第二次世界大戦中、ナチス=ドイツはヨーロッパの各地にいたユダヤ人を動物のように“狩って”、絶滅収容所に送り込み、銃殺や毒ガス、強制労働などによって次々と殺害していった。
このユダヤ人大虐殺(ホロコースト)で約600万人が命を奪われたと言われている。
ホロコーストを含めユダヤ人への迫害や虐殺を認めたドイツは1951年に、一定額の補償を行うことでイスラエルと合意した。(ルクセンブルク協定)
さらに最近、ドイツはホロコースト・サバイバーへの追加の補償・賠償案を発表する。
あの地獄を生き抜いて、いまも存命中の約28万人の人たちに老後のケアとして約1890億円を支出し、これにはロシアのウクライナ侵攻から逃げてきた8500人のユダヤ人も含まれるという。
ドイツがナチスの犯した戦争犯罪を認めて、補償や賠償を続けてきたというのよく知られた事実。
そして韓国のメディアや政治家がそんなドイツと日本を比較し“お説教”をするのも、日本では広く知られて事実だ。
例えばこんなハンギョレ新聞の記事のように。(2022-09-17)
このようなドイツの態度は、韓国最高裁が日帝強占期の強制徴用被害者に対する賠償を命じる判決を下したにもかかわらず「1965年の韓日請求権協定ですでに解決済み」として知らぬふりをする日本の傍若無人な態度とは、大きく異なる。
日本はいつドイツを見習うのか
なるほど。
だが待ってほしい。
これは前提がまったく違うのだが?
ホロコーストは国際法に違反した蛮行で、朝鮮人の徴用は、日本人や台湾人に対して行ったのと同じ合法的な行為だ。
でも、朝鮮の人たちに負担を与えたことは事実で、日本政府もそれは認めている。
だから日本は韓国と話し合いを重ねて、1965年の請求権協定で徴用工問題は「完全かつ最終的に解決された」と両政府が確認した。
そして、「いかなる主張もすることができない」と約束した。
にもかかわらず、いまになって韓国最高裁が日本企業に賠償を命じる判決を出してから、日本は大反発し、両国関係は奈落へ落ちた。
国際法違反の状態を放置しないで、具体的な措置を取ってほしい。日本が韓国に求めたこの要求は国際常識に合っている。
徴用工問題は戦争犯罪ではないから、日本が法的責任をともなう賠償を認めことはできない。
だからといって何もしないのは無責任だから、日本は道義的責任は認めて、65年の協定に基づいて5億ドルというばく大な経済支援金を渡す。
すると韓国政府は、その中から徴用工だった人たちにお金を配るはずだったのに、それをほとんどしないで経済発展のために使ってしまった。
でも、この選択は間違いとは言えない。
結果的に、韓国は世界10位圏内の経済大国になったのだから。
2005年に韓国は元徴用工問題について「韓国政府に道義的責任がある」と確認し、日本に責任を求めることなく、韓国が元徴用工に支援を行う方針を決定した。
豊かになったいまこそ責任を果たすというこの決定は、360度どこから見ても正しい。
この問題を解決する責任があるのは韓国政府だということは、その時のメンバーで事情をよく文前大統領はよく知っていたはずだ。
でも、解決案の提示を求める日本に対して何もしなかったから、毎日新聞に不都合な真実をツッコまれた。(2019年8月24日)
文大統領が沈黙を続ける 2005年に下した徴用工問題巡る外交判断
もし両国でもめた場合は、「仲裁委員会の決定に服する」ということになっていたから、日本がその設置を要求しても当時の文大統領はこれを拒否。
ロイター通信(2019年7月19日)
韓国が仲裁委の設置拒否、日本の要請に応えず 徴用工問題で
最高裁は日本企業へ賠償を命じたけど、解決責任は韓国側にあるということを文大統領は誰よりもよく知っていた。
第三者がこの問題を判断したらどうなるか、韓国政府はよく分かっている。だから目をそらし、口を閉ざし続けた。
合意が破棄された状態を放置する韓国に対して、当時の河野外相は「第2次世界大戦後の世界秩序を覆すことに等しい」と厳しく非難する。
この状況は現在も変わっていない。
「完全かつ最終的に解決された」と韓国政府が確認したのだから、「すでに解決済み」という立場は日本と同じはずだ。
だから2005年に「韓国政府に道義的責任がある」と認めたわけで。
これまで50年以上、両国が守ってきた約束を一方的に破って賠償金を要求してきても、日本はそれに応じられない。
第2次世界大戦後の世界秩序を覆すことに等しいことに、日本は同意できない。
それに「仲裁委員会の決定に服する」という合意に「知らぬふり」をしたのは韓国だ。
韓国に対してホロコーストのような戦争犯罪をしていないのに、ナチスと同一視して、合意と国際法に基づいて行動してきた日本を、破った側が「傍若無人な態度とは、大きく異なる」と非難する。
もう滅茶苦茶だ。
イスラエルがルクセンブルク協定を破棄して再び金を要求しても、ドイツは絶対に突っぱねる。
ただ今回のドイツの動きからこんな主張をしているのは、韓国の全国紙では見たところハンギョレ新聞だけ。
この左派メディアは「反日強硬」路線が有名で、保守的な論調の朝鮮日報や中央日報、東亜日報も特に何も伝えていない。
主張が感情的で無理筋なうえ、こうした記事にはいつも日本人の反発がハンパない。
こういう報道が日韓関係に及ぼす悪影響を、韓国メディアも考えているのでは?
とはいえ韓国社会には、「日本はいつドイツを見習うのか」といった見方がまだまだあると思うけれど、それをあからさまに口にする雰囲気は少しずつ減っている気がする。
最近の日本のネット書き込みなどを見ると、「韓国はいつ台湾を見習うのか」と思う人が増えている。
徴用工には台湾人もいたのに、なんでまったく問題になっていないのか?
韓国と台湾には同じ過去があっても、まったく違うイマがある。
そのことに疑問を感じる日本人は多い。
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