【日本の新旧融合】韓国人・インド人が驚いたファックス文化

 

フランスを代表する世界的な社会人類学者で民族学者のレヴィ=ストロースは、昭和の日本を見てこう評した。

「私が非常に素晴らしいと思うのは、日本が、最も近代的な面もおいても、最も遠い過去との絆を持続し続けていることができるということです」

 

日本文化を高く評価する親日家であり、1993年春の外国人叙勲で勲二等旭日重光章が授与されている。

クロード・レヴィ=ストロース

 

クロちゃんはそうホメてくれたけど、在日外国人の中には、日本にいい加減「遠い過去とのキズナ」と決別してほしいと思う人もいるらしい。

朝鮮日報のコラムで東京在住の韓国人記者が、日本の国会議員にインタビューしようと事務所に電話をしたところ、秘書から質問紙をファックスで送るよう言われて苦労したという話を書いている。(2020/10/31)

【コラム】「ファクス・ジャパニーズ」

記者もこれが日本の文化ということは知っていたから、ふだんなら問題なかったのだけど、いまはコロナのせいで自宅で仕事をしているからプリンターとファックスがない。

「申し訳ないですが、コロナの影響で在宅勤務をしています。電子メールでお送りさせてもらえれば、大変ありがたく存じます」と丁寧な日本語で事情を説明すると、秘書は「例外は認めず「それならコンビニに行ってファクスで送ってください」と言ってきた。説得は通じなかった」という。

もしこれが韓国だったら、はじめから電子メールOKで、コロナで出社できないことを話せば原則的なルールを超えてきっとOKになる。
ちなみにいまの韓国社会にもファックスはあるけど、もう絶滅寸前で、この機械を使う機会はほとんどないらしい。

 

「コンビニから送ってください」と言われたこの韓国人さんはしばらく考えて、ソウルにある本社を経由したほうが早いと考えたらしく、韓国にいる後輩記者と担当社員に事情を説明して「ソウルに電子メール→編集局で質問紙を印刷→東京にファクス」という方法を使った。
自分がコンビニへ行って作業をするんじゃなくて、韓国にいる後輩にやらせるという発想は韓国人っぽい。韓国の特に男性は年下にけっこう無茶なことを頼む。そして大体、後輩の返事は「はい」か「YES」しかない。

でもなぜか国会議員の事務所には届かず、秘書からは「送った2通のどちらも受信できなかった」という連絡を受ける。
でもそのあと、なんとか電子メールのアドレスを教えてもらって、質問をメールで送って返信を受け取ることができた。
数分で終わる作業を「ファックスでプリーズ」と言われると、東京(自宅)~ソウル~東京(議員事務所)の間で、何度もメールや質問紙でのやり取りをしないといけなかった。

もちろん日本は韓国人から見ても、間違いなく世界有数の科学技術をもつ先進国だ。

日本は地球から3億キロ離れた小惑星に探査船を送るほど科学技術が発達した国だ。月に宇宙飛行士を送る米国のアルテミス計画にもパートナーとして協力する。

 

なのに、「日本では公務員の86%が議員との業務をファクスで行っている」という状態は韓国人には信じられないらしい。

そういえば知人のインド人留学生も同じようなことを言っていた。
彼がセブンイレブンでバイトをはじめたとき、まず驚いたのは店内にファックスマシーンがあることだった。
インドでファックスの話を聞いたことはあったけど、実物を見たのは日本に来てからと言うから、彼にとっては「失われた古代文明」を東洋の島国で発見した気持ちだったかも。
そしてもっと驚いたのは、客の様子を見ていると、そのファックスには需要があって店に利益を与えていること。
おまけにいうと、そのインド人にはカードで払う客が少ないことも予想外で、知人の韓国人も日本人の現金主義に驚いていた。

「日本が最も近代的な面もおいても、最も遠い過去との絆を持続し続けている」という面は、基本的には非常に素晴らしいことだけど、ファックス文化についてはもうサヨナラしてもいいのでは。
韓国人が悪戦苦闘した連絡も結局は電子メールで事足りたし、ファックスでの送受信には日本国内でも疲労や批判があるのだから。

 

以下、蛇足

日本人は外国人に「ファックス」と言わない方がいいかもしれない。
むかし見たテレビ番組で、日本人の言った「ファックスした」を一瞬、「f〇ck」とカン違いしたというアメリカ人がいて「まだ”ゼロックスする”のほうがいいよ~」と笑っていた。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。