【天下一の発想】台湾人も魅了する日本独自の技法・金継ぎ

 

オリンピック開催まであと50日ほどとなったいま、日本で話題になっているのが「中抜き」。
人件費などに投じた巨額の五輪予算が、末端になると極端に減ってしまう謎現象のことで「金抜き」とよんでもいい。

そして最近、台湾メディア「明周文化」が伝えた日本の伝統文化が「金継ぎ」だ。

サーチナの記事(2021-06-04)

日本が生んだ伝統美「金継ぎ」 台湾で新たな美を生み出す=台湾メディア

陶磁器が割れたり欠けたりしたら、漆でくっつけて金などで装飾して仕上げる修復技法を金継ぎという。

破損した部分を漆を使って修復した形跡は縄文土器でもみられるし、台湾人も日本人から学んだというから(あとで出てくる)、これは日本でうまれた固有の文化だろう。
この技法の芸術的な価値が見いだされるようになったのは、茶道が盛んになってわび・さびの精神が重視された室町時代以降だ。

本阿弥光悦作の赤楽茶碗(銘「雪峰」)のように、文化財に指定されたり、骨董として珍重されたりする金継ぎ陶磁器もある。

金継ぎ

 

これが金継ぎの技法を使った作品

 

 

 

この伝統文化を日本人から学び、制作活動に活かしている陶磁器工房「素謠」が台湾にある。
工房の創業者がこの技法を目の当たりにしたとき、「その割れた一瞬を”瞬間冷凍”したような雰囲気」に魅力を感じて、金継ぎによって、別の形で生まれ変わらせようという日本人の発想に興味をもったという。
それで香港にいる日本人陶芸家を師として、彼から金継ぎのテクニックを学んだ。(なぜ日本に来ないっ)
そこで彼は漆にかぶれてしまって数か月の間、手を自由に動かせなくなるといったツライ目にあいながらも、金継ぎを習得し、いまでは台湾でその技法を利用した作品作りに没頭している。

台湾メディアの記事で彼はこう話す。

「物事の不完全さをありのまま受け入れ、大切にすること。それは人生に対する向き合い方にも相通じるところがある。人生で受けたいろいろな傷を美しい装飾に変えられるかどうかは自分次第、ということを、日本の金継ぎは教えてくれる」

 

この記事に日本のネットの声は?

・金継ぎやってるけど、金粉使うほどの技術も金もないから真鍮粉でやってる。
面白いよ。
・ダメージジーンズみたいで面白い
・【特集】 日本が生んだ伝統美「金積み」
に見えた
・ただの発泡酒にそんな歴史があったんか。
・金継ぎセットもロフトやハンズの大型店で売ってるぞ

 

これも金継ぎを使った作品

 

さっき出てきた茶人で陶芸家の本阿弥光悦(ほんあみ こうせつ:1558年 – 1637年)がいたころの日本に、姜沆(きょうこう)という朝鮮人の儒学者がやって来た。

といっても姜沆は、豊臣秀吉の朝鮮出兵で日本へ連れて来られた捕虜だから、来たくて来たわけじゃない。
彼は日本でかなり自由に行動することができて、儒学者の藤原惺窩とも交流している。

そんな姜沆が日本で見聞きしたことを「看羊録」という書にまとめた。
それを見ると戦国時代の日本では朝鮮人から見るとどーでもいいことでも、優れた技術を持つ職人は「天下一」と呼ばれ尊敬されていたことが分かる。

木を縛り、壁を塗り、屋根をふくなどという、つまらない技にさえみな天下一があり、甚だしくは、着署(署名)、表相(表装?)、花押のようなものにまで天下一があって、一度〔その〕鑑定を受け、一度じっくり見たということになれば、金銀三、四〇錠をその価にあたります。

「看羊録―朝鮮儒者の日本抑留記  (東洋文庫)」

 

朝鮮人の価値観からしたら、割れた陶磁器をつなげるという発想はつまらなく、みすぼらしく見えたのでは?
当時の朝鮮や中国の貴族や金持ちなら「ツギハギ」ではなく、新しい物を購入するのが自然だ。
でも日本人はその発想や技法を「天下一」と尊重したから、金継ぎという世界的にも珍しい独特の文化がうまれたのだろう。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。