日本の喫煙と禁煙・人類初の反タバコ運動はナチス=ドイツ

 

スペイン語(ポルトガル語)から日本語になったことばというと、パンやカッパ、カルタやパルケエスパーニャなどいろいろある。
日本に住んでいる知人のスペイン人に言わせると、とても不本意というか不名誉なことばは「タバコ」だった。
そのスペイン人はタバコを吸わないし、他人にタバコの煙を吸わせる無神経な人間も本当にムカつくと言う。

タバコの起源は南米にあり、マヤ文明の遺跡からはタバコをふかす神様のレリーフが発見された。
大航海時代になるとヨーロッパ人がやって来てタバコを母国へ持ち帰り、そのあと世界中へ広がっていった。

ちなみにヨーロッパ人はアメリカ大陸から、ココア(チョコレート)・パイナップル・カボチャなども新しいモノを持ってきて、ヨーロッパから新大陸へはキリスト教や銃などが伝わった。
これを「コロンブス交換」という。

【コロンブス交換】ヨーロッパ人が日本やアメリカ大陸へ伝えたもの

日本にタバコをもたらしたのはポルトガル人かスペイン人でしょ。

 

長く人類に親しまれてきたタバコも、いまでは世界保健機関(WHO)元事務局長が「最大の殺人者である」と言うほど、逆風が吹きまくっていて各国でタバコ規制が強まっている。
きのう5月31日が世界禁煙デー(World No-Tabacco Day)だったのはその象徴だ。

自分はもともと嫌いだし、いまでは“人類の敵”のようになっているタバコが日本語になっているというのは、スペイン人としては残念らしい。

そんなスペイン人や現代の日本人には何の話かわからんと思うけど、江戸時代の初期にはこんな記録があるように、タバコを薬とする見方もあったのだ。

「たばこと云もの、南蛮船に来朝して、日本の上下専レ之、諸病為レ此平愈と云々」

ただ、火事の原因なるからといった理由で禁煙令が何度も出ている。
「何度も」というのは、やっぱり止められない人がいたからで、しかもその後タバコはだんだんと庶民の間にも広がっちゃったから、一般的に認められるようになった。
タバコを禁止にするのではなく、税をかけて儲ける藩もあったから、現代の大麻を合法化している国や州と事情は似ている。

 

そしてこれも何かの冗談のようなんだが、全国的な禁煙活動を人類ではじめて行ったのはナチス=ドイツと言われる。
ヒトラーは友人にタバコの害毒さを説明し、吸わないようすすめるほどタバコを嫌っていた。
それにドイツ人の医師が、これも人類ではじめて喫煙と肺がんとの関連性を確認したことなどがあって、国民の健康と命を守ろうとナチスは本格的な反タバコ運動を展開した。
ナチスは「健康な国民」や「国民の健康」といった雑誌で、喫煙が与える悪影響について国民に積極的に伝えようと努力する。

でもナチスはナチス。
やっぱり禁煙も人種差別思想と結びついていた。

ナチの反タバコ活動家は、しばしばタバコを「アフリカ人変質者の悪習」と表現しようとした。
ナチスはユダヤ人にタバコとその悪影響を持ち込んだ責任があると主張した。ドイツのセブンスデー・アドベンチスト教会は、喫煙はユダヤ人によって広められた不健康な悪習だと発表した。

ナチス・ドイツの反タバコ運動

 

火事の原因になるからタバコはダメ、という発想は本当に日本らしいし、喫煙は”支配民族”である“優秀な”ドイツ人を堕落させるという見方は本当にナチスらしい。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。