「愛くるしい日本国民の微笑、比類なき礼節、上品で果てしないお辞儀と明るく優美な表情には、はるかに心よさを覚えます。(シドモア 明治時代)」
家からセントレア空港までバスで移動する。
日本人には目新しいものは何もないけど、外国人から見たら「日本の高速道路はすばらしい」と思うこともある。
「日本の高速道路は本当にすごい。先進国っていうのは、こういうハイウェイがある国のことなんだ」
インド人のシーク教徒が、そんなふうに日本の高速道路をほめていた。
そんなことがあったから、今回はインドの「シーク教」について書いていきたいと思う。
インドにはチベット人の仏教徒がたくさんいる。
「シーク教」と聞いてもなんだかよく分からない人が多いと思う。
でも日本人が「インド人」と聞いて、頭に思い浮かべるのはシーク教徒の人たちだろう。
右のインド人がシーク教徒(画像提供:近所のカレー屋)
頭にターバンを巻いているインド人がシーク教徒になる。
日本では、プロレスラーのタイガージェットシンや演歌歌手のチャダなんかが有名。
日本人のインド人のイメージは、このチャダの影響が大きいと思う。
シーク教徒の演歌歌手というのも、考えてみたらすごい。
でもインドの人口からすると、シーク教徒の数は少ない。
インド全体の1~2%にすぎない。
そんなシーク教徒が信じているシーク教(シク教)というのは、こんな宗教になる。
16世紀初頭にナーナクが創設した新宗教。
ヒンドゥー教のバクティ信仰とイスラーム教を融合し、偶像崇拝や苦行、カースト制を否定した。パンジャーブ地方に勢力を保持し、19世紀にシク王国を建てたが、2度にわたるシク戦争でイギリスに征服された。名称はナーナク師(グル)の前に忠実な弟子(シク)に由来する。「世界史用語集 山川出版」
ということで「シーク(シク)」とは、「グル(師)」にしたがう「弟子(シク)」という意味になる。
この「グル」という言葉は、日本だと「オウム真理教」で悪いイメージがついてしまったと思う。
でも本来は、ここにあるようにとても良い意味の言葉だ。
「大切なことを教えてくれる先生」とか「正しい道に導いてくれる指導者」のような人をグルとよぶ。
さらに「グル」は英語にもなっている。
グアム出身のアメリカ人を日本のお寺に案内したときに、彼女が「役小角(えんのおづぬ)」とその弟子たちの像を見つけた。
ボクが役小角の話をすると、彼女はこう言っていた。
「なるほど!つまり、彼(役小角)は『グル』ってこととね」
アメリカ人の口から、「グル」というヒンドゥー語が自然に出てきて驚いた。
そんなシーク教徒の友人に、ボクがずっともっていた疑問を解いてもらった。
「シーク教徒ってターバンを巻くよね?バイクに乗るときは、ヘルメットはどうするの?ターバンしたままだと、ヘルメットはかぶれないでしょ。でも法律だと、ヘルメットをかぶらないとダメだよね?」
シーク教徒いわく、
「ノープロブレムだ。シーク教徒はヘルメットをかぶる必要がない。ターバンがヘルメットの役割もしているんだよ」
へえ、さすがインド。
宗教の教えが法律より優先されている。
シーク教徒は、身体の毛を切ったりそったりしてはいけない。
だから友だちのシーク教徒も、生まれてから一度も髪を切ったことがないという。
今は髪の毛が腰のあたりまであるらしい。
それだと生活で不便だから、ターバンを巻いているという。
ちなみにシーク教徒は基本的にひげもそらない。
このへんは宗教心が強いかどうかで変わってくるらしい。
一緒に富士山に行ったときは、彼はターバンを頭に巻かずに帽子をかぶっていた。
これは良い選択だ。
前にターバンを巻いた彼とイオンモールを歩いていたら、買い物客の視線がイタイイタイ。
子どもは驚いて彼を指をさす。
母親は「ダメ!」としかっていた。
一緒に富士山へ行ったシーク教徒のインド人
さっきも書いたけどこの時いっしょにいたインド人は、シーク教徒の彼とあと2人はヒンドゥー教徒のインド人になる。
シーク教は、「偶像崇拝や苦行、カースト制を否定した」という宗教だから、ヒンドゥー教の教えを真っ向から否定している。
とくに「偶像崇拝」と「カースト制」は、ヒンドゥー教ではとても大事な考え方になる。
だけど、シーク教はそれを「間違っている」とみなしている。
とはいえ、3人がいるところを見ていてもまったく宗教の違いを感じさせない。
コンビニの「カレーキーマまん」を食べて、ヒンドゥー教のインド人が「これは最高じゃないか」と言えば、シーク教徒のインド人が「まったくだ」とその味に感動している。
この様子にヒンドゥー教徒もヒンドゥー教徒もない。
でも話を聞くと、やっぱりシーク教とヒンドゥー教は考え方も行動もまったく違っている
このギャップが、日本人のボクには不思議に見えた。
インドでは、人だけではなくて気候も場所によっても大きな違いがある。
そのことを次回に書いていきます。
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