一年のちょうど半分になる6月30日は、神道の「大祓」(おおはらい)が行われる日。
知らず知らずのうちに罪や穢れ(けがれ)が体についてしまうと、それが不幸をもたらすから半年に一度、それをキレイさっぱり、消し去らないといけないという考えが神道にある。
それで6月と12月の終わりに、神聖な「茅の輪」をくぐることで罪や穢れを落とし、心身を浄化する儀式を大祓という。
これは701年の『大宝律令』に定められている宮中行事だから、1500年以上の歴史と伝統がある。
くわしいことは神社本庁ホームページで確認されたし。
常に清らかな気持ちで日々の生活にいそしむよう、自らの心身の穢れ、そのほか、災厄の原因となる諸々の罪・過ちを祓い清めることを目的としています。
これまで夏と冬の「茅の輪くぐり」(大祓)に、いろんな外国人を連れて行って様子を観察したんで、今回はインドネシア人のイスラム教徒(ムスリム)の反応を紹介しよう。
ボクの行った神社でしていた大祓の儀式は、まず宮司(神主?)が聖水をつけたサカキ(榊)を大きく振って、集まった人たちの頭にふりかけて、そのあとみんなで8の字に茅の輪を何回かくぐって終わりというもの。
サカキとは神と人との境を示す「境木(さかき)」の意味だとか。
イスラム教徒は文化的行為には参加可能だけど、宗教行為ならアウトのはず。
その判断はその彼らにまかせるしかない。
ということで彼らの様子を見てみると、みごとに人によって反応が分かれた。
Aさん:聖水を頭にかける儀式から「茅の輪くぐり」まで、日本人とまったく同じようにした。
Bさん:聖水はNGで、「茅の輪くぐり」だけをした。
Cさん:すべてダメで、すこし離れたところからスマホで写真を撮るだけ。
聖水までOKのムスリムがいるとは思わなかったから、Aさんには正直ビックリ。
NGなしとか、売り出し中の若手芸人みたいな。
そんなAさんにワケを聞くと、彼はこんな話をする。
「ボクは神道をまったく信じていませんし、神道の神もアッラーのつくった創造物と思っています。神道に対する信心はゼロですから、これはただの水をかけて、ロープをくぐるだけのことです。イスラム教には異なる宗教を尊重せよという教えがありますし、大祓は日本文化を経験するいい機会で問題はないですね」
彼はアッラーをこれ以上ないほど尊く、ほかとは比較不可能な至高の存在と信じている。
そんな強い信仰を持っているから、大祓の儀式もただの文化的な行為でしかない。
日本人が大切にしている文化なら自分も大事に考えるし、できるだけ日本人と同じようにしたいから、大祓にもフルで参加したという。
そんなAさんみたいなムスリムもいれば、Cさんのようにアッラーだけを信じているから、大祓のすべての行為をNGというムスリムもいる。
同じ神を信じる同じ宗教でも、いろいろな解釈がある。
ただ、ここでの登場人物全員が日本に住んでいるムスリムだから、かなり柔軟な考え方の持ち主で、海外にいるムスリムは「タイプC」がほとんどだと思う。
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