はじめの一言
「そしてみんなで大和笑いをするのだ。笑いは日本人の礼儀作法の一つである。道すがら出会う人々はみな気持ちよく、顔に笑いをたやさない。(明治時代 エドモンド・コー)」
「日本絶賛語録 小学館」
前に、エジプトのラクダ乗りとファルーカ乗りにぼたれたという話をした。
今回は、エジプト人にワイロを取れらた日本人の話。
でも、この日本人がしたのは、違法行為。
エジプトに来たらピラミッドには誰だって行きたいはず。
でも、あのピラミッドを目の前にすると、別の誘惑にかられる。
「ここを、登ってみてい!この頂上からの眺めを見てみたい!」
ピラミッドは、1983年まで頂上まで登ることができたらしい。
でも、ピラミッド保護と落ちて死ぬ人が続出してため禁止となった。
今は、エジプト政府が文化財保護に非常に熱心なこともあって、ピラミッドにほんの少しでも傷をつけようものなら、たちまち遺跡破壊罪になってしまう
(古代エジプト講義録 上 吉村作治)
という、エジプトの専門家の言葉は、前回紹介した。
でも、困ったことに、禁止されていると、行きたくなる人の心もある。
実際、ボクがエジプト旅をしていた1996年のことだけど、宿には「ピラミッドに登った」とか「今度登ります」という旅行者が、少なからずいた。
話を聞くと、朝日が昇る前にピラミッドに登って、「ご来光」を見るのだという。
「だって、ピラミッドの上でご来光を見て、手を合わせるなんて、エジプトしかできないじゃないですか」
確かに、それはエジプトしかできない。
さっきも書いたけど、ただでさえ、崩壊が進んでいるピラミッドで、旅行者に登られたら、さらに破壊が進んでしまう。
エジプトは、観光大国でピラミッドはなくてはならいない存在でもある。
だから、そのピラミッドを守るために、政府はピラミッド登頂を法で禁止していた。
にもかかわらず、宿のエジプト人スタッフはピラミッド登頂を勧める。
「明日の朝、ピラミッドに登らないか?タクシーを用意するぜ」
人を集めたら、タクシードライバーからお金をもらえるから、こずかい稼ぎにこういうことをしているのだろう。
ツアーと言っても、早朝に宿からピラミッド近くまでタクシーで行くだけのもの。
「そこから先は、見つからないように登れ」
と、その後は、何があっても自己責任。
ピラミッド周辺には、警備員がいてピラミッドに登ろうとする不届きな旅行者を取り締まっていた。
確か、見つかった場合の罰則として、国外追放もあったように思う。
でも、宿のスタッフは、「ムッシュムシケーラ(問題ない)」と平気で言う。
おまえの「問題ない」なんて、誰が信用するか。
でも、それを承知で、旅行者はピラミッド登頂を目指していた。
ボクが話を聞いた旅行者の場合、ピラミッドに近づいてすぐに、警備員に見つかったという。
そして、脅された。
「お前たちがしようとしていることは、重罪だ。国外追放になるぞ!」
でも、このとき彼は、まだ登っていない。
この時点では、何もしていないんだから、重罪も追放も何もない。
この警備員の態度に腹を立てた彼は、こう言った。
「じゃあ、やめます」
すると、警備員はこう言った。
「せっかくだから、登っていけよ」
要するに、警備員が欲しいのはワイロ、お金だ。
守りたいのはエジプトの宝でもプライドでもなく、自分の生活。
「バカバカしい!」
と、彼は思ったけど、ここまで来たらピラミッドに登りたい。
ワイロもちゃんと値引きして、お金を警備員に渡す。
そのとたん、警備員の態度が変わる。
「オレに、ついてこい」
と、先に歩き出す。
こいつについて行っていいのか?
と、迷っていると「朝日が昇るぞ、時間がない!」と警備員が言う。
そして、ピラミッドのすぐ下まで案内してこう言う。
「ここからが、一番登りやすい。でも、あそからは段差があるから、登るときは注意しろ。それと、登りより降りが危ない。登りより、降りるときによく人が落ちるんだ」
と、登りやすい道を教えてくれたばかりではなくて、安全まで配慮してくれた。
そして、「気をつけて登ってこい」と笑顔で彼を送り出す。
そのときを振り返って、彼はこう言う。
「でも、ピラミッドからのご来光は、良かったですよ。一生の思い出になりました。でも、崩壊が進んでいるのは、ピラミッドじゃないですよ。エジプト人のモラルです。あれじゃ、ピラミッドはどんどん崩れていきますよ」
「それを、おまえが言うな!」
と、心の中でつっこんだ。
彼の「ピラミッドに登りたい」という気持ちには共感できるし、話も面白かった。でも、正直、違和感を覚えた。
それって、結局、違法行為だよね?
ワイロを受け取った警備員も違法だけど。
彼に限らず、旅さで会う旅行者(バックパッカー)で、違法行為を武勇伝にして、得意げに話す人を何度か見たことがある。
旅先で何をするかは、本人が決めることだけど、一線を越えちゃいけないでしょ。
話を聞いて、マネして違法行為に走る旅行者がでそうで怖い。
それも、結局は、自己責任だけど。
ところで、エジプト人が彼と同じようなことを日本でやったら、彼はどう思うのだろう?
エジプト人が、京都御所に不法侵入したら、「そのチャレンジン精神はすごい!」と、ホメるのか?
外国人が興福寺の五重塔をよじ登ったら、「グッドジョブ!」と親指を立てるのか?
人間、若うちはいろんな誤りをするけど、ほどほどにしないと、そのうち、自分が大変な目に会ってしまう。
よかったら、こちらもどうぞ。
こんにちは!
非常に興味深くおもしろい記事でした!
ピラミッドに行った時に、昇っている人を何人か見かけました。
その人たちも賄賂を払って昇ったのかな。なんて思いながら読ませて頂きました。
結局は 違法 な事をやる旅人って多いんですね。
海外に出るとはめが外れちゃうんですかね?
むしろ海外だからこそ、日本よりも気を付けた方が良いと思いますが・・・
大変な中、コメントありがとう!!
今でも、登っている人っているんだ。というか、エジプトは放置なんだ。笑。
旅では、「ここまでやるけど、ここからはしない」っていう一線を引いた方がいいと思う。
ピラミッドに登ったら楽しいかなあ、とは思ったけど、いろいろな意味で危険だからやめた。
「もっと楽しみたい!」って欲にキリがないし。
どっかで、自分にブレーキをかけることが重要だな、って思う。