【コロンブス交換】ヨーロッパ人が日本やアメリカ大陸へ伝えたもの

 

日本にはじめてヨーロッパ人がやって来たのは16世紀の戦国時代。

新世界のヨーロッパから日本へ伝わった重要なものが鉄砲で、この新兵器の登場によって戦国時代をかなり早く終わらせることができた。
宣教師がキリスト教と神や悪魔などの概念を日本にもたらしたのもこのときで、ほかにも西洋世界からは、カボチャ・スイカ・トウモロコシ・ジャガイモ・パン・カステラ・タバコ・地球儀・めがねなど、現代の日本人にもおなじみのモノが伝来した。

当然良いものばかりではなくて、性病・奴隷制度・植民地化といったモノもヨーロッパ人は日本へ持ち込む。
織田信長が生まれてはじめて黒人を見て気に入り、宣教師からゆずり受けて家来にして、日本の歴史上はじめての黒人サムライが誕生したのもこのころだ。

織田信長の家来となった黒人奴隷(弥助)と本能寺の変

 

南蛮船から積み荷をおろす様子

 

この200年ほどあと、イギリス人のキャプテンクックが南太平洋のニューカレドニアを「発見」したことについては、前回の記事に書いたとおり。

天国に近い島・ニューカレドニアは“新スコットランド”だった

日本のばあいは性病ぐらいで済んだけど、西洋と出会ったニューカレドニアの住民はかなり悲惨な目にあった。
ヨーロッパ人からもたらされた天然痘やインフルエンザなどの疫病によって、抵抗力のなかった多くの住民が命を奪われてしまう。
その報復としてヨーロッパ人を襲って殺害し、その肉を食べるという事件も起きた。

ちなみに日本では朝鮮半島との交流が活発になった6世紀に、天然痘が入ってきて流行したとみられる記録が残されている。
『日本書紀』には「瘡(かさ)発(い)でて死(みまか)る者――身焼かれ、打たれ、摧(砕)かるるが如し」(瘡ができてひどい苦痛と高熱をともなう)という記述があり、これが天然痘だったと考えられている。

 

でも、新しい世界と出会ったことで人類史上、最も不幸になった例は、大航海時代のヨーロッパ人に到達されてしまった南北アメリカ大陸の先住民だ。
当時のヨーロッパ人はアフリカやアジアを知っていたけど、アメリカ大陸はまったく未知の世界で、このとき相互にもたらしたものは、世界の歴史や人間の生活に革命的な変化をあたえる。

例えばはじめてトマトがアメリカ大陸から持ち込まれて、ヨーロッパの食文化を大きく変えた。トマトがなかったら、現在のイタリア料理がどうなっていたか想像できない。
ほかにもヨーロッパ人は新大陸から、ココア(チョコレート)・パイナップル・カボチャ・ピーナッツ・サツマイモ・バニラ・イチゴなどを母国へ持ち帰っているから、これだけでも社会に「革命的な変化」をもたらしたことがわかるってもんだ。

 

逆にヨーロッパからは日本と同じようにキリスト教が伝わって、いまの南米アメリカでは人びとの生活の重要な一部になっている。
ほかに馬がもたらされ、人の移動や荷物の運搬で使われるようになった。

こんな感じで大航海時代に新世界(南北アメリカ大陸)とヨーロッパとの間で、互いにそれまでなかった植物や動物、人やモノなどの移動がおこなわれたことをコロンブス交換という。

 

アステカ王国の人たちがトウモロコシを貯蔵する様子

 

ここまではいいのだけど、まったく異なる文明圏との接触が始まったことで、アメリカ大陸にはとんでもない悪魔も入ってくる。
コレラ・インフルエンザ・マラリア・麻疹・ペスト・天然痘・結核・腸チフス・黄熱といった感染症がヨーロッパからアメリカ大陸へもたらされた結果、免疫のなかった先住民はこれに「虐殺」されてしまう。

日本へ伝わった悪魔はキリスト教の概念だったけど、こっちは現実的でとても恐ろしいものだ。

これによって、3000万人弱だったメキシコの人口は17世紀初頭には160万人に激減し、人口が約1000分の1ほどになった地域もあったという。
これはもう、「絶滅」と表現していい。
実際、現在のハイチとドミニカでは1492年に800万人だった先住民が、1535年には全滅したという記録がある。
あるドイツ人宣教師は、「インディオはあまりにも簡単に死んでしまうので、スペイン人の姿を見、そのにおいを嗅いだだけで息絶えてしまうほどである」と書いている。
先住民にとってヨーロッパ人とは悪魔の化身だったかも。

 

戦国時代にヨーロッパ人が日本へ伝えたタバコ・トウモロコシ・ジャガイモは、大航海時代にアメリカ大陸から持ってきたものだから、コロンブス交換の結果でもある。
アメリカ大陸に比べれば、比較にならないほどおいしい部分を受け取った日本人はラッキーだった。

 

 

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2 件のコメント

  • >まったく異なる文明圏との接触が始まったことで、アメリカ大陸にはとんでもない悪魔も入ってくる。
    >コレラ・インフルエンザ・マラリア・麻疹・ペスト・天然痘・結核・腸チフス・黄熱といった感染症がヨーロッパからアメリカ大陸へもたらされた結果、免疫のなかった先住民はこれに「虐殺」されてしまう。

    南北アメリカ大陸の「発見」とともにヨーロッパ人が疫病を持ち込んだこと、それによって多くの原住民に犠牲者が出たことは事実ですが。ただし、その反対に、「梅毒」という恐ろしい病気を中南米から持ち帰ったこと、ある程度は自業自得ですね。
    それよりも、と言うか伝染病を持ち込んだことよりも、南北アメリカ料大陸へ進出したヨーロッパ人達は、「戦争・虐殺」という悪魔を持ち込みました。虐殺という人為的な方法により非常に多くの原住民たちを市に追いやったことは、疫病よりも先にまず前提条件として紹介すべきことだと思います。でないと、まるで「疫病による死は避けられなかったのだから、大量死も(ある程度は)やむを得なかった」と歴史に無知な若い人達は誤解してしまうかもしれない。
    それにしても、そのような行為を許していた当時のキリスト教とは、いったい、どのような宗教だったのでしょうかね?

  • 「コロンブス交換」によってヨーロッパ側もダメージをくらいましたね。
    「戦争・虐殺については、ヨーロッパ人来る前からアメリカ大陸にもあったと思いますよ。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。