「この雪に馬鹿者どもの足の跡」という江戸時代の川柳がある。
雪が降って積もると無条件でうれしくなって、「ヒャッハー!」と雪景色の街を見に出歩く庶民がたくさんいたらしい。
令和のいまでもそんな人はいるし、個人的にも、真っ白な地面に足跡をつけてみたいという少年のような心を忘れるべきではないと思っている。
でも、雪を見てはしゃぐ人がいる一方で、そういう人を「馬鹿者ども」とからかう人もいる。この構図もきっと現代でも変わっていない。
雪が積もるとよろこぶ人は海外にもいて、イギリスでは3歳の子供が友だちと一緒に約1.8mの雪だるまを完成させた。
すると、それを見つけたゴミ収集作業員が蹴飛ばして破壊した。
清掃作業員は「ビンマン」でいいのか。
ビンマンがスノウマンを蹴り倒したと。
「なぜここまで蹴る?」と思ってしまうけど、こういう大人は日本にもいるかもしれない。
大事な雪だるまを壊されてしまった男の子がその悲しみを親に伝えると、親はこの男性が働く清掃会社に苦情を言う。
結果、作業員は解雇された。
現地メディアのインタビュー応じた男性は、雪だるまの頭部に蹴りを入れた動機をこう語る。
テックインサイトの記事(2021.01.31)
ただ蹴ってみたんです。雪だるまに感情は無いですしね。(中略)私はそこまで3歳の子供に影響を与えるとは思ってもみなかったんです。結果、私は仕事を失ってしまいましたけどね。
3歳児が作った雪だるまを蹴って壊したゴミ収集作業員、父親のクレームで解雇(英)
これに日本のネットの反応は?
・人生の不条理さと世間の世知辛さを知るいい機会だったろ。
・解雇????まじで…?
・学生の頃通学路にあった雪だるまとかカマクラ蹴ってぶっ壊したやろ
・ゴミ清掃作業員にだって家庭や生活もあるだろうよ。
・作業員には罰として壊したの以上に巨大な雪だるまを3歳児と協力して作れ
その後職場復帰すればいい
「この雪に馬鹿者どもの足の跡」と詠むだけなら、こんな大事にはならなかったのに。
イギリスには子供の権利を大事に考えて、これを保護しようとする一面がある。
たとえば民間の立場から、困難にある世界中の子供を救おうと活動しているNGO(非政府組織)の「セーブ・ザ・チルドレン(Save the Children)」をつくったのはイギリス人だ。
第一次世界大戦のあと敵味方に関係なく、食べる物がなくて飢餓に瀕した子供を救うためイギリス人のエグランティン・ジェップが1919年に、ヨーロッパの子供たちに食料や薬を送ったのがこの世界的に有名なNGOの原点となった。
ジェップは「私には11歳以下の敵はいない」として、子どもの救済に考えを同じくする人々とともにセーブ・ザ・チルドレンを設立するに至った。
セーブ・ザ・チルドレンのマッチ箱(スウェーデン)
そんな子供の権利を大事にし尊重する価値観のせいか、それともこれは個人的な見方からなのか、まえに日本の小中学校で英語を教えていたイギリス人が学校のマラソン大会を「人権侵害」だと怒っていた。
それにはいくつか理由があって、太った子供も体力のない子供も同じ距離を走らせるのはいけない、強制ではなくて本人や親の許可を取って走りたい子供だけが参加するべき、てなことを言う。
イギリスで「全校一斉」のマラソン大会を開こうとしたら、親から文句が飛んできて、きっと開催できなくなるというのが彼女の見方だ。
子供を大事に思うから日本では全国の学校でマラソン大会をしているのだけど、このイギリス人の考え方はその真逆。
ほかのイギリス人にきいたことがないから、これが一般的な価値観かこの人独特なものかは分からない。
とにかく日本では通用しない意見だなと印象に残った。
今回の件も日本だったら、子供がつくった雪だるまを大人が壊しても解雇まではならないだろう。お菓子を持って行って、「すみませんでした」と頭を下げたらそれで済みそう。
ネットを見ると、作業員が雪だるまの頭を蹴り飛ばしたことよりも、子供と親がビンマンのクビを飛ばしたことに違和感を感じる人が多かった。
子供の権利や自由を優先することは、ときに大人のそれを奪うことになる。
「ただ蹴ってみたんです」と話すゴミ収集作業員の妻は妊娠中だった。
彼は父親になる前に無職になってしまった。
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