現代日本のルッキズム問題 セーフとアウトの事例がこちら

 

美という漢字は「羊」と「大」に分けられる。
古代中国で羊は神への捧げもので、それには丸々と太った大きな羊が相応しいということで、この漢字ができたという。
その後、時代とともにこの言葉の意味は羊から離れていって、「美男美女」のように主に人に対して使われるようになっていく。
でも最近では、イケメンや美人に高い価値をおく「見た目至上主義」(ルッキズム:lookism)への批判があがっていて、ヒトを外見で判断することをタブー視する傾向が強くなってきた。

その”先進国”のアメリカでは2018年に、ミス・アメリカでの水着審査が廃止された。
日本でも「脱ルッキズム」や「美の多様性」の観点から、同志社女子大学が大学祭で恒例だった「ミスキャンパス」をやめた。
同じ2018年、空気を読み切れなかった東京芸大が、学園祭でミスコンを行なうと発表すると批判が殺到し、「企画してしまったことを浅はかであった」と主催者側が謝罪し中止に追い込まれる。

外見的な美を武器と考え、努力して磨き上げてきた人たちにとってはキリスト並みの受難の時代の到来だ。
ルッキズムへの批判はフェミニストを中心に行われるから、そうした人のせいで職を失ったと怒る女性もいる。

“現代的な価値観”でF1がレースクイーン廃止。女の敵は女?

 

こんな時代の流れをものともせず、近畿大学が大学案内のパンフレットに「美女図鑑」「美男図鑑」というページをつくって、映える現役学生の全身写真や顔のアップ写真を掲載して物議をかもす。

朝日新聞(2022年5月15日)

大学パンフに「美女・美男図鑑」 学内から批判、識者はどう考える?

「受験生に大学生活への憧れを抱いてもらうため」と説明する大学に対して、学生の見た目を強調するルッキズムは大学広報として適切ではないといった批判や、いやいや、これぐらいなら問題ないと賛否に分かれた。
ネットをチラリと見た感じでは、それぞれ半々といった感じだ。

・養殖マグロの
美雌・美雄図鑑なら良かったのに
・それで単位が貰えたり、授業料減免される訳ではないんなら
どうでも良いわな
・見たけど美男美女はどこにも載ってなかった
・別に良くね?
美男美女も才能だよ
・今時小学生でもアウトだと知ってるのに近大すげえな ある意味尊敬するわ

「毎年非常に人気の高い企画」と大学側は言っているから、ここ最近になって「美」に対する世間の見方や意識が変化したということになる。
「美女・美男図鑑」を削除したという情報は聞かないから、これは何とか生き残っているらしい。
でも今回、全国紙で取り上げられて騒ぎになったから、来年あたりは厳しいかも。

 

外見に対する見方や評価がドンドン厳しくなるいまの日本で、政治家がルッキズムまる出しの発言をするのはあり得ない。
日本維新の会の議員が最近、夏の参院選に出る同党の女性新人について、

「5人出るのが全部女性でしょ。顔で選んでくれれば1番取るのは決まってるんですけどね」

と発言して後で撤回したものの、いまネットで袋叩きにされている。

ということでルッキズムについて、いまの日本の状況を見ると、美女・美男図鑑なら何とかセーフで、学園祭のミスコンは消えつつあり、「顔なら1番」発言は完全即アウト。
もう一周回って「美」は羊の品評会で使うか、こんなふうにAIに判定してもらってもいい。

「ITmedia」の記事(2018年06月06日)

東京大学がAIで女性の顔の“魅力”も数値化・・・男性は難しいとのこと

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。