日本のモノづくり:外国人は驚き称賛するも、死角あり

 

日本国民の99.9%以上が知らないだろうが、浜松市の北部には「浜北森林公園」というローカルな観光施設がある。
野鳥を見るとか季節ごとの植物を楽しむといった目的別に、ハイキングコースがいくつか用意されていて、無料で自然を満喫できるから、付近の住民の憩(いこ)いの場になっている。
外国人にも人気のスポットだから、きょねんバングラデシュ人、トルコ人、インド人、ナイジェリア人を連れて行った。
駐車場に車を停めて、森林公園にいる動植物を紹介する建物へ入ってブラブラしてると、「見てください。私はこういう物を見ると、日本人は本当にスゴイなって思うんですよ」と言ってバングラデシュ人女性がこれを指さす。

 

森林公園で見ることのできる鳥たち

 

「ガラスケースがなかったら、本物の鳥とカン違いするだろうね。この精巧なつくりの鳥は、日本人の観察眼の鋭さや手先の器用さをよく表している」

と一緒にしたトルコ人男性も感心すると、バングラデシュ人がこう話す。

「バングラデシュでもいろんな模型を見ることはできますが、ここまで実物に近い物を見られるのは一部の施設だけです。日本ではこのクオリティーが標準で、村や町にある歴史や文化を紹介する無料の施設でも、展示品の質が高くていつも感心します」

この森林公園みたいな地方の観光施設は日本各地にあって、そこにある模型もこれと同じレベルで、日本人ならきっと「こんな鳥がいるのかー」と思ってすぐ通り過ぎる。
でも、この時いたインド人もナイジェリア人もバングラデシュ人の驚きを共有した。
彼らの基準からすると日本にある平均的な造形物は、母国では有料の博物館でしか見られないような精緻さだから、日本の「モノづくり」の技術の高さにはよくビックリしたり、感心させられたりするという。
くり返すけど、日本では最低基準が高いから作品の平均レベルも高いということで、彼らの国にも高いクオリティーの物はある。
でも、そういうのを無料で見るのはむずかしいと思う。

彼らは母国にいた時、日本製の車や家電は高品質とのウワサを聞いていて、日本に来てからいろんな物を見ると、そもそもモノづくりのレベルが違うと実感した。
「その理由は、日本人が子どものころから箸を使って食事をするからだ。あの動作を一日に何度もするから、手先の器用さにあたえる影響はとても大きい」とナイジェリア人が推測すると、「それはある」と納得する一同。

でも、それはどうだろう?
箸を使う中国人から見ても日本人の「モノづくり」は印象的だ。
だから中国メディアの新浪財経が、その技術の高さのワケをさぐる記事を掲載した。

Record China(2016年9月15日)

なぜ日本人が“匠の精神”を代表するようになったのか―中国メディア

日本人はなぜ世界的にも、“匠(たくみ)の精神”の代表格になったのか?
まずこの年の中国では「匠の精神」という言葉に注目が集まって、「2016年春・夏の中国主流新聞の流行語」の総合部門でトップ10入りした。
日本では政府から民間レベル、そして各種メディアも「匠の精神」を称賛しているから、中国人視点だと「なぜ“匠の精神”と日本人はこれほどまでに関連性が高いのか」と疑問に感じるらしい。
その答えとして、この中国メディアは日本の企業風土を紹介する。
日本には終身雇用制が定着しているから、一生に一つのことを極めることができる環境が整っていた。(個人的にはこの見方はちょっと古い気がする)
一方で、中国人はある程度の知識や技術を身に付けると、すぐにステップアップの転職を考えるから、匠の精神は育たないという。

 

持って生まれた個人の才能ではなくて、日本には匠の精神や才能を引き出す環境があったから、高品質の物をつくり出すことができた。
ウン、これなら「箸を使って食べるから」説よりは説得力がある。
ただ、「我が日本の技術力は世界一ィィィ!」と満足している場合じゃない。
日本製品は確かに高性能だけど、ムダな機能が多すぎると不満を言う外国人はよくいるのだ。
トイレのボタンは3つもあればいいのに、日本では下手すれば30個もあって複雑すぎ。
でもトイレは無料だからいいとして、テレビやスマホなんかの電化製品では、「こんなの誰が使うか!」とツッコみたくなるようなナゾ機能がついていて、そのぶん値段が高くなっている。

日本人の「モノづくり」にかける思いは深いし、日本に住んでいると、その熱意が生み出す技術力の高さを実感する外国人は多い。
だから海外では、日本製品は高品質で信頼できると思われている。
フィギュアや模型を個人の趣味で作るなら、どんどん高みを目指していけばいい。
でも、企業が消費者を置き去りにして製品づくりに夢中になると、結局は日本のモノづくりを衰退させる原因になってしまう。
海外では韓国・中国製品にその死角をつかれた。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。