最近、かなり久しぶりに街中で宮型霊柩車を見かけた。
まえにこれが走っているのを見たアメリカ人から、「おい!すごい車じゃないか。どんなVIPが乗っているんだ?」ときかれたことがある。
乗っているのはホトケだから、これ以上ない重要人物と言っても間違いではない。
こんなキラキラした和風の車を、外国人に無視しろというのは無理。
外国人には非常に物珍しく見え、金細工や装飾が日本らしさの象徴と映るため、中古車の購入・輸出を試みる者もいる。
この車については、日本について外国人に紹介するサイト「LIVE JAPAN」の記事で、興味深い日本の10の迷信のひとつとして「霊柩車が通るのを見たら親指を隠せ」というなつかしい話が載っていた。
Thus, by hiding your thumbs in your palm when you see a hearse, a very prominent symbol of death, you protect your parents from an untimely passing.
Snakes, Combs, and Spiders: 10 Eerie Japanese Superstitions for the Curious
外国人的には、こういう日本人の考え方が面白いらしい。
一方、明治時代の教育者で東洋大学をつくったことで有名な井上 円了(いのうえ えんりょう)は、訪問したフランスで日本とはまったく違う風習を目撃した。
パリにて往来の人、街上にて棺車を見るときは、みな帽を脱して敬礼をなす。よき風習というべし。
「欧米各国 政教日記 (井上 円了)」
井上 円了(1858年 – 1919年)
このまえ久しぶりに霊柩車を見た!
とSNSに投稿したら、あるフィリピン人からコメントがきたから、原文そのままで紹介しよう。
「その宮型霊きゅう車を東京でみなくなりました。この前テレビDocumentaryで放送されて日本でだんだん人気なくなってミャンマーかどこかの国を日本の宮型霊きゅう車が人気あるから。。だからそこを使おう事なてるみたいよ.I mean they bought it all from Japan」
宮型霊柩車はその派手過ぎる外見から、遺族や街で見かける人からの不評が増えてきて、最近は使用頻度がめっきり減ってしまった。
その変化は、フィリピン人でさえ感じるほど明らかに。
きょうAFPのこの記事を見て、フィリピン人のコメントがすぐに頭に浮かんだ。(2021/02/22)
ミャンマー首都で女子学生の葬儀 デモで銃撃され死亡
ミャンマーで軍事クーデターが発生し、その抗議デモに参加していた女子学生が治安部隊に銃撃され死亡した。
この記事の写真を見ると、その女子学生の遺体が日本の霊柩車で運ばれていていてビックリ。
ミャンマーの都市を宮型霊柩車が走ると、これほど場違いというか違和感をもつとは思わなかった。
毎日新聞の記事のように日本と反比例して、最近では海外で霊柩車の人気が高まっているらしい。(2019/8/3
豪華な霊きゅう車、海外で人気 日本では減少中
モンゴルでは社会主義時代にお寺が破壊されて仏教が迫害を受けていたため、「走る寺」とモンゴルで呼ばれる豪華な霊柩車は、モンゴルで仏教のイメージアップに貢献しているという。
日本の会社としても売り上げが伸びると同時に、日本の文化が海外に広がっていくのはよろこばしい。
宮型霊柩車をめぐって、日本と海外でこれ以上ないほどのウィンウィン関係が成立していた。
ミャンマーのヤンゴンにあるシュエダゴンパゴダ
東南アジアの仏教では、お寺や仏像がキンキらでド派手な色彩のものが多いから、日本の霊柩車はアジア人の仏教感覚には合っているかもしれない。
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