国が変われば常識も変わる。
日本ではお箸でご飯を食べ、イギリスではナイフとフォークで肉を切り、インドでは手でカレーを食べる。
これらの違いは文化や考え方の違いだから、あたり前のことですね。
でも人の命にかかわることとなると、これは価値観の違いですましては困る。
インドを旅行中、バスに乗っていたときのこと。
そのとき、バスの運転手がお酒を飲みながら運転をしているのを見て血の気が引いた。
「大丈夫、大丈夫」と運転手は言っていたけど、冗談ではない。
「酒を飲みたい」という個人の自由に、そこまで価値をおかれては困る。
結果的に、無事目的地には着いたけど。
最近、中国では路線バスでとんでもないことがあった。
女性運転手がバスを運転中にカップラーメンを食べ始めたのだ。
もちろん、乗客を乗せたままで。
それに気づいた乗客が撮影してネットに投稿。
そのあと女性運転手は停職処分になったとか。
この女性ドライバーは、なんでこんな非常識で危険な行為をしたのか?
その理由はこれ以上ないほどわかりやすい。
カップ麺を食べたその理由は、勤務前に何も食べておらず空腹に耐えられなくなったとのこと。
お腹が減ったから。
そんな子どものような理由で、こんな無謀なことをする。
お腹が減ったらご飯を食べたくなる。
それは誰でも同じ。
かといって、そんなことに人命以上の価値をおかれては困る。
でも、これはさすがに一般の中国人の常識を超えていたようで、ニュースになっている。
自動運転の時代になったら、カップ麺を食べてもスマホをしても良かったのかもしれないけれど。
残念、この女性のドライバーは時代を先取りしすぎた。
たくさんの客の命を乗せている、バスの運転手がこれかよ。
だから、中国人は・・・。
と、言いたいところだけど、「NHK NEWS WEB」のこのニュースを見たらそうも言えなくなる。
「観光バスの運転手 運転中にポケモンGO」
ドライバーは運転しながら、スマホでポケモンGOをしていたのだ。
これもネットでバレてしまった。
でも、さすがに客を乗せている時ではなくて、客を降ろしたあとのバスでポケモンGOをしていたらしい。
それでも、あってはならないことには変らない。
これを撮影したのは、一緒に乗っていたガイドらしい。
前に、中国で出回っていた「ニセ肉」について書いた。
屋台や食堂で、看板には「羊肉」と書いておきながらまったく別の肉を売っているということについて。
「ニセモノの肉」と聞けば、日本の常識から考えて「豚肉」や「鳥肉」といったより安い肉を想像すると思う。
でもさすがは中国、「ニセ肉」のレベルが違う。
日本の常識をはるかに越えたものを、客に食べさせていた。
食品をめぐる中国での数多いスキャンダルの中で最 新のこの騒動は、安いあひる肉に有毒化学物質と羊の油を混ぜたものが より値段の高い子羊肉として売られていたというものだ。
09年には有毒 ではないが羊の尿にあひる肉を浸して羊肉の風味を持たせるという事件 があった。
羊の尿、安いあひる肉、有毒化学物質・・・。
これだけでも言葉を失ってしまうけれど、これだけではない。
他にも、殺鼠剤で殺したネズミの肉、検疫を受けていない肉、病死した動物などなど。
うっ、めまいが・・・。
これは数年前に見つかったことだけど、「もう、昔の話で今は違う」と過去形にはなっていないだろう。
今でもあると思う。
悪いことをしてたら、地獄に落ちるぞ~。
西安のお寺。
日本人のボクからしたら、「なんで中国では肉や油だけではなくて、いろいろな偽物が出回るのだろう?」と不思議に思ってしまう。
でも、視点を逆にしたら、浮かぶ疑問もまったく反対になる。
中国人から見たら、「なんで日本では、ニセモノが少ないのか?」ということを疑問に感じるらしい。
2016年11月4日の「サーチナ」に、次のような記事があった。
どうして日本には中国のようにニセモノ商品が多くないのか=中国メディア
中国ではニセモノやパクリ商品は当たり前のようにある。
