タイのソンクラーン:4月に正月が始まり、水をかける理由は?

 

むかしタイを旅行していた時、日本語ガイドが「タイにはお正月が1年に3回あるんです」とニヤニヤして言う。
「えっ!1年の始まりは1度だけでしょ。なんで3つもあるんですか?」と、こっちが驚く顔を期待しているようだったから、(なんかムカついて)「そうなんですか」とあえて冷めた返事をした。

話によるとタイには、日本や欧米と同じように1月1日の新年、中国系の住民が多いから2月はじめごろのチャイニーズニューイヤー、そして4月のソンクラーンと計3つの正月がある。

タイの伝統的な正月であるソンクラーンは毎年4月にあって、ことし2023年は4月13日~15日だった。
一年の始まりをおだやかに、落ち着いた気持ちでむかえるタイの人たちの様子がこちら。

 

 

日本で1年の始まりはカレンダーどおり1月1日だけど、占星術ではそうじゃない。
太陽の見かけ上の通り道を「黄道」といって、その通り道にある12の星座を「黄道十二宮」という。
*いうまでもないと思うが、『聖闘士星矢』で最強レベルの黄金聖闘士たちが守護する12の宮殿の元ネタがこれ。

ただ、ここでの星座とは夜に見えるものではなくて、そのゾーン(黄道上の領域)のこと。
『聖闘士星矢』の十二宮では入口が白羊宮で、最上部が双魚宮だったように黄道十二宮も白羊宮(=おひつじ座)から始まる。
人類が天体観測をしていた歴史はおそろしく長い。
星の動きから、未来に起こることをよみ取ろうとする占星術は古代メソポタミアで発達し、それを担当した神官によって黄道十二星座が設定されたという。

その考え方に基づいてタイでは、太陽が魚座からおひつじ座(=白羊宮)に入る日が新年になって、そこから1年が始まる。
(まー星矢たちが白羊宮へ突入したようなものだ。)
タイ語のソンクラーンは「移る」を意味するインドのサンスクリット語に由来する言葉で、この場合は、太陽が白羊宮(おひつじ座)に入ることを指す。

タイでは1年の中で3~5月がもっとも暑い。
これから本格的な暑さが始まる正月(ソンクラーン)になると、人びとは実家へ帰っておじいちゃん・おばあちゃんに、またはお寺へ行って仏像に水をそそぐ。
これには洗い清めるという意味のほかにも、酷暑の時期に水に触れて涼んでもらうことで、年配者や仏像に敬意を払うという意味がある。

 

伝統的なソンクラーンの祝い方

 

年配の人や仏像に、やさしく水をそそぐのが本来の姿だった。

それが、

サヌック(楽しい)
サバーイ(気持ちいい)
マイペンライ(大丈夫、気にしない)

のタイ人気質によって進化(堕落)していって、いまではソンクラーンというと、通行人やバイク、車などへ無差別に水をぶっかける「水かけ祭り」として世界的に有名だ。

水を掛けるところは手のみに限定されず、水をかける行為自体「敬意を払う」ため無礼講状態となる(ただし、僧侶には水をかけない)。水の掛け合いには水鉄砲を用いる。

ソンクラーン 

 

この行為はもともと相手を尊敬するという良い意味だったから、みんな遠慮も配慮もない。
知人のタイ人が言うには、最近は水鉄砲どころか、ガンキャノンみたいなすさまじい圧力の銃も登場して、目を守るためにゴーグルまで必要になったから、「水かけ祭り」という表現はぬるすぎる。「水戦争」がソンクラーンにはふさわしい。
イヌやネコに向かって水大砲をぶっ放して、新年早々、動物虐待をする人もいるらしい。
ちなみにこの戦いに参加したら、水道水が口から入って、お腹をぶっ壊した日本人旅行者と会ったことがある。かなり苦しんだが、それ以上に楽しかったらしい。

もう「カネもうけが正義」みたいになって、本来の姿から離れまくった結果、2012年にはタイの政治家が日本のセクシー女優のグループをソンクラーンに招待すると発表した。
でも、さすがにコレは限界突破しすぎで、批判が殺到して結局はダメになったと思う。

 

ソンクラーンを英語で「Water Fight」というように、これは水鉄砲による市街戦だ。

 

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。