外国人も喜ぶ、日本人の「縁起かつぎ・ことば遊び」の発想

 

いまアメリカで福岡の日本酒「豊醸 美田」が人気を呼んでいるという。
その理由はなにか?
いまアメリカ人が、思わずその酒を手に取ってみたくなるワケを考えてほしい。

 

答えは、この「豊醸 美田(ほうじょう びでん)」の英語表記「HOJO BIDEN」が、アメリカの新大統領バイデン氏の名前「Joe Biden」に似ているから。
いや、味も良かったと思うよ。
でもそれ以上に、ビデンとバイデンの語呂合わせがアメリカ人の心をつかんで、いまこのお酒が米国で売れているらしい。

 

 

これは数年前、日本に住んでいたイギリス人がSNSに投稿したメッセージ。

「Did you know? In Japan, the chocolate bar Kit Kat is considered Good luck.」

知ってた?
日本でキットカットは「幸運」と考えられているんだ。

これはもちろん、受験シーズンにスーパーやコンビニで売っているキットカットの「きっと勝つバージョン」のこと。
この時期にはカールが「受カール」、カフェオーレが「勝てオレ」、キシリトールはかなり強引に「きっちり通る」となって店頭に並んでいる。

キットカットを食べればきっと勝つる!
というほど現実や人生は甘くないのは誰でも知ってるけど、日本人はこういう縁起かつぎやことば遊びが昔から大好きだ。

そんな気分は外国人にもある。
知人のアメリカ人が日本語学校で学んでいたとき、日本人の先生が試験の数日前に「きっと勝つ」を生徒全員に配った。
これは簡単な日本語だから読めるし、「Good luck」を意味することも分かる。
キットカットは母国でもおなじみのチョコレートバーだから、アジア人や欧米人の外国人はみんなハッピーになったらしい。

 

合理的な根拠がなくても、それによって何となく幸せや不幸な気分になるのが迷信ってやつだ。
海外からみて日本人の迷信の特徴には、「8(=繁栄)」「4(=死)」といった感じに言語に関わるものが多い。

A significant portion of Japanese superstition is related to language. Numbers and objects that have names that are homophones (Dōongo / Dōon Igigo (同音語 / 同音異義語, lit. “Like-Sound Utterance” / “Like-Sound Different-Meaning Utterance”)) for words such as “death” and “suffering” are typically considered unlucky (see also, Imikotoba).

Japanese superstitions

 

この英語版Wikipediaで紹介されている「9」が面白い。
これを「く(苦)」と読むと不吉だけど、「きゅう(救)」と読むとラッキーナンバーになるという説明がある。(9 is considered a good number when pronounced “kyū”, like a word for relief.)

こういう迷信は中国や韓国などの漢字文化圏の国でみられる。

 

アメリカで「豊醸 美田」が人気というのは迷信とは違う。
「Joe Biden」はただの人名で幸運のシンボルではないし、新大統領の誕生というタイミングと重なったからネタとしてうけただけ。
いや、味も良かったと思うよ。

 

「きっと桜咲く」はねらい過ぎか。

 

「きっと勝つ」「受カール」「勝てオレ」みたいなことば遊びを日本人は古代からしている。

きょう2月2日は「においの日」なので、日本の歴史でもっとも有名な香木を紹介しよう。
それがこの蘭奢待(らんじゃたい)。

 

 

この香木の伝来については、聖徳太子の時代に中国から伝わった、いやいや聖武天皇の時代だ、いやいやいや実際は10世紀以降だ、と諸説ある。が、天下第一の名香と言われているのは誰もが認めるところだ。

いまは奈良の正倉院に保管されている蘭奢待。
これを切り取ってにおいをかいだ人物には足利義満、足利義政、織田信長、明治天皇といった日本史のスーパースターがいる。
徳川家康の場合は「切り取ると不幸が起こる」という言い伝えから、それをしなかったという。天下の将軍も迷信を恐れたか。

さてこの「蘭奢待」という字の中には、日本の超有名なお寺の名前が隠れているのだが、それがお分かりだろうか。

 

 

答えは「東大寺」。
蘭奢待には「東・大・寺」の文字をふくませているのだ。
現代の日本人でも、こんな表現に風流や優雅さを感じないだろうか。いや感じてくれ。
詩や歌でこんな呼び名を「雅名(がめい)」という。

こういう伝統的な発想が「きっと勝つ」や「受カール」を生み出したり、それが受ける日本人の感性の根底にあるはずだ。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。