でも日本ではそんなことがない。
このような日本と中国との違いを指摘して、中国メディアが「どうして日本ではニセモノ商品が少ないのか」を考えた記事をのせている。
それによれば、日本でニセモノが少ないのは、日本の社会が「信用第一」でなり立っているからという。
日本が欧米同様、社会全体で1つの信用体系が成り立っており、一たびニセモノを生産して販売すれば、政府から処罰を受けることになると説明。
そして、このような行為をメディアが暴露することによって、たちまち消費者に知れ渡り、商売ができなくなってしまうと解説した。
(同記事)
それに日本は信用第一の社会だから、ニセモノをつくれば「汚点」として記録される。
そうなると、もう一度会社を作って再起を図ることは「絶対に不可能」と書いてある。
「絶対に不可能」かは分からないけど、中国人からはそう見えるのだろう。
日本と中国とは、価値観や常識が大きく違う。
「社会全体で1つの信用体系が成り立っており」
「信用が重んじられる日本において」
このように、日本の社会全体で共通する認識であれば、それは日本人の常識ということになる。
日本では、信用第一という考え方が特定の人だけではなくて、誰もが共有している社会の常識になっている。
そのことで思い出したことがある。
日本とインドのビジネスにくわしい専門家が、両国のビジネスのやり方の違いを指摘していた。
日本のビジネスでは常識だけど、インド人には理解できない考え方があるという。
それは、「損して得取れ」という考え方。
インド人が最も理解できないのが、日本人の「損して得取れ」の発想だ。日本人は、将来のビジネスに有利に働くならば、現時点で少しばかり損してもいいと考える。これが、インド人には理解できない。
最初から得を取ろうとする。初めに損するなら、やらない方がましなのだ。契約相手と同様に、将来も信用しない。だって、明日何があるかわからない。そうとらえるのが、インド人である。
インド人パートナーは、利益達成にきわめて性急だ。得は、今すぐほしい。
(日本を救うインド人 島田卓)
「相手も将来も信用しない」という考え方をしていたら、「損して得とれ」というビジネスの方法が受け入れられるわけがない。
日本で「損して得取れ」というやり方が有効なのは、人との信用とても重視している社会だから。
信頼や信用を最上とする価値観が、常識として社会に定着しているからだろう。
そうでなかったら、「相手と将来を信用する」というビジネスが通用するはずがない。
日本が中国と違って、ニセモノが少ない理由はなにか?
「信用第一」の考え方が、社会のすみずみにまで常識として浸透していることが一番大きいのだと思う。
この中国紙の分析では、他にも理由があるという。
日本でニセモノ少ない別の理由は、責任の所在を明らかにしているところ。
誰がどこでつくった物なのかを、はっきり分かるようにしている。
日本のスーパーなどで売られているあらゆる商品の包装には、生産者と生産場所が具体的に書かれており、何か問題があると判断すれば、すぐに当事者を見つけ出すことが可能であると指摘。
(同記事)
確かに、日本と中国とでは、行政の動き出しは違うだろう。
日本に住んでいる中国人は、「日本の役所は素晴らしい」と絶賛していた。
何より、仕事が早いそうだ。
その中国人が住民票を取りに市役所に行ったら、すぐにくれた。
中国の役所ではこうはいかないらしい。
庶民が何かを頼んでも、コネがなかったらどれだけ時間がかかるか分からないという。
遅くなっても「お待たせして、申し訳ございません」と謝ることは、絶対に絶対にないと力説していた。
日本で「お役所仕事」と言うと「非効率」の意味だけど、外国人に聞くと仕事が速いしサービスも良いとけっこう好評だ。
これも信用第一の社会だからかも。
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