日本にはパンプキン・バーガーや透明なコーラとか、訳の分からない変な食べ物があるけれど、「最近のモノではこれが最高におかしい」とアメリカ人が紹介しているのはマヨネーズ・ピザだった。
「変な」という意味の英語にはstrange、weird、oddなどがあって、この中のweirdには「気持ち悪い」といったニュアンスが込められている。
でも個人的には、「おまえの味覚はおかしい」と世界で一番言われたくないのがアメリカ人。
日本人に最もそれを言えないのもアメリカ人だ。
2016年のAFPの記事で、「米国の料理としてはスライスした食パン以来、最も記憶に残る発明と評される」と絶賛されている食べ物はなんとビッグマックだった。
スライスした食パンとビッグマックが『二大料理』というのだから、そんな国の人間が、わが至高のマヨピザを「weirdeat」とか、笑わせてくれるぜ。
さて、フランス語の「マヨネーズ」が日本に登場したのは大正時代のことで、それにはこんな背景があった。
1910年代にアメリカとイギリスに滞在していた中島董一郎(とういちろう:キューピーの創業者)は、その地でオレンジママレードとマヨネーズと出会った。
彼の帰国後、1923(大正12)年に関東大震災が発生して日本はその復興が急務となる。
そんな日本社会の中で、女性の服装が洋風化するなど生活様式が変わっていくのを感じた中島は「食」でも大きな変化があると感じとり、「あれだ!」とマヨネーズ作りを開始。
そして1925年(大正14年)3月9日、当時日本で人気だったキャラクターの「キユーピー」を採用して「キユーピーマヨネーズ」が販売された。
これが3月で、日本産のマヨネーズはこれが第1号だったから「1」をとって、毎年3月1日を『マヨネーズの日』としている。
でも当時の日本人には野菜を生で食べる習慣はなく、マヨネーズの販路拡大には苦労したらしい。
でも、このときから約100年後のいま、日本では何にでもこれをかけて食べる「マヨラー」が出るほど身近な必需品となった。
「キューピー」はキューピッドをモチーフにアメリカ人がつくったキャラクター
個人的にはマヨネーズが好きでも嫌いでもないし、「マヨラー」がいるのはまったくもってどーでもいい。
ただ白米にマヨネーズをかけるのは超絶NGで、それをされたらゲテモノ認定して箸はつけない。
外国人のマヨネーズ・ピザを見る目も、それと同じような感覚かもしれない。
だから日本のマヨピザを知った外国人からは、「それ美味しそう!」という支持はごく少数で、「きもっ」「日本人は外国料理のセンスが悪い」といったネガティブなコメントが多かった。
コメントを見ていたら、タイにもマヨピザがあるらしい。
だがしかし、中にはこんな意見もある。
「I first had pizza with mayo in 2012 and I LOVE it.」
2012年に(たぶん日本で)マヨピザを食べてみたら美味しかった。それではいまは大ファンになったという。
だからアンチコメントの奴らは知らないだけ。いわゆる「食わず嫌い」で、食べてみたら意外とイケる組み合わせなのだ。
という可能性よりも、日本と海外のマヨネーズはそもそも根本的に違うことがこのギャップの原因だろう。
前回の記事で、ドイツでうまれたバウムクーヘンが日本に来ると、「独自に目覚ましい発展を遂げていますね!」とドイツ大使館が感心したように、日本人は海外のものを何でも自分たちの価値観や好みに合わせて大きく変えてしまう。魔改造の民なのだ。
もともと日本人には敬遠されていたマヨネーズが愛されるよう、メーカー側は消費者の味覚を徹底的に把握して、日本独自のマヨネーズを作り上げた。
世界的には全卵タイプのマヨネーズが主流だけど、日本でそれはマレで、キユーピー製品などは卵黄タイプ。
それに日本人の舌に合うようにクセのない植物油や米酢を主原料にしているから、欧米のものとは風味が違う。
結果、海外で生産されたマヨネーズのほとんどは、日本の基準ではマヨネーズに該当しないから、原産国では「マヨネーズ」で通っているものでも日本でその表記はできず、「半固体状ドレッシング」や「マヨネーズ風ドレッシング」となる。
日本と海外のマヨネーズは別ものと考えていい。
外国人の想像するマヨネーズ・ピザと日本に実在するマヨピザも別ものだ。
だから実際に食べると、予想外の好印象をもつ外国人はわりといる。
欧米の人々には、日本でマヨネーズを使用したピザが売られていることや、なんにでもマヨネーズを使用するマヨラーの存在は奇異に映るが、日本製のものを使用すると、理解を示すという。
日本のものは特別だと知っている外国人は、「これをつけると何でも美味しくなる」というコメントをする。
だから日本のマヨネーズ・ピザは見た目は「Weiredest」でも、実際のところは「Different」で、食べてみると意外と「Delicious」なのだ。
海外のマヨネーズ
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> 海外で生産されたマヨネーズのほとんどは、日本の基準ではマヨネーズに該当しないから、原産国では「マヨネーズ」で通っているものでも日本でその表記はできず、「半固体状ドレッシング」や「マヨネーズ風ドレッシング」となる。
> 日本と海外のマヨネーズは別ものと考えていい。
あーこれこれ、これですよ。若い頃に米国で暮らして面喰ったことの一つ。
日本のマヨネーズ(特にキューピー製)に最も近い食品は、米国においては「サワー・クリーム」と言うものでした。ジャガイモの丸焼き(?)に、当時の米国でも普通は日本と同様にバターを添えていたのですが、サワー・クリームが乗っているのを食べて「これマヨネーズじゃね?」と思ったものでした。
スーパーの食品売り場でマヨネーズ(英語で「メイヨ」)を一生懸命探していたら、地元のおばちゃんが「これ絶対お勧めよ!」と教えてくれたのが、瓶詰にした野菜のピクルスに卵が混ぜてあるようなシロモノで、とてもマヨネーズには見えなかったです。味はまあまあでしたけど。