日本を超える高学歴・高競争社会といわれる韓国に住む人たちにとっては、大学入学試験である「修能」(大学修学能力試験)は人生をかけた絶対に負けられない戦い。
この修能の日が近づくと、韓国では合格を祈願するさまざまなグッズが登場する。
修能は日本でいうセンター試験だから、「きっと勝つ(キットカット)」や「受か~る」といった縁起の良いグッズが店に並ぶようなもの。
韓国語の「付く」には「合格する」という意味もあることから「志望校に受かりますように」と願いを込めて餅や飴を、「正しい答えを選ぶ(刺す)」という願いを込めてフォークを合格祈願のアイテムとして受験生にプレゼントすることがよくある。
そんな運命の決戦が2020年は12月3日におこなわれた。
修能は全国的なイベントだから有名人がエールを送ることはよくあって、ことしは「東方神起」のユンホさんが「いつも皆さんを応援しますね」とインスタグラムに投稿した。
大学受験ということで日本人もここまでなら、まぁわかるし共感もできる。
でも、ここから下は韓国ならではの光景で日本ではあり得ない。
試験場の高等学校や試験場と隣接している中学校は休校日となり、済州島を除く韓国の官公庁や企業の出勤時間,大·高·中·小学校の登校時間も交通渋滞防止のため通常より1時間繰り下げられる。
この日は国全体が修能を中心にして動く。
もし遅刻しそうな受験生がいると警察官がパトカーや白バイに乗せ、サイレンを鳴らしながら受験会場へ送り届けるのだ。
これはもう修能の朝の風物詩。
「ダメだ!間に合わない!」というときには救急車が出動して受験生を会場へ運ぶという、日本ならアニメやマンガの世界の話が韓国では現実に起こる。
同じ大学受験だからこそ、日本人と韓国人の考え方や価値観の違いがよく表れる。
日本なら時間を守ることも受験資格の一つで、きめられた時刻までに到着できなかったときは受験資格を失うのが普通。白バイや救急車での緊急搬送なんて期待できない。
だから韓国を見て日本ではよく、「やり過ぎ」「甘えてる」といった批判が出るけど、知人の韓国人に聞くと、この日のためにがんばってきた全ての努力が、遅刻のためにゼロになるのは残酷すぎる。
そう思うのなら、もっと早く出発するべきで遅刻は遅刻。
大雪で電車やバスが遅れた場合などで特例措置が認められることもあるけど、その条件はかなり厳しい。
自己責任の日本と違って、社会全体が受験生をできる限りサポートするのは韓国社会の良いところと言う。
ルール重視の日本人と、情を大事にする韓国人の違いだ。
これを日韓の文化や価値観の比較でとらえるのなら面白いけど、外交関係でぶつかるとかなりやっかいなことになる。
韓国問に精通した日本の外交官に言わせると、韓国語の「オルバルダ」(正しい)を日本語で表現するのが一番困る。
韓国と日本社会の「正しい」はそれぞれ概念が違うから、日本人に「オルバルダ」を「正しい」と伝えても意味を正確に理解できないという。
そんなことが中央日報のコラムにある。(2019.01.04)
合意や約束があればそのとおりすることが「正しいやり式」だ。しかし、韓国で通用する「オルバルダ」の意味は、それこそ時代によって異なって受け止められる。「その時は合っていて、今は間違っていること」が「オルバルダ」という意味として使われるということだ。
【グローバルアイ】約束を守る国・日本、正義が重要な国・韓国
前に約束したことでも現在の基準から考えて「正しくない」と判断されたら、韓国ではその約束は変えてもいい。というか、変えないと正義を実現できないから、それはしないといけない。
それに対して日本では、価値観が変わっても過去の約束は変えられない。
このコラムには日韓のこんな違いについて、「日本は約束を守ることが重要な国である一方、韓国は正義を重要視する国」と書いてある。
この正義の基準が韓国人の場合は「情」で、困っている人や被害者を救済することが最優先されるから、ルールや約束は“柔軟に”変更することができる。
でも日本人はそれを認めらない。
だからいま慰安婦・徴用工問題でそれが正面衝突していて、両国関係は戦後最悪というほど悪化している。
国内のことなら韓国基準を当てはめてくれてもいいけど、国家間の関係となると、これはお互いが約束やルールを守るしかない。
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