厳しいところがある。

つい最近、スーパーのレジ係が客の前で水分補給をすることについてどう思うか、SNSで日本人と外国人に聞いてみたら、「それは失礼!客がいたら水を飲んではいけない!」と言ったのは日本人だけ。

欧米・アラブ・東南アジアなどの外国人はこれを健康や人権の問題と理解して、従業員も人間だからのどがかわいたら水を飲むのは当然の権利と捉えていた。
それぞれの地域の主な宗教はキリスト教・仏教・イスラーム教で、文化や価値観は違っていたけど、この点ではみごとに全員一致。

あるアメリカ人が言った「日本人の仕事は危険な完璧主義だ」という意見にはきっと世界中が賛成する。

くわしいことはこの記事をどうぞ。

【危険な完璧主義】アメリカ人から見た日本人の仕事っぷり

【余裕消失】外国人には異常? 仕事に対する日本人の考え方

 

 

日本人の仕事は完璧主義なのかクレーマーが怖いのか、日本の会社や社会は日本人を非人道的で危険な状態に追い込むことがある。

1970年代には、

「会社の生命は永遠です。その永遠の為に私たちは奉仕すべきです。私達の勤務はわずか20年か30年でも会社の生命は永遠です。」

という遺書を残して、本社ビルの屋上から飛び降り自殺したサラリーマンがいた。
くわしいことはダグラス・グラマン事件にある。

この精神は国から会社に変わっただけで、戦時中とあまり変わっていない。

 

80年代のバブル経済のときには、何人ものエリートビジネスマンが病気の兆候もなしに突然死するケースが相次いで、「過労死」が深刻な社会問題となった。

働き過ぎて死ぬという現象は欧米では激レア。
だから2002年には、「karōshi」という言葉がオックスフォード英語辞典に掲載され、いまでは英語版ウィキペディアにくわしい説明がある。

It was not until the mid to late 1980s, during the Bubble Economy, when several high-ranking business executives who were still in their prime years suddenly died without any previous sign of illness, that the term emerged into Japanese public life.

Karoshi

 

過労死はいまの日本社会でも深刻な問題になっている。

そこまでいかなくても、2015年にはこんな出来事があった。
この年の猛烈に暑かった日、JR東海道線の運転士が運転中に手足のしびれを感じて列車が緊急停止した。
その後、運転士は病院に搬送。
診断の結果、命に別条はなく、熱中症による脱水症状だったことがわかった。

本人が身体の異常を感じても水分補給ができなかったのは、乗客の目を気にしたか仕事へのプレッシャーだろう。

「日本は人命を粗末にする」、「生物本能を無視したやり方は永続するものでない」という小松氏の指摘は令和の日本でも有効だ。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。