【世界で韓国だけ】日本との関係悪化で”国民感情”に手を焼く

 

韓国最大の全国紙・朝鮮日報に、安倍元首相が去ったあとの日韓関係を展望するコラムあった。(2022/07/24)

安倍氏なき日本、さらにやりにくい相手になるかもしれない

同じ人物でも国によって、その評価が変わることは世界ではフツウにある。
戦争で領土を広げた人がある国では英雄になっても、別の国では侵略者と非難される事例なんて挙げたらキリがない。

日本では安倍元首相に対して、戦後では吉田茂氏以来、2人目となる国葬が行われることが決まった。
またアメリカ議会は安倍氏について、

「一流の政治家であり、世界における民主主義の不断の擁護者だった」
「日本の政治、経済、社会に加え世界の繁栄と安全のために消し去ることができない功績を残した」

と、その功績たたえる決議案を、全会一致で採択したのは記憶に新しい。
でも、韓国で安倍元首相は、「極右政治家」として知られているという朝鮮日報は読者にこう呼びかけた。

安倍氏が執権していた間、日本との関係が疎遠になった国が世界中で韓国しかないなら、そうさせた時代と原因を今一度振り返ってみるべきだろう。

 

韓国の視点では、安倍氏について「強制徴用、慰安婦、歴史教科書、半導体先端材料の対韓輸出制限を思い出す人が多い」という。
でも同時に、そのイメージのほとんどは、ムン前政権の反日強硬の「竹槍外交」によって作られたことも否定できないと朝鮮日報は指摘。
”竹槍”は日本軍に対抗した19世紀末の朝鮮人を象徴するもので、現在では”抗日”を表す。
保守的な朝鮮日報は、国民の反日感情をあおるような言動を繰り返して、日韓関係を悪化させたムン前大統領を良く思っていない。
だから文氏について、「2017年12月に代案のないまま合意破棄を宣言して両国関係は泥沼にはまった」と批判的だ。
実際、安倍政権時代に、日本との関係が疎遠になった国は世界中で韓国しかない。
なら、その原因を振り返ってみようと言ったのは、国民の反日感情を取り上げて、抑制的になるよう主張しているとみて間違いない。

 

関係悪化の最大の原因になっている元徴用工問題について、日韓関係に精通した元韓国政府高官は「日本の主張が100%正しい」と明言する。
でも実際問題、国民感情があるから、日本が謝罪や資金提供などをしない形では「韓国国民は受け入れがたい」と。
*ソースは共同通信のこの記事(2022年07月20日)

韓国、日本側の軟化期待 元徴用工、「早期解決」明言

日韓関係が崩壊するとしたら、より大きなダメージを受けるのは韓国だ。
そのトリガーとなる日本企業の資産現金化は、早ければ来月にも行われるという。
この時限爆弾が爆発する前に、韓国側としては是が非でも、何とかしてこの問題を解決したい。
そのためには、「国民感情」というエベレストのような高く巨大な壁を越える必要があるから、いま韓国政府はそれでめっちゃ苦労しているところ。
「日本との関係が疎遠になった国が世界中で韓国しかない」という朝鮮日報のコラムも、そんな背景から出てきたはずだ。
「安倍氏なき日本、さらにやりにくい相手になるかもしれない」といっても、だったら、約束を破らなかったらイイわけだから、日本のネットでは「自業自得」、「因果応報」といった言葉がよく書き込まれる。
それはそうなんだが、ムン政権時代の負の遺産をそのまま丸投げされて、しかも時間のないユン政権は気の毒ではある。
かといって、日本も国際法や合意で譲ることはできないから、ユン大統領にはリーダーシップを発揮してもらうしかない。

 

日本はかつて韓国と台湾を統治した。
だから、現在の両者の日本への見方や関係を比較する人は日本でよくいる。
すると「最悪」の日韓関係と、「蜜月」の日台関係を見て首をかしげる。
安倍氏が凶弾に倒れた時、台湾の蔡総統は日本語でこんなメッセージを出した。

「安倍晋三元首相のご逝去の報に接し、言葉にならないほどのショックを受けています。台湾国民も深い悲しみの中にいます。」
「安倍先生は生前、台湾に実に多くのご支援とご配慮をくださいました。私たちはこのことを決して忘れません。先生は天国でもきっと、インド太平洋地域の民主主義を見守ってくださると信じています。」

 

 

日ごろからこんな態度や気持ちを表明しているところでは、いまさら「そうさせた時代と原因を今一度振り返ってみるべきだろう」なんて言う必要はない。
韓国も同じ過去を持つ台湾のようだったら、いまごろ「国民感情」に手を焼くことはなかった。

 

 

国 「目次」 ①

韓国 「目次」 ②

韓国 「目次」 ③

近くて遠い日本と韓国 「目次」 ①

近くて遠い日本と韓国 「目次」 ②

近くて遠い日本と韓国 「目次」 ③

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。