世界一からの転落 海外で日本の電機メーカーが失敗したワケ

 

日本製品は海外で、高品質&高性能と認められている。
「Made in Japan」の文字は信頼の証(あかし)で、世界中の人たちがその電気製品を買い求める。
…そんなふうに考えていた時期が俺にもありました。
なのに、なんでこうなった?

プレジデントオンラインの記事(3/23)

値上げのためにムダな機能を増やし続けた…世界一だった日本の電機製品が凋落した根本原因

世界中で支持されて、圧倒的なシェアをもっていた日本の電機製品。
それがいまでは、「降る雪や 昭和は遠く なりにけり」という思い出になってしまった。
その原因について、記事で元TDK米国子会社副社長の桂幹さんが「日本企業はユーザーのニーズより、メーカーの都合を優先していた」と指摘する。

昭和の高度成長期のころ、日本製品には欧米製品に比べて、高い品質や性能のわりには値段が安いという強みがあった。
でも、円の価値が変化したり人件費などが上がったりして、日本企業が低価格を売りにするのはむずかしくなる。
1990年代の終わりから、日本では企業やマスメディアで「モノづくり」という言葉がよく使われるようになって、単なる「製造」ではなく、細部にまでこだわった製品づくりを重視していく。
それで「付加価値」というゴールにたどり着いたと記事にある。

技術大国ニッポンとしてのプライドを引きずりながらたどり着いた先は、高品質、高性能、それに高付加価値こそが日本の製造業の強みだ、とする結論だった。

 

安くてよいものをバンバン作る時代じゃない。
高品質に高性能、それに高付加価値のある製品なら高くても売れる!

そう考えた背景には、技術大国ニッポンとしての自負があったと思われる。
そんなことで日本企業は、立体映像が見られる3Dテレビといった製品を作ってみたものの、「今にして思えば、付加価値というより、少しでも売価を上げて利幅を稼ごうとするギミック(仕掛け)に過ぎなかった」と桂さんは振り返る。
消費者の「ほしい」よりも、メーカーの都合を優先してごちゃごちゃと付加価値を付けて値段を上げても、日本製品を愛する日本人が相手ならまだよかった。
でも、「海外市場ではまったくと言ってよいほど受け入れてもらえなかった」という状態に。

この場合の高い付加価値とは、実質的には多機能化のこと。
ユーザーにとっては「何コレいらない」という機能が付けられて、そのぶん値段が高くなったら、日本人でも外国製品に浮気するのはアタリマエ。
日本に高い技術力があったのは事実。
そのプライドや自信から日本企業が消費者を置き去りにして、多機能化へと迷走したから、気づけば海外企業に対する競争力を失って日本の電機製品は世界で没落した。

いろんな機能を付けすぎた結果、世界における「Made in Japan」の価値はだだ下がりになったと感じるネット民は多い。

・付加価値とかいう毒
・日本メーカーのノーパソの凋落を見たら、日本は終わったと思ったよ
・意味もなくスマホアプリを使わせようとするクソ製品が増えたよな
・マジでせこいことしか考えてなかったからやな
・新しいもの好きというのも一定数いるから売れないこともない

でも、機能すればまだいいのだよ。
「糖質を減らせます!」と宣伝している電気炊飯器を調べたら、実はお米の水分が増えて糖質の割合が減っただけで、糖質量そのものはほとんど変わらなかった。
そんなことが確認されたから、ちょっと前に、国民生活センターが景表法上の問題があり得ると発表してニュースになった。
*すべての電気炊飯器がこうなのかは知らない。

 

20年ほど前、海外旅行に出かけると、空港や街中で日本企業の看板をよく見かけた。
やっぱり高品質&高性能の日本の電機製品は人気がある。
「圧倒的ではないか、我が技術力は」と誇らしく感じたのがなつかしい。

 

タイにあった看板

 

それが何度も海外へ行っていると、日本企業の広告がだんだん少なくなっていって、韓国企業が目立つようになる。
そしていまから5年ぐらい前には海外の国際空港で、日本の電機メーカーの看板を見た記憶がない。

日本にいるタイ人やマレーシア人の話を聞くと、日本製品はいまでも高品質・高性能で信頼も高いが、韓国メーカーの物はやっぱり値段が安くて、コスパで選ぶなら「日本<韓国製」となる人が多い。
韓国メーカーはそうやって利益を上げて、それをもとに技術力を高めていき、高性能の製品を作ることができるようにもなったから、もはや「すみ分け」もむずかしい。
ここ最近は中国メーカーもうそうやって力をつけて、韓国の背中を追いかけている。
さらにいうと、最近では韓流ドラマやKーpopにハマる人が多いから、韓国に対するイメージも良くなって、販売促進の追い風になっているらしい。

知人の外国人の言う日本製品の“高性能”の中身も、韓国・中国製にはない機能があるということだったから、これは「値上げのためにムダな機能を増やし続けた」と重なる気がする。

高い品質・性能・付加価値のある製品なら高くても売れる!
そんな日本人のモノづくりに対する自信や信念のために、かえって客のニーズが見えにくなくなってしまい、多機能より値段重視の中国・韓国メーカーの追撃を受けて、日本は世界一の座から転落してしまった。
ここ20年ほどの間で、そんな構造変化がおきた。

これはたまにネットに貼られるコピペ。

1980年「日本製は世界一!」
1990年「同じ値段なら品質は日本製が世界一!」
2000年「小型化技術や安全性能なら日本製が世界一!」
2010年「外国製品に使われている部品は日本製が多い!」
2020年「日本には四季があり水道水が飲める!」
2030年「日本人の人件費は世界一安い!」

 

でも、こんな日本企業もある。
日経クロステックの記事(2020.01.06)

韓国メーカーをインドで「駆逐」したダイキン、LGの弱点も丸裸にする開発戦略の秘密

コストカットに成功したダイキン(もちろん日本企業)が、韓国メーカーに近い価格のエアコンを販売したところ、大人気となって韓国製品を市場から追い出したという。
もともと日本企業には高い技術力がある。
それで、外国企業と同じぐらいの値段で製品を提供することができたら、こうなるのは必然。
とはいえ、こんな例はきっとレア。
でも、不可能ではないことをダイキンが証明した。
海外の空港や街にある看板を日本企業で占める、あの光景をまた見てみたい。

 

 

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ABOUTこの記事をかいた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。