前回に続いて、友人の韓国人から聞いた軍隊での生活について書いていきたい。
彼の軍隊生活で怖かったことは、敵の北朝鮮軍でも本物の武器を使った訓練でもなくて、人だという。
同じ韓国人によるいじめだ。
軍の基地では集団生活をしていて、ストレスもたまりやすい。
そのため、いじめが起こりやすい。
韓国では、軍のなかでのいじめが大きな社会問題になっている。
いじめで自殺した韓国人兵士は、何人もいる。
友人が軍隊生活で見たのは、殴る蹴るといった暴力や言葉で精神的な苦痛を与えるといったもの。
これらは確かにひどいことではあるけれど、日本の学校でもあるようなものだったから「想像を絶する」というほどのものではなかった。
でも、軍の基地では考えられないようないじめもあって、それが時どきニュースになっている。
2年前には、軍隊内でのいじめというより「拷問」によって1人の兵士が死亡した。
このときは全韓国人が激怒した。
中央日報の社説(2014年08月04日)から。
【社説】銃乱射に続いて殴打死亡、陸軍首脳部が責任を取るべき=韓国
軍検察によると、イ兵長ら4人の先任兵はユン一等兵に歯磨き粉1本をすべて食べさせたり、横になって口を開かせ、水を注ぎ込むという拷問式の過酷行為をした。さらに内務班の床のたんや食べ物までなめさせたことが明らかになった。
このあとユン一等兵は亡くなった。
この事件が起きたときは、「いじめ再発のために、軍の組織を改革する」というレベルではすまくなった。
記事のタイトルにあるように陸軍の首脳部が責任を取って、根底から軍の組織を立て直さないといけない、と世間から非難された。
でもそのわずか2年後、今年(2016年)にはこんなニュースが報じられている。
韓国軍で想像超えるいじめ、副士官が兵士に電気ショック、睾丸殴る=韓国ネット「この国を出ていきたい」
被害者は理由のない暴行が10回を超え、顔が不細工というだけで暴行されたこともあったと述べた。副士官はさらに、自分と目が合ったという理由で、兵士を椅子に座らせ、睾丸を殴るなどした。
軍隊内でいじめが起き、それが発覚すると軍が再発防止策を国民に約束する。
でもしばらくすると、またいじめが見つかる。
こんな実態に「これは氷山の一角だ」「この国を出ていきたいと思う」と韓国人は不安や怒りを募らせている。
北朝鮮軍と向かい合う韓国軍の兵士(板門店)
2014年には韓国を震撼させるような事件が起きた。
それが、「江原道高城郡兵長銃乱射事件」という銃の乱射事件。
22歳の兵長が同僚5人を射殺し、7名を負傷させて逃走する。そして本人は自殺未遂を起こした。
銃の乱射事件が起こるのは、アメリカだけではない。
この事件の一番の原因は、軍隊内でのいじめとされている。
遺書と見られるメモには、自分が評価されないことや無視されたことが辛かったなど書かれていたという。
韓国軍では、この他にもいじめが原因となった銃の乱射事件が起きている。
韓国人の友人は、こうした軍隊内でのいじめは絶対になくならないという。
「どんな対策をしても、なくなることはありませんね。なくなってほしいとは思いますけど、集団で生活している以上、いじめは起こりますよ」
これは日本の学校でも同じ。
学校でのいじめが起きて、問題になるたびに新しい対策がたてられたけど、いじめがなくなることはない。
今年も、いじめによる自殺が起きている。
どうやったら、いじめはなくなるのだろう?
友人は、韓国軍に入隊した以上、自分の命は韓国のものだと考えていたらしい。
北朝鮮軍との戦闘や訓練中の事故で死ぬということは、ほとんどないだろうけど、心のどこかでその覚悟はできていたという。
でも、敵の北朝鮮軍ではなく訓練中の事故でもなく、同じ味方の韓国人から殺されるというのは、あまりに理不尽で納得がいかない。
日本ふうにいえば、同じ釜の飯を食った仲間から命を奪われるということには耐えられないという。
でもこれは、日本の学校でも同じことだ。
これでは韓国旗が泣いてしまう。
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