満州の旅⑤成功体験が油断をうみ、旅のトラブルをまねく。

 

「空港には、飛行機の出発時刻の2時間前にはつくようにしてくださいね」

そんなアドバイスを旅行会社からうけた。

でもそれは、初心者に向けたアドバイス。
旅慣れたオレなら、1時間15分も前につけばじゅうぶん間にあう。

そう思っていつものように、1時間20分ほど前にバンコクの空港についた。

鼻歌まじりに受付カウンターに歩いていく。

 

そこで目にした長蛇の列に凍りつく。

「ダメだ!ここに並んでいたら、飛行機に間にあわない!」

そう思って列からはずれて、先頭にいたアジア人に頼みこむ。

「飛行機の搭乗時間がもうすぐなんです。!間に合わなんです。ボクを先にいれてもらえませんか?お願いです!」

 

こんな感じで、必死に頼んだ。

 

列の先頭にいたこのアジア人は、無表情にボクの顔を見ている。

そして「NO!列にならべ!」と言って後ろを指さす。

なんだと~?
と思ったけど、次に受付をする権利は彼にある。
こみ上げる怒りをおさえながら、「プリーズ!」と頼むしかない。

でもそいつは、「ノーノーノー」と言って列の後方を指さすだけ。

 

おかしい。
海外旅行でピンチをむかえたとき、「もうダメだ」とあきらめかけた瞬間に手をさしのべてくれる人があらわれた。
他人の旅行記や旅ブログにはそうかいてあったのに。

そのアジア人は、「絶対おまえにはゆずらん!」とガンとした表情をくずさない。
ここまで頑(かたく)なな理由がわからない。

知らないあいだに、ボクはこの人のサイフでも盗んでしまったのだろうか?

 

サムイ島(タイ)の空港にあるトイレ
熱帯魚を鑑賞しながらする、ってのはビミョウ。

 

でも、捨てる神あれば拾う神あり。
必死そうな様子のボクを見た、空港の職員が来てくれた。
ボクの話をきいて、アジア人に言葉をかける。
その職員がボクに顔を向ける。

「次はおまえが行け」

神よ!
あなたのご尊名はなんですか?

 

ヤック(鬼)
タイではお寺にいる。
日本でいう仁王像。

 

このときはさすがに反省した。
しかも猛烈に。

「『もう旅には慣れたぜ』と思って調子にのっていた」と痛感させられる。
完全に油断していた。

1時間15分ぐらい前に空港につれば、問題なく飛行機にのることができた。
今まではずっとそうだった。
何回もうまくいっていたことで、今回のようなピンチをまねいてしまう。

旅の経験をかさねることで、見通しがついて自信もうまれてくる。
そうすると、海外旅行の常識を無視してしまう。
「オレぐらいの旅経験があればこれでいい」なんてマイルールをつくって得意げな顔をする。

ボクの場合、 旅の小さな成功体験の積み重ねが油断をうんで、大きなトラブルをまねいてしまった。

「常識は自分勝手なルールより正しい」ということを思い知らされた一件でした。

 

おまけ

マメ知識として「油断」という言葉の語源を紹介したい。
これがなかなかひどい。

油断には、なんで「油」の文字があるのか?
この言葉の語源として有力なものに、「大般涅槃経」という仏教の経典にでてくる話がある。

王が臣下に油を持たせて通りを歩かせ、一滴でもこぼしたら命を断つと命じる。という話です。

この故事の「油をこぼしたら命を断つ」というところが「油断」の語源となっているという説があります。

つまり「断つ」のは「油」ではなく命のほうなのです。

語源(油断)

この他に、「寛(ゆた)に」という言葉が変化して「油断」になったという説もある。
どっちでもいいけど、油断は大敵。

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。