タリバンの怒りに世界が同意。アフガン前政権の“腐敗っぷり”

 

イスラム主義のタリバンが、あっ!という間に首都カブールを落として、アフガニスタンを支配することとなった。
知人のアメリカ人の話だと、「まさかあんなに早く、首都を制圧されるとは思っていなかった」という驚きがアメリカ社会に広がったらしい。
言い換えれば、前政権の軍や政府の人間がソッコーで抵抗をあきらめたということでもある。
その理由は「自分ファースト」でわが身を守るためのはず。

アフガンの新しい統治者となったタリバンが驚いたのは、この国の貧困だった。

中央日報の記事(2021.09.15)

パン屋の前でひざまずく女性たち…タリバンも当惑「食糧難がこれほどとは」

首都カブールではやせ衰えた女性2人がパン屋の前でひざまづいて、パンか金をくれるよう哀願していた。
もともと世界最貧国の一つで数十年ものあいだ内戦が続いた結果、食糧難はこれ以上なく深刻になり、現状でいけば今年の冬には数百万人の子どもが餓死するという報告もある。

この事態にアントニオ国連事務局長は、

「アフガン人は過去数十年間の戦争以降、最も危険な時間(perilous hour)を迎えた」
「彼らの3人に1人は食事をどこで取るべきかも分からない」

と述べる。
軍事力によって政権を奪ったタリバンを国際社会は正当な政府とは認めず、世界銀行と国際通貨基金(IMF)は資金支援を中断し、アメリカはアフガン中央銀行の資産を凍結した。
(現在はこの措置がどうなっているかは分からない。)

これはアフガン経済への死刑宣告と同じで、経済はすぐにストップして食糧危機を加速させた。
タリバンにダメージを与えようとすると、それ以上に女性や子ども、貧しい国民が苦しむことになる。
いまのアフガンでは仕事を失って路上生活者になる人が多いから、冒頭の2人もそうなのかもしれない。

前政権を追い出して政権をとったはいいが、ここまでムゴイ経済難と食糧難はタリバンにもまったくの予想外。
報道官はこう話す。

「アフガン前政府がこのように簡単に政権を放棄し、われわれに国を譲るとは思っていなかった」
「われわれも完全に準備されていない状態で危機を管理しようと努力中」
「米国を含むすべての国家の人道主義的努力を歓迎する」

これはもはや人類に対する危機だから、国際社会はアフガンに10億ドルの資金援助を行うと発表したが、「焼け石に水」感は否めない。

 

タリバンがアフガンの支配者となって判明したことは、目を覆うような国民の貧困以外にもある。
それは、そんな“底辺”とは銀河系レベルでかけ離れた、前政権の優雅でゴージャスな生活ぶりだ。

タリバンが公開したカブールにある前副大統領の豪邸は、マンガ家が腐敗した政治家を描くときにモデルにできそうなもの。

 

 

それにしても、タリバンがユーチューブで「おウチ紹介」をするとは。
これが21世紀か。

現在この家には、タリバンの司令官と指揮下の150人が住んでいるという。
ちなみに日本語と違って、英語の「マンション」はこういうドでかい家を意味する。

前政権の人間はイスラム教で禁止されているはずの酒を飲んでは仲間とビリヤードを楽しみ、屋内プールやサウナでリフレッシュしていたのだ。
バーにあるグラス1つで、何人の女性や子どもが物乞いにならずに済むのか。
アフガニスタンで汗水流して働いていたらこんな生活ができるワケがなく、政府や軍の人間は汚職や横領によって天文学的な富を築いたとしか思えない。
この家とは別だと思うけど、副大統領の自宅から約13億5000万円の現金と多くの金塊が見つかったという。
アニメキャラだったら、倒されるべきすべての要素が満載。

タリバンの言動には賛成できなくても、「ヤツラは悪魔だ」という言葉には同意するしかない。
本当に吸血鬼のような生き物だ。
「我々は人生のすべてを山や砂漠で過ごしていた」という言葉も事実で、真実はホントに重い。

動画に寄せられたコメントを見ると、タリバンの是非は置いといて、前政権の腐敗っぷりには世界中の人があきれて怒っている。

“People have nothing to eat and Dostum has a mansion like this.” True words spoken
「人々は食べるものがないのに、ドスタムはこんな豪邸を持っている」。真に迫る言葉だ。

This should be a lesson for all corrupt nations of the world. This is the result of corruption. General Dostum and his Afghan government kept all the money provided to Afghans through International AID and built these mansions they themselves can’t live in.
「これは汚職の結果で、世界中の腐敗した国の教訓となるべきものだ。ドスタム将軍やアフガニスタン政府は、国際支援を通じて国民に提供されたすべての金を自分たちが所持して、(いまでは)彼ら自身も住むことができないこれらの大邸宅を建設した。」

“People has nothing to eat but he has a mansion”
“Built this mansion with the bloods of Afghans”
Pretty much sums up our politicians in the states
「人々は食べるものがないのに、彼は豪邸を持っている。」
「アフガン人の血でこの豪邸を建てた。」
アメリカの政治家をよく表している。

 

この社会構造は多くのアフリカの国と同じだ。
タンザニア人の話では、アフリカには腹をすかせた国民は山ほどいるけど、貧しい政治家は1人もいない。
自宅を警備員に守らせ自分は高級スーツを着て、専属ドライバーに外車を運転させるような政治家ばかりいる。
国内の貧困と人道支援の必要性を世界中にアピールして、国際社会からもらった支援は自分のポケットに入れてしまう。
日本の「親ガチャ」なんて大したことないけど、「国ガチャ」は深刻な問題で残酷な運命だ。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。