これは日本の近未来 LGBT先進国アメリカで起きていること

 

「見た目は子供、頭脳は大人」というコナン君の言葉を借りるなら、トランスジェンダーの人は「見た目は男(女)、心は女(男)」となる。
レズビアン、ゲイ、バイセクシュアルにトランスジェンダーを合わせた性的少数者を「LGBT」という。
そうした人たちへの理解を深めるための「LGBT理解増進法案」が2日前に衆議院で可決され、来週には成立する見込みだ。
その直前、この法案にあった「性自認」という言葉が与党案では「性同一性」へ変更された。
それに不満な東京新聞は社説でこう批判。(2023年5月17日)

医師など第三者の承認を前提にしようとしているのなら誤りだ。他者の承認を要するアイデンティティーはあり得ない。それを少数者に求めること自体が差別にほかならない。

LGBT修正案 人権感覚の欠如露わに

 

自分が男か女か、またはそのどちらでもないか、自分の性を自分で決めるのは当然で、第三者に”許可”を求める必要はない。
だから「性自認」という表現は動かすべきではなかったし、それをした与党は人権感覚が欠如していると。
では、そうした感覚では日本の先を行っているアメリカをみてみよう。

LGBT法案について、日本に住んでいるアメリカ人に意見を聞くと、

「すぐに成立させるべきだ。同性婚を認めていないのは、先進国G7の中では日本だけなんだぜ? この状況は変えないといけない」

ということはなく、

「日本の法律は日本人が決めればいい。オレには関係ない。日本には西洋社会とは別の価値観があるから、いろいろ違うところもあるだろ」

と彼は関心ない様子。
ただ日本人は保守的だから、価値観の見方を変えるのは大変だろうなと、予言するアメリカ人はひとつの例を出した。

それを知った時は驚いたけど、でも考えてみると日本人らしい反応だなと彼が納得したのが、黒人と日本人のハーフの大坂なおみ選手について「彼女は日本人か?」という声が日本人から上がったこと。
アメリカは世界中の人間が集まる多民族国家で、日本は国民の95%以上が日本人という同質性の高い国。
2015年に同じくハーフの宮本エリアナさんが、ミス・ユニバース日本代表に選ばれた時にもそんな疑問の声があったから、彼には日本人の「純血主義」がとても印象に残った。

大坂なおみ、全米オープンで優勝!からの”日本人とは何”?

そんな彼でも最近アメリカで行われたミス・コンテストで、有色人種(ベトナム系)というのはいいとして、トランスジェンダーの女性が優勝したと知った時は驚いた。

 

 

これは州の代表を決めるコンテストで、こうして全米の州から選ばれた人たちの中からミス・アメリカが決められる。
約100年のミス・アメリカの歴史の中で、トランスジェンダー女性が優勝したのはこれが初めてだ。

 

 

「このコンテストに優勝したら本戦出場のチケットと、100万円以上の賞金をもらうことができる。なのにこれじゃあ、何か月も努力してきた他の参加者がむくわれない」と彼は言う。
この結果には「ミス・アメリカの伝統は死んだ」と嘆く人や、「これが新しい美の基準だ」と称賛する人がいて、アメリカでも賛否は分かれているらしい。
大坂なおみ選手についての騒動にあきれた彼には、日本のミス・コンテストで同じことが起きたら、アメリカ以上の騒ぎが発生する未来が見える。
確かに何が起こるか分からないけど、間違いなくネットは大荒れになる。
これが新しい時代の価値観であり見方だ! と言われても、日本人が一般的に受け入れるとは思えない。

このアメリカ人の話だと、社会は賛成/反対の半々に分かれているように聞こえたけど、上の動画に寄せられたコメントを見ると批判一色だ。

・This is just insanity!
これは本当に狂っている!

・May God have mercy on this dark and dying world.
この暗く死にゆく世界に、神のご慈悲がありますように。

(以下、日本語訳のみ)
・悲劇的で悲しい。2位は誰? それが本当の勝者だ。このコンテストに参加したすべての女性がかわいそう。
・コンテストに参加した瞬間、”彼”の勝ちは決まった。
・これこそいまのアメリカの悪いところだよ。

 

後日、別のアメリカ人(20代・女性)にも、このミスコンについて意見を聞いてみた。
するとまず、有色人種の意味でボクが「カラード」と言うと、それは今のアメリカでは NGワードだから使わないほうがいいと注意される。
白人以外の人間なら、「POC(Person of color)」と言うのがいいらしい。
彼女の考えとしてはこのコンテストで、どんな女性を「美しい」としているのか分からないから、この結果には賛成も反対もできない。
筋力がモノを言うスポーツと違って、ミス・コンテストには生物的なアドバンテージはないから、このアメリカ人からするとトランスジェンダー女性が参加することは不公平とは思わない。
大切なことは、ミス・アメリカの美の定義や判断基準がしっかり示されていることで、そうすればコンテストを見た人が結果とそれを照らし合わせることができる。
審査をする側が審査される状況をつくることが大事で、コンテストの美の基準にこのトランスジェンダー女性が合っているのならまったく問題ない。

とはいえ、最近のアメリカ社会では白人に対する目が厳しくなって、いろんなところで「POC」の人たちにスポットライトが当たることが増えてきた。
そんな空気からすると、もしこのトランスジェンダーの女性が選ばれなかった場合、審査員は自分がバッシングを受けることを想像しただろうし、それはきっとプレッシャーになっていた。
そういう意味でこの女性にはアドバンテージがあったと思うから、公平さにはやや疑問が残る。
でも、誰が優勝しても自分には関係ないから、結局はどーでもいい。

「他者の承認を要するアイデンティティーはあり得ない」ということで、自分の性は自分で決める性自認の考え方からすれば、トランスジェンダー女性をミスコンから排除することは差別になる。
だから、彼女は参加を認められたわけで。
日本でも近い将来、いろんな分野で、トランスジェンダーの女性(男性)が進出してくることはまず間違いない。
まだ「LGBT法案」も成立していないし、社会が具体的にどう変化するかはみえないけど、自分の価値観や考え方の変更を迫られる予感は持っていたほうがいい。

 

ちなみに上の2人は、日本にある「アメリカ=人権先進国」という見方には「いやそーでもない」と即否定する。
アメリカ社会で人権は特に尊重されているといっても、人種差別はまったく無くならないからいつもウンザリさせられる。
日本と比べて、アメリカが先を行っている部分があれば、日本がうらやましく見える部分もあるから、アメリカを「人権先進国」と単純に表現されると、社会の細部を知っている国民としては引っかかるところが多々あるらしい。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。