【インド人も納得】カツカレーは2つの意味で日本料理

 

きのうは9月30日は「クミンの日」。
「930」をクミンと読ませる語呂合わせで、ハウス食品がこの記念日を制定。
日本人にはあんまり馴染みがないけど、インド人にとってクミンはカレー作りに欠かせないスパイスだ。
いろいろなインド料理に使われることから、クミンを「日本料理にとってのしょう油ですね」と言うインド人もいた。

このスパイスについてくわしいことはここをクリック。

中世ヨーロッパでも料理や薬用として用いられたが、家禽類の逃亡を防ぐ、恋人の心変わりを防ぐためにライスシャワーにクミンを混ぜる、事前に匂いをかぐと妊娠しやすくなるなど、迷信やまじないと関わりがあった。

クミン

 

粉末状にしたクミン

画像:Giovanni Dall’Orto

 

クミンの日の前日、9月29日に行われたのが自民党総裁選で、総裁&次期首相に選ばれた岸田文雄氏には日本を良い方向へ導いてもらいたい。
ところで3年前に安倍前首相が勝利した総裁選のとき、こんな事件があったのをご存知だろうか。

日刊スポーツの記事(2018年9月21日)

カツカレー食い逃げ議員「4人」裏切り者探し始まる

投開票の直前に安倍氏を支持する陣営が出陣式を行い、賛同者の国会議員にはカツカレーが振る舞われた。
でも選挙が終わってみると、カレーを食べた議員の人数(333人)と首相に投票した議員の数(329人)が合わないことが発覚。
つまり4人の国会議員が安倍氏を支持する仲間としてカレーを食っておきながら、実は別の人物に票を入れたことになる。
いまとなってはネタでしかない。
でも当時は「裏切り者」または「カツカレー食い逃げ議員」の捜索が行われ、「カレーライス事件」として大きな波紋をよんだ。

朝日新聞もこれを記事にしている。(2018年9月21日)

投票前のカツカレー「4人が食い逃げ」 安倍陣営嘆く

だれがユダだったのかは知らんけど、カツカレーが縁起物として、すっかり日本社会に定着していることはよくわかる。

 

インドで生まれたカレーは、植民地支配していたイギリスでも作られるようになり、それが幕末のころ日本へ伝わった。
だからカレーはイギリス料理(洋食)の扱いをされていて、日本人の好みに合わせてだんだんと日本風に変化していって、いまではインドともイギリスとも違う日本独自のカレーが出来上がった。

日本人による「カレー改造計画」は急ピッチで進んだらしい。
昭和7年の新聞には、母国のカレーとのあまりの違いに嘆いたというインド人の感想が紹介されたと、「中村屋」のホームページにある。

「東京のカレー・ライス、うまいのないナ。油が悪くてウドン粉ばかりで、胸ムカムカする。~略~カラければカレーと思つてゐるらしいの大變間違ひ。~略~安いカレー・ライスはバタアを使はないでしョ、だからマヅくて食へない」

日本のカレー旨くないな

もうこのときから、クミンを入れるようなインドカレーとは別ものだったのだろう。

 

いままで何人ものインド人から、日本のカレーについて感想を聞いたことがある。
カレー粉とスパイスの違いは当然として、チキンカレーや野菜のカレーはあちらでもフツーにあるし、ビーフカレーも例外的に南部のケララ州にはある。
でも豚肉のカレーは見たことも聞いたこともないと言う。
牛を神聖視するヒンドゥー教徒は牛肉を食べることができないし、豚をケガレと考えるイスラム教徒は豚肉を食べられない。
そんなイスラム教の影響からか、ヒンドゥー教徒も豚肉は食べない。
イギリス植民地時代の1857年、インド人にそれぞれの宗教で禁止されている牛と豚の成分を口に含ませることへの反発から、戦争(インド大反乱)にまで発展したことがある。

そんな歴史的経緯から(しらんけど)、知人のインド人は豚肉を使ったカレーは日本で初めて見たと言う。
ただネットで調べてみると、インドのゴアにポークカレーがあった。
でもチキンやマトンのように、インドで一般的にあるカレーでは絶対にない。

インドにはない素材を使い、「勝つ」に引っ掛けた縁起物のカツカレーは、もう「日本料理デス!」と言い切っても問題はない。
「いやいや、それはわが国の料理だ」と反論するインド人がいるとは思えない。

 

銀座で600円台で腹を満たしてくれるのは大衆料理のカレーならでは。

 

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。