インド人が絶賛する日本社会 ワイロはなくても“恥”はある

 

いまインドがすごい。
2020年の世界の国内生産トップ10をみてみると1位アメリカ、2位中国、3位日本で、インドは第5位につけている。
*日本のGDPは5兆2200億ドルで、インドは2兆9600億ドル。
インドはここ数十年で財政赤字がかなり縮小し、貧困レベルも1993年~2011年の間に大きく減少したし、経済は全体的に上昇していって気づけば世界5位。

首都デリーの近くにあるグルガーオンに住んでいたインド人はこんな話をする。

「15年前は何もなかった。あそこはただの農村だったのに、今では世界的企業のオフィスがいくつも建ってるよ。いまのインドの発展はオレでも驚くほどだ」

日本の新幹線の導入も決まったし、このところのインドは猛スピードで変化している。
でも、そうではない部分もアリ。

日本にいるインド人と高速道路を走っていると、彼はすごく走りやすい道に驚いたし、渋滞状況を知らせる電光掲示板に感心した。
インドのハイウェイにもBMWやベンツなどが走っている。
でも、道のコンディションが悪くて走りづらいし、ドライバーに必要な情報を知らせてくれない。
本当の先進国というのは高級車がたくさん走っている国ではなくて、一般のドライバーが安心して走ることができる道路をつくるような国、国民のことを第一に考えて、質の高い生活を送ることができる日本のような国だとインド人は言う。

日本が先進国である3つの理由。インド人の視点から。

 

世界5位の経済大国としてインドにはカネがあるはずなのに、なんでインフラが貧弱なのか?
このまえインド人の家へ遊びに行ったときにその理由をたずねると、「それは簡単だ。インドでは腐敗がヒドイからだよ」とのこと。
たとえば新しい道路をつくるとしたら、全体の予算のうち7~80%は政治家や企業が途中で奪ってしまって、建設費用はほんのわずかになってしまうから質の悪い道が出来上がる。
だからGDPは増えても、いまでも夏になると溶けるような劣悪なアスファルトの道があったり、停電はよく起こるし、雨が降ると膝の上まで冠水することがある。
*IT化では日本の先を行く部分もあるから、インド社会はすべてにおいて日本より後進的ということはない。

日本で生活している彼は役人からワイロを要求されたことはないし、そんな話を聞いたこともない。
インドと違って日本はとてもクリーンな社会で、一部の人間がカネをポケットに入れてしまうことがないから、国のお金は国民全体に行き届いている。
もちろん完ぺきではないだろうけど、インドに比べれば本当にキレイで平等な社会だ。

そんなインド人の話の確かさを、フォーブスジャパンの記事が裏付けている。(2017/03/16)

アジアの国家汚職度ランキング、トップにインド 日本は最下位 

世界の汚職を監視するNGO(トランスペアレンシー・インターナショナル)がアジア・太平洋の16か国・地域を対象に行った調査によると、贈収賄発生率が最も高かったのはインド。
インドでは公共サービス利用者の10人に7人に贈賄の経験があった一方、日本では0.2%と対象の国・地域の中で最も低い。
インドでは警察や裁判などで賄賂を要求されるケースが多く、汚職でアジアナンバーワンになってしまった。

でも、モディ政権は汚職撲滅を重点目標にしていて、ここ近年はかなり“浄化”されてきたと知人のインド人は言う。
そしていつかインドも、日本並みにクリーンな国になることは不可能だと分かっているから、少しでも日本に近づきたいと話す。

 

彼がそう絶賛する日本社会には、ワイロはまん延してなくてもナカヌキという恥がある。

読売新聞(2022/06/27)

個人情報入りUSB紛失、業者が無断で「再委託」繰り返す…市「報告なく契約違反」

尼崎市の全市民の個人情報の入ったUSBメモリーが紛失した事件をめぐって、隠されていた暗部が明らかになった。
市から仕事を請け負った会社Aが、市の許可を得ないで会社Bに業務を委託していたことが発覚。
これだけでもアウトなのに、Bがさらに会社Cへ再委託していたもバレた。
市からA→B→Cへと仕事が回される間に、予算の7割とはいかなくても中抜きによって、それなりの税金が消えたことは間違いないだろう。

ネット掲示板は怒りに満ちている。

・虚業栄えて国滅ぶ
・丸投げ禁止しろ 数人は元請け残せ
・こんなのは資本主義じゃない
・ねずみ講のような完璧な中抜きシステム
・何もせずに金だけ抜く企業は全て潰せ
・快適な環境下で、自分の手に負えない業務を委託するだけの簡単なお仕事です

 

今回はUSB紛失で、たまたま分かっただけのこと。
全国の自治体が委託先を調査したら、同じ「中抜き案件」がつぎつぎと出てくるはずで、これは日本全体の問題だ。
とはいえ一部業務を委託することで、仕事全体のクオリティーが高くなることもあるから、“ナカヌキ”のすべてを否定することはできない。でも、仕事を放り投げるだけで儲ける会社もあるはずで、これはほっとけない。
いま行われている参院選の選挙活動で、「ナカヌキを禁止します!規制します!」と主張する候補者は聞いたことない。
だから日本ではインドみたいに、役所や警察署、裁判所でワイロを要求されることはないとしても、この面での透明さはこれからも改善されず、国民の見えないところで税金が消えていく未来しか見えない。

 

 

「インド・カテゴリー」の目次 ②

「インド・カテゴリー」の目次 ③

インドってこんな国だ! 「インド・カテゴリー」の目次 ④

タージマハルを知りましょ① 目的とは・世界の評価・インドの歴史

外国人から見た不思議の国・日本 「目次」

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。