インド人が見た日本⑤外国に比べて、英語が苦手な理由は?

 

「日本人は、英語が話せない人が多いですね」

友人のインド人がそう言ったことから、日本人が苦手な理由について書いてる。

前回書いたのは、「明治政府が、英語を日本の公用語にしなかったから」ってこと。
英語が日本の公用語になっていたら、今の日本人はシンガポール人なみに英語が話せていたかもよ?

 

友人のインド人と話をしていて、日本人が英語を苦手とする理由が他にもあった。そもそも、日本語には英語が少ないから。

今回は、そのことについて書いていきたいと思う。

 

明治の日本は英語の公用語化も、英語をそのまま日本語に取り入れることもしなかった。
そうではなくて、英語の言葉を次つぎと新しい日本語にしていった。

ちなみに、今の日本は英語をそのまま日本語に取り入れている。
ハンバーガー、ボール、レストランといった英語を、日本語にしないでそのままの発音と意味でカタカナにして使っている。

明治の日本は、こういうやり方をしなかった。
これも、今の日本人が英語を苦手とする理由につながると思う。

 

バンコク(タイ)の百貨店

 

明治時代、日本人は外来語を次つぎと日本語にしていく。

このとき日本語にした外来語は、本当にたっくさんある。
「漢字と日本人 高島俊男」という本を見ると、ざっとこんな感じ。

政府、政治、裁判、建築、交通、公務員、選挙、会社、銀行、不動産、機械、経理、道路、鉄道、自動車、自転車、運動、体育、体操、陸上、野球・・・。

 

これらはすべて、明治時代に英語を日本語に訳した言葉。
明治時代は、英語をカタカナにして日本語にしてしまうということが本当に少なかったと思う。

 

だから逆に言えば、これらの言葉を日本語にしないで英語のままで取り入れていたら、今の日本語のなかには英語がかなりたくさんあったはず。

その代わり、「今の日本のガバメント(政府)は、ポリティクス(政治)がダメだよなあ」なんて、ルー大柴さんのような日本語になってしまうけど。

 

でも英語をそのままの発音と意味で取り入れていたら、そのぶん日本人も英語の苦手感は少なくなっていたはず。

英単語を覚える手間がそれだけ減るということだから。
個人的に、英単語を覚えるのは拷問だった。

 

前にバングラデシュを旅行したことがある。
そのとき、バングラデシュには英語を話せる人が多くて驚いた。
ちなみにバングラデシュの言葉はベンガル語で、日本でその第一人者といえばタレントのローラさんだろう。

 

おっと、話がそれた。

「なんでバングラデシュ人は英語を話せるんですか?」

列車で会ったバングラデシュ人に聞くと、彼はこんなことを言う。

「バングラデシュは、昔イギリスの植民地だったからな。だから、ベンガル語のなかには英語がたくさんあるんだよ」

そういえばバングラデシュ人のガイドは、電話に出るときに「ハロー?」と言っていた。
「もしもし」に相当するベンガル語がないという。

ベンガル語のなかには、「ガバメント(政府)」や「バンク(銀行)」といった英単語がたくさんあるらしい。

 

バングラデシュの英語事情は、前に書いたインドとほぼ同じ。

下の文は外務省のホームページから。

実はインドやバングラデシュでは英語を話すことが教養ある人物の基本的な素養と見なされているので、政府関係者などはむしろ英語を使います。

大学でも、専門科目は英語で教えることが多いですから。特にインドでは中流以上の家庭などでは、子どもを英語で授業を行う学校に入れる傾向が強いですね。なので仕事の面では英語をちゃんと使えることの方が重要です。

ベンガル語の専門家 河野さん

バングラデシュ人のガイドさんから聞いた話では、「ベンガル語の中から英語をぬいてしまったら、会話に困ってしまうよ」という。

バングラデシュやインドでは、「英語を話すことが教養ある人物の基本的な素養と見なされている」となっている。

政治や経済なんかの話は、ベンガル語よりも英語のほうが話しやすいこともその理由の1つだと思う。

 

 

こうしたインドやバングラデシュの言葉事情と比べると、日本語には英語が本当に少ないらしい。

そのことに驚くアメリカ人やイギリス人もいる。

日本を訪れた英米人が驚くことの一つに、日本人の会話を何十分間聞いても、耳で聞いてわかる単語を一つも拾えない、ということがあります。

英語を母語とする彼らは、世界のどこへ行っても、現地の人が何を話題にしているかくらいはわかる。
アフリカでも南米でも、現地の会話のなかに「デモクラシー」とか「エコノミー」という単語が混じれば、民主主義とか経済のことを話しているのだな、と察せられる。

ところが、日本を含むアジアの漢字語圏では、ミンシュシュギとかケーザイとか、英語の原語と全くかけ離れた発音の語を使う。それは、英米人の耳にショックを与えるのだそうです。

日本では、幼稚園から大学院まで、すべて日本語で教育を受けられる。この事実も、外国人を驚かせます。アジア・アフリカには、高等教育は現地語でなく英語やフランス語で行なう、という国が、いまも珍しくありません。

(「NHK歴史に好奇心 日中二千年 漢字のつきあい」 加藤徹)

ということで、日本人が英語を話せない理由はなにか?

明治時代に、日本人が英語をどんどん日本語にしてしまったから。
これがその1つにあるはず。

 

*これはただの雑学

「簿記」という言葉も、「bookkeeping」という英語を日本語にしたもの。
これは耳で聞いた音を漢字であらわした「音訳」というもの。

「ブックキーピング」→「ブッキーピン」→「ボキ」で「簿記」という漢字をあてたと思う。
レモネードが「ラムネ」になったみたいな。

 

 

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ABOUTこの記事をかいた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。