少し前に、「ヘルコリア」について書いた。
激しい競争社会の韓国は生きにくい。
それでヘルコリアと呼ばれるようになった。
OECD(経済協力開発機構)加盟国のなかで、韓国は自殺率がワースト1位(10万人あたり29・1人、日本は18・7人)となっている。
韓国の若者たちは韓国を「ヘル(地獄)」のようだと言っているけど、大人たちは、こんな言葉を使っている韓国の若者を批判している。
一生懸命勉強しても、一体何の意味があるのか-。受験、就職など直面する生活の不安に背を向け、政権批判や風刺に懸命な若者たち。親の世代からは「口ばかり上手になって、努力しないことを正当化している」と不安の声も漏れる。
世代によって価値観や考え方が違うのは、どこの国でもおんなじだ。
では、前回に続いて「スプーン階級論」の話。
今の韓国では、金持ちと貧しい人の格差が大きな問題になっている。
金持ちの子どもはそのまま金持ちになって、貧しい人の子は貧しいままであるという格差の固定化がすすんでいるという。
こんな韓国社会の実態に多くの若者が怒っている。
そんな不公平な社会を背景に、去年は20代30代の若者のあいだで「スプーン階級論」という言葉が流行した。
中央日報のコラム(2016.01.13)
今こそ彼らは遅ればせながらも現実を正しく見つめ始め、その原因が「金の箸とスプーン」「土の箸とスプーン」に代弁される不公正かつ不公平な構造にあるということを悟り始めた
「ヘル朝鮮」を「ヘブン大韓民国」に
この「スプーン階級論」の意味を理解するには、次の英語のことわざを知っておいた方がい。
ヨーロッパでは有名な言葉だから、一般常識としても知っておく価値はある。
「born with a silver spoon in one’s mouth」
「銀のスプーンを口にくわえて生まれる」ということから、「恵まれた家、裕福な家に生まれた」という意味になる。
「彼は銀のスプーンを口にくわえて生まれてきた」というと、裕福な家柄の生まれだという意味になり、「彼は木のスプーンを口にくわえて生まれてきた」というと、貧しい家の生まれだという意味になる。
金持ちの象徴が「銀のスプーン」で、貧しさの象徴が「木のスプーン」ということ。
このことわざは、セルバンテスの「ドン・キホーテ」から生まれたらしい。
このヨーロッパのことばが昨年の韓国で流行語となった。
それが、親の職業や地位によって子世代のスプーン(階層)が決まるという階級論。
どこの家に生まれるかで人生は決まってしまう。
本人が努力しても上の階層に行くことはできない、という韓国の社会事情を嘆いている。
「スプーン階級論」(수저 계급론)によれば、 韓国社会で最高の地位にある財閥の子供は金のスプーン、以下、銀のスプーン、銅のスプーンで、金と地位のない家に生まれると泥スプーンになる。
具体的にはこんなヒエラルキーが存在するようだ。
金のスプーン:親の資産が20億ウォンまたは世帯年収が2億ウォン以上
銀のスプーン:資産10億ウォン以上または年収8000万ウォン~1億ウォン。
銅のスプーン:資産5億ウォン以上または年収5500万ウォン以上
泥のスプーン(最下層):具体的には資産5000万ウォン未満または年収2000万ウォン未満の世帯の出身者
金のスプーンの「年収2億ウォン」は、日本円にすると約1千9百万円。
泥のスプーンの「2000万ウォン」は、約190万円。
この金と泥の間に、銀のスプーンと銅のスプーンの階級がある。
日本では昨年、「日本人には一般国民と上級国民がいる」とネットで話題になった。
くわしいことこれを。
スプーン階級論によると、韓国社会のなかでは国民の階級が4つある。
それだけ、歪(ゆが)んだ社会構造になっているということなんだろう。
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