アメリカの社会問題が人種差別とすれば、インドのそれは宗教間の対立だ。
インドで生まれたヒンドゥー教・仏教・シク教・ジャイナ教の間ではいいのだけど、ヒンドゥー教徒とイスラーム教徒の争いは解決の見込みのない、インド社会の大きな問題となっている。
そんな現状を少しでも変えようとインドの「タニシュク」という会社が、イスラーム教とヒンドゥー教の融和を描いたコマーシャルを制作してSNSやテレビで公開した。
「ひとつになることの美しさ」をテーマにしたこのCMは、イスラーム教徒の男性と結婚したヒンドゥー教徒の女性が妊娠し、ヒンドゥー教のやり方で祝福を受けるというもの。
「娘を喜ばせる習慣はどこの家にもある」というイスラーム教徒の義理の母親の言葉がインド国民の共感を集め、SNS上ではこのCMを支持する声が集まった。
と思うじゃないですか?日本人の感覚だと。
でもこうやって社会に一石を投じると、そこらじゅうから石が飛んできて袋叩きにされるのがインドの現実。
CNNニュース(2020.10.15)
ネット上ではこの内容に反発し、タニシュクのボイコットを呼びかけるハッシュタグが広がった。
反イスラム主義者らが「ラブ・ジハード(愛の聖戦)」と呼ぶ陰謀の一環だと主張する声も上がった。イスラム教徒が恋愛や結婚を口実にヒンドゥー教徒の女性を改宗させようとしているという陰謀説だ。
宗教間の融和を描いたCM、非難集中で取り下げ インド
「イスラムとヒンドゥーの融合がそんなに嫌なら、その融合の世界最古の象徴であるインド自体をボイコットしてはどうだ」と批判を批判するインドの政治家もいたけど、会社側は「テーマと正反対の反響を呼んでしまったのが大変残念だ」とCMを封印した。
インドでヒンドゥーとイスラームの対立は、古代からつづく社会問題だ。というワケでもなく、これはインドを植民地支配したイギリスの分断政策によって激化した面が大きい。
イギリスが、インド人民が団結して植民地支配に反対することができないよう、宗教間やカースト間の違いを強調して対立をあおる「分割統治」の政策を行ったことが大きな要因である
1857年にインドでイギリスに対する大反乱がおきたものの失敗し、そのあと対イギリスのためにヒンドゥー教徒とイスラーム教徒は協力しないといけないという空気が生まれる。
イスラーム教徒の宗教改革者サイイド・アフマド・ハーンは生涯をかけて両宗教の融和を説いた。
いまやわれわれはともにインドの空気を吸い、ガンジスとヤームナーの聖なる水を飲んでいる。われわれはともにインドの大地が与える食物で生きている。われわれは生死をともにしている。(中略)われわれはひとつの民族であり、国とわれわれの進歩と福利は、統一と相互の共感、愛に依存し、たがいの不一致、頑迷さ、敵対、悪感情は必ずやわれわれを滅ぼす。
「近代インドの歴史 (山川出版社) ビハン・チャンドラ」
「ひとつになることの美しさ」をテーマにしたCMも、19世紀のインド人の言う「たがいの不一致、敵対はわれわれを滅ぼす」もヒンドゥー・イスラームの宗教対立を否定したものだけど、いまもむかしもこれがインドでは実現されない。ガンディーもこれができなかった。
民族宗教の神道と外来宗教の仏教が、チョー仲良く共存している日本はその反対側にいる。
おまけ
ヒンドゥー教の聖地ヴァラナシ
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>そんな現状を少しでも変えようとインドの「タニシュク」という会社が、イスラーム教とヒンドゥー教の融和を描いたコマーシャルを制作してSNSやテレビで公開した。
(中略)
>「娘を喜ばせる習慣はどこの家にもある」というイスラーム教徒の義理の母親の言葉がインド国民の共感を集め、SNS上ではこのCMを支持する声が集まった。
>と思うじゃないですか?日本人の感覚だと。
???
「日本人の感覚」って、宗教対立に無知であるという感覚のことですか?
日本人は宗教の融和や協調性を重んじると思います。