タイ人とビルマ②歴史上最悪の事件アユタヤ王朝の滅亡・ミャンマーが嫌いな理由

 

タイは「微笑みの国」として知られている。

タイに行くと、のんびりと穏やかな空気が流れていて人々もニコニコしている。
そんなのタイ人の友人でも、ビルマがアユタヤを滅亡させたことを思うと怒りを感じると言う。

アユタヤ王朝は中国・日本・アラブ方面や西洋との貿易で栄えていて、文化も発達していた。

でもこのアユタヤ王朝はビルマ軍に攻め込まれ、1767年にこの世から消え去ったと、在日タイ大使館ホームページの「タイ王国の歴史」にある。

日本も朱印船貿易で鹿皮、鯨皮などを輸入していました。しかし侵攻してきたビルマによって14ヶ月間包囲された後、1767年4月7日の総攻撃で一夜にして破壊され、滅亡してしまいました。

 

タイの高校生の歴史教科書には、このことが「タイで最悪」の出来事であったと書いてある。

アユッタヤーがビルマに2度目の敗北を喫したことは、タイにとって重要かつ最悪の事件であった。王国の中心都市が破壊し尽くされただけではなく、各ムアンも大きな打撃を受けた。多数の人びとが死に、住んでいた場所を追われて捕虜になる者もあった。いくつもの町が廃墟と化した。

(タイの歴史 明石書店)

 

タイの歴史教科書は、全体的におさえた表現になっている。
韓国やベトナムの歴史教科書だと、「偉大なわが民族は~」といった力強く勇ましい表現が多い。

タイの歴史教科書はそうした感情的な書き方はなくて、歴史の出来事をたんだんと書いてあるから、この「最悪の」という言葉が際立っている。

現在のタイ人は、アユタヤ滅亡をタイの歴史上最悪の出来事だったと強く認識しているということなのだろう。

 

これをあえて日本にたとえれば、外国人が京都を武力占領し、あらゆる建物を徹底的に破壊して地上から消し去ったようなものだと思う。

タイ人にとっては、それぐらいの衝撃なのでは?

 

 

ビルマがアユタヤが滅亡はさせたことは、現在のタイ人のミャンマー人に対する見方に大きな影響を与えている。

タイではアユッタヤー時代といえばビルマに一方的に攻められた歴史であり、最終的にアユッタヤーを滅ぼしたの張本人がビルマであるとの認識が一般的である

タイのナショナル・ヒストリーではビルマがアユッタヤーを崩壊させた「宿敵」とみなされ、後の世のタイ人の対ビルマ観を悪化させることとなった

(物語 タイの歴史 柿崎一郎)

 

アメリカの原爆投下のように、「過去にそういう出来事があった」と現在と切り離し考えてはいない。

この出来事のせいで、今でもミャンマーを嫌うタイ人は多くいる。

 

そんなタイ人の考え方をあらわしているようなものを見たことがある。

下の写真は、バンコクの博物館にあったゲームだ。
襲いかかってくる敵を大砲で撃退するというもので、バイオハザードに近い。
でも、敵はビルマ軍の兵士で、それを大砲でやっつけていた。

 

P1160793

タイ人の子どももこのゲームをしていたけど、これは教育的にどうだろうか?
こんなことも、タイ人の「ミャンマー人観」の形成に影響を与えるはず。

 

「微笑みの国」と言われるタイに住んでいるタイ人でも、「怒るポイント」というものがある。

タイ人は、仏教と国王をとても尊敬して大切に考えている。

だから仏教や王室をバカにするような言動はタイではタブーになっていて、このタブーに触れたらタイ人は、怒りを爆発させる。

 

考えてみれば、ビルマ(ミャンマー)はタイ国王の宮殿やタイ仏教のお寺などを破壊し焼き尽くしている。

タイ人がもっとも大切にしている王室と仏教の2つを、同時に踏みにじったことになる。
タイの歴史のなかで、こんなことをした国はビルマだけだ。

だから250年たった今でも、タイ人がこのアユタヤ滅亡のことを思うと許せなくなるのだろう。

 

アユタヤにある仏様の頭

その目で何を見たのか?

 

タイがビルマという国をどれだけ恐れていたのかは、現在のバンコクの位置を見ればわかる。

今のバンコクは、チャオプラヤー川の東側に位置している。

最初、タークシン王は川の西側に首都をつくっていた。
けれど、今の王朝の初代国王になるラーマ1世が、首都をチャオプラヤー川の東に移動している。

そしてこれが現在の首都バンコクになった。

 

なんで川の東に移したか?

それは、ビルマから攻められたときの防衛を最優先に考えたからだという。
西側からビルマに攻め込まれた場合、大きな川が間にあった方が首都を守りやすい。

ビルマはとても強いから守備を重視して、首都を守りやすいところにおいたのだという。

 

日本とアメリカは、かつて太平洋戦争で戦った敵同士だった。
でも、オバマ大統領は今の日米関係をこう言っている。

「最悪の敵同士でさえ、最高の同盟国になれる」

タイとミャンマーがそうなるのは、今はまだ難しいようだ。
まあ、日本と韓国も似たようなもんだ。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。