2月10日、マレーシアの首都クアラルンプールの空港を飛び出った旅客機の中で、乗客があり得ないモノのシルエットを見た。
大きさは大したものじゃなくても、この一匹のせいで飛行機は緊急着陸したというからヘビーな話だ。
こんな映画の始まりにありそうな映像が、リアルで起きた東南アジアにはたくさんのヘビが生息している。
だから隣国タイの首都でも、自宅のトイレに潜んでいた2.5mのニシキヘビにかまれて出血した、なんて事件が起こる。
朝日新聞(2017年12月29日)
発展のとんだ副産物、ヘビ騒動に揺れるバンコク
この一週間後、同じトイレに別のヘビがいたというからヘビーな話だ。(くどい)
にしても、2.5mのヘビがいることに気づかないというのは、一体どんなトイレだったのか。
「ヘビの都」なんて言われることもあるバンコクには、スネーク・ショーやニシキヘビを首に巻いて写真を撮るサービスで有名なスネークファームがある。
ここではいろんな予防接種が安く受けられるから、それを済ませてインドや他の国へ向かう日本人も多かった。(コロナ前まではそうだったと思う。)
なかには予防接種とスネーク・ショーをセットで楽しんだという日本人もいた。
お得な「セット割」があるといいのに。
動画によくレッドクロスが出てくるのは、スネークファームはタイ赤十字社の協力によってつくられたから。
ネット情報によると、スネーク・ショーをしているのもタイ赤十字社の職員らしい。
19世紀後半、メコン川の辺りの土地の領有をめぐって、タイはフランスと戦闘を行って多くの負傷兵が出ていた。
でも、彼らを治療するところがない。
そこで日本でいえば明治天皇のような、タイに近代化をもたらした名君・ラーマ5世が資金を出して、1893年にタイ赤十字社の前身となる組織が創設される。
そして、現在のタイ赤十字社に大きな影響を与えたのが日本だ。
タイ赤十字社のホームページに、歴史的に重要な出来事(major milestone)と書かれている箇所がある。
ラーマ5世の息子で皇太子(後のラーマ6世)が留学先のイギリスから帰国する途中、日本に寄って、日本赤十字病院を訪れる。
そこで働く人たちや設備に深い感銘を受けた皇太子は、「タイにも同じような病院をつくれば、必ず国民や国家に大きな利益をもたらす!」と考えた。
His Majesty, then the Crown Prince, was deeply impressed by the work of the Japanese Red Cross Hospital. He believed that the creation of a similar hospital in Thailand would be tremendously beneficial to the people and the country.
こうして国王の私有地に、シャム赤十字社に属する病院の「チュラロンコーン王記念病院」が1914年に建設されて、ラーマ6世は1922年に赤十字協会を設立した。
バンコクが「ヘビの都」ということは既知でも、ラーマ6世が日本で「重要な出来事」というほどの感動を受けたことが、いまのタイ赤十字社につながっていることを知るタイ人はほとんどいない。
スネークファームで予防接種を受ける日本人も、実は遠いところで日本赤十字と関係があることは知らない。
いま日本人の健康や命を守ってくれていることも、さかのぼればラーマ6世の日本での体験が関係している。
このまま忘れ去れてしまうには、もったいない日タイ友好の物語では?
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