世界で日本だけの文化、それが元号。
まったく違う文化圏からきた人にとってそれは、それはどんなものなのか。
日本の大学に通っていたインドネシア人があるとき、日本人の先生から「今度、インドネシアから君の後輩がくるからお世話してあげてねー」とカジュアルに言われて、「いいっすよー」と気軽に答えたらわりと地獄だったらしい。
彼は12人の新入生を銀行へ連れていって、それぞれに口座をつくろうとした。
そしたらそこで、書類には元号を記入しないといけないことを知る。
「西暦ダメってマジかー!」と気を失いかけるも何とか精神を保って、これも日本で生活するために必要な知識だからと、12人のインドネシア人に元号という日本独自の制度を説明し、全員の生まれた年を聞いてスマホで元号に変換したという。
トータルで1時間以上かかって、本当にウンザリしたという。
お疲れセンパイ。
さてほんじつ3月22日は、650年に日本の元号が大化から白雉(はくち、びゃくち、しらきぎす)に改元された日だ。
聖徳太子とかいう有能なストッパーがいなくなってから、大豪族である蘇我氏を抑えられる人がいなくなり、蘇我氏はやりたい放題になってその力は天皇家を上回るほどになる。
それでこれはヤバいと蘇我氏を暗殺し、一族を滅亡させた乙巳の変(いっしのへん)が起きて大化の改新が始まり、645年に日本初となる元号「大化」がつくられた。
その5年後、1372年前のきょう元号が大化から白雉になる。
改元の理由は超シンプル。
この年の3月16日、地方で見つかった白雉(白いキジ)が朝廷に献上されたことから、「これはきっとめでたい!」ということで元号を変えちゃいましたとさ。
むかしはこんな感じに、変わった生き物が見つかったり通常とは違う出来事が起こると、それを何かいいことが起こるサイン、「吉兆」であるという理由で元号を改める「祥瑞(しょうずい)改元」が何度も行われた。
白いキジのほかにも白いカメが見つかって朝廷へ献上され、「めでたし!」となったことから、奈良時代には「宝亀(ほうき:770年~781年)」という元号がつくられた。
この白い亀はアルビノの亀だったと思われ。
最近、静岡の空に変わったカタチの雲が現れて、ある中国人はSNSに「祥龍騰雲」と書いた。
龍みたいなめでたい雲、という意味だと思う。
こんな感じに雲の様子がいつもと違うと、それを見て「縁起がいい/悪い」のサインと感じることは、現代の日本人でも外国人でもある。
きょねんの今ごろ静岡の上空に「アーチ雲」という珍しい雲が現れて、これがかなり不気味だったことからネットがざわついた。
・何が始まるんです…?
・あの中に巨神兵が住む塔があるんだよ
・ついに東海地震くるか
・静岡県全域がタイムスリップするのか?!
・ワルプルギスの夜じゃねーか…
アーチ雲は突風や雷雨の前兆になるから、アブナイといえばアブナイ。
(´・ω・)・ω・
) キャー
/ つ⊂ \ 怖いー
良い意味で変わった形の雲が現れると、日本人にはそれだけで改元の理由になる。
奈良時代、藤原京に慶雲(瑞兆の雲)が現れたことから、そのラッキーにちなんで元号がそのまま「慶雲(けいうん:704年~708年)」に変えられた。
この慶雲の時代に高松塚古墳がつくられたり、世界最古の宿「慶雲館」が創業した。
ちなみに慶雲館はいまでも営業中だと話すと、大抵の外国人はビビる。
767年にも、めでたい前兆の瑞雲(ずいうん)が見えたという理由で神護景雲(じんごけいうん)という四文字の元号に変えられた。
そしてこの3年後、白いカメが見つかって先ほどの「宝亀」に改元される。
変わった生き物が見つかった!
良い形の雲が見えた!
そんなコトでも昔の日本人には、元号を変える十分な理由になったのだ。
むしろ改元しないといけない。
12人の後輩の銀行口座を開いたインドネシア人は、数年でコロコロ改元されていたころの日本に来なくて本当によかった。
祥瑞(しょうずい)改元がいまでもあったら、白いカメが見つかったとか、瑞雲が現れたというのは不幸フラグでしかない。
